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ハリー・ポッターのアメリカ版

『ハリー・ポッターと賢者の石』の古代ギリシャ語訳を手にいれたついでに、原文のほうもしらべてみたら、原作(イギリス版)とアメリカ版はなぜかすこしちがってた。まずはタイトル。原作は “Harry Potter and the Philosopher's Stone” なのに、アメリカ版は “Harry Potter and the Sorcerer's Stone” になってる。ほかに、イラストもちがってるけど、タイトルがちがうっていうのは、イギリス英語とアメリカ英語のちがいなのかな。映画のタイトルも、アメリカで公開したものはこのタイトルにかわってたみたいだし。

「賢者(哲学者)」の石が「魔法つかい」の石になってるのはなんでなんだ。アメリカだとなんか問題あるとか? このばあいの「賢者(哲学者)」は錬金術師のことで、英語の辞書で philosopher をひけば、「(むかしの)錬金術師」っていう意味ものってるんだけど、イギリスじゃいいけどアメリカじゃダメだとか?

それから、「賢者の石」はラテン語でたいてい lapis philosophorum だから、ふつうは philosophers' stone (賢者たちの石)だとおもってたけど、この作品みたいに単数の philosopher's stone (賢者の石)もあったんだな。まあ、英語だと、どっちにしても発音がおんなじだけど。でも、作者はなんで単数のほうにしたんだろ。そういえば、ラテン語訳も “Harrius Potter et Philosophi Lapis” で、原作にならって「賢者」が単数形になってる。

ちなみに、ドイツ語訳のタイトルは “Harry Potter und der Stein der Weisen” で「賢者たちの石」。フランス語訳は “Harry Potter à l'école des sorciers” で、これはずいぶん原作とちがってて「魔法つかいの学校のハリー・ポッター」。フランス語にはちゃんと pierre philosophale (賢者の石)ってことばがあるのに。イタリア語訳は “Harry Potter e la pietra filosofale” で原作どおり。スペイン語訳も原作どおりで “Harry Potter y la piedra filosofal”。おんなじロマンス語で、3つともおんなじ「賢者の石」(pierre philosophale、pietra filosofale、piedra filosofal)っていうことばがあるのに、フランス語訳のタイトルだけちがってるんだな。まあ、翻訳のばあい、タイトルをかえちゃうのはよくあることだけど、アメリカ版は、べつに翻訳ってわけじゃないのに、なんでかえてあるんだろ。

はなしを、イギリス版(〈イ〉って略す)とアメリカ版(〈ア〉って略す)のちがいにもどすと、まずありそうだとおもったのは表記のちがいだ(発音じたいがちがうものも)。そこで、ちょっとしらべてみたら、すぐにみつかった。〈イ〉 Mr Mrs (ピリオドがない)と〈ア〉 Mr. Mrs.、〈イ〉 any more (2語につづる)と〈ア〉 anymore、〈イ〉 towards と〈ア〉 toward (s がない)、〈イ〉 rumour と〈ア〉 「rumor (u がない)、〈イ〉 Every-Flavour Beans 」と〈ア〉 Every Flavor Beans (ハイフンと u がない)、〈イ〉 mum と〈ア〉 mom、〈イ〉 Hallowe'en と〈ア〉 Halloween (これはイギリスとアメリカのちがいってわけじゃないかも)。
それから、引用符が〈イ〉だとシングル・クオーテーション(‘ ’)で〈ア〉だとダブル・クオーテーション(“ ”)だったり、〈イ〉でコンマ(,)なのに〈ア〉だとセミコロン(;)だったりって、句読点のちがいもある。
それに単語自体がちがうのもある。「なかま」って意味の〈イ〉の lot が〈ア〉だと crowd になってたり、〈イ〉の the only way on が〈ア〉で the only way forward だったり。

イギリス人がかいたものをアメリカでだすばあい、さすがに全部が全部こういうことをいちいちやってるわけはないとおもうけど、この作品のばあいはこどもがよむからこういうふうにしてるのかな。

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2005.02.03 kakikomi

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