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「ゲーテとともにいえば」?

あるひとの文章に、「だれだれとともにいえば」なんていういいかたがなん度かでてくる。だれかのいってることをつかって、それとおんなじことを自分も主張するときにこういうことばではじめてるんだけど、ちょっと気どってるっていうか、もともとこんないいまわし日本語にはなかったとおもう。たぶんドイツ語の直訳なんだろう。この著者はドイツに留学してるし、ドイツ語の本も訳してるから。

ただ、そのもとになったドイツ語のいいまわしはどうもこのひとが訳してるような意味とはちがうみたいだ。

ドイツででてる「ドゥーデン(Duden)」っていう有名な辞書があって、その編集部が質問にこたえるっていう連載がドイツ語の学習雑誌にあった。それをまとめた単行本もでてて(『ドイツ文法・疑問の解明―ドゥーデン編集部の回答』三修社)、そこにはこのいいまわしのこともかいてある。その例文は um mit Goethe zu sprechen/reden で、英語に直訳すれば to speak with Goethe とでもなるだろう。この mit (英語の with)の意味が問題で、編集部の返答によると、これは「ゲーテのことばをかりていえば」ってことらしくて、自分の意見をささえるためにゲーテのことばを引用しようとするときにつかわれる。つまりこの mit Goethe は「ゲーテとともに」「ゲーテと一致して」ってことじゃなくて、「ゲーテのことばをつかって」っていう意味だってことだ。だからこれをまねして日本語にするんなら、「だれだれのことばをかりていえば」とでもしなきゃいけないはずだ。で、そうするなら、とくに独特ないいまわしにもならない。

2004.12.25 kakikomi

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