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『直観でわかる数学』

『直観でわかる数学』(畑村洋太郎著、岩波書店)っていう本が評判いいみたいだから、図書館からかりてよんでみたんだけど、ちょっと期待はずれだった。それぞれの項目が、あれっ、このはなしはこれでおわっちゃうの?って感じで、いよいよこれからってとこで突然きれちゃって、さらにそのもとにあるとこまではなしがすすまない。だから、結局はなんなんだって感じのまんま。かわなくてよかった。

ところで、はなしの本筋とは関係ないこまかいとこで、ちょっと気になることがあった。サイン、コサインのとこにこんなことがかいてある。

ものの本によれば,ギリシャ人は,私たち現代人が「サイン」として知るところの概念を jiva(ジャイバ.「弦」の意味)という名前で呼んでいたらしい.(中略)ギリシャ人たちの生み出した jiva という概念を知ったアラビア人は,それに jayb(ジャイブ)という訳語をあてて理解することにした.

この jiva っていうのが気になって…。っていうのは、こんなギリシャ語ありえないから。はなしからすると、とうぜん古代のギリシャ語だろう。でも古代ギリシャ語には j と v なんて子音はない。それに jiva を「ジャイバ」ってよんでるのもおかしい。これじゃ英語よみだ。ギリシャ語だっていってるのに。

古代ギリシャ語で「弦」っていえば、「ネウラー」とか「ネウロン」とか「トーミンクス」とか…。『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)で sine をひいてみると、サインの語源に関して、アラビア語の

jayb は民間語源によると<サンスクリット語 jiyā, jyā「円弧の弦」,字義は「弓の弦」

ってことだから、サンスクリット語が起源かどうかはたしかじゃないとしても、ギリシャ語起源ってわけじゃないみたいだ。

もちろん、ギリシャ語で「弦」っていってたものをアラビア語の jayb で訳したってことだけならおかしくないし、実際そういうことなんだろう。ただ、そのギリシャ語が jiva (ジャイバ)だっていうのはまちがってるとおもう。jiva じゃサンスクリット語の「ジーヴァ」(いのち、いきもの、生活、個人のたましい)みたいだし。

それでも、『インドの数学』(林隆夫著、中公新書)には、

三角法の理論は、ギリシャのヒッパルコスあるいはアポロニオスによって始められ、メネラオス、プトレマイオス等によって発展させられたが、彼らが扱ったのは弧に張る弦そのものであり、それを今日のような半弦、いわゆる正弦の理論に変えたのはインド人であるとされている。

ってかいてある。つまりインド人がかかわってるってことだから、アラビア語の jayb のもとがサンスクリット語だったとしてもおかしくはないんだな。

2005.03.02 kakikomi

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コメント

ゆみやさん、こんにちは。はじめまして。先日からココログを始めましたBuSuKuといいます。こちらには初めてお邪魔したのですが、本格的ですね!お手本にさせて頂きたいと思います。

私もこの本にゆみやさんと同じ感想を持ちました。ハタムラ、岩波というブランドに騙されて買ってしまって後悔しきりです(-"-;

ところで、私は本業でインド哲学を研究しておりまして、サンスクリットにも少々覚えがあります(少々ではマズイですけど、本当は・・・)。それで一応、名詞のjyA、調べてみたんですが、確かにありますね。リグ・ヴェーダにも用例があるそうですから、かなり古い言葉のようです。
ところで、ここにはおそらくギリシャ語だと思うんですが"βios"(oにはアクサンテギュのような記号がついてます)という言葉が併記されてされているのですが、これはどういう意味でしょう?良かったら教えていただけませんか?

投稿: BuSuKu | 2005.04.06 13:15

BuSuKuさん、はじめまして。コメントありがとうございます。こんなもので「本格的」といわれるとはずかしいですねえ(^_^;

「jyA」ってKH方式ですね。どうもあれは、みためがブサイクで……。まあ、それはともかく、たしかに"Monier-Williams"の「jyā」のところにギリシャ語の"βιός"がでてますね。この「ビオス」の意味は「弓」です。それから、古代ギリシャ語の辞書で「βιός」をひくと、"jiyā"とか"jyā"を参照ってかいてありました。このばあいのギリシャ語の「b」とサンスクリット語の「j (口蓋化するまえは g)」は対応してるってことらしいですから。

ついでにいうと、アクセントがちがう「βίος」のほうは「いのち」で、「bio-」の語源です。こっちのほうはそれなりにしられてるかもしれませんけど。

投稿: ゆみや | 2005.04.07 01:41

早速のご回答、有難うございます!KH、不細工ですか・・・。いやぁ~、ハハハ。
私が使っているのはKHのマイナーチェンジ版のTSというフォントですが、見た目は同じです。というか、お恥ずかしいことにKHとTSの他にサンスクリット転写用の一般的なフォントというものを知らないのですが、何か良いものがあるのでしょうか?差し支えなければご紹介頂けないでしょうか。
それと、こちらのサイトでは普通に"ā"などの転写文字を使っていらっしゃいますが、こういう文字はどういう設定をすれば使えるようになるのでしょう?
・・・まるっきり「おしえてクン」になってしまって申し訳ありませんが、けっして急ぎではありませんので、お手すきのときにでもご回答を頂ければ幸いです。厚かましいお願いですみません。

投稿: B | 2005.04.07 02:43

TSですか…。なんの略なんでしょう。KHにマイナーチェンジ版があるのはしりませんでした。どのへんがかわったんですか?

ところで、サンスクリット語転写用の特別なフォントというのがあるのかどうかはわかりませんが、ながい母音とかは、unicode文字をつかってます。これにはながい母音と"ñ"と"ś"はあるのですが、ドットつきのものがありません。まえにかいた記事ではアンダーラインで代用しましたが、それでもまだかけない文字があります。"ń"とかで代用するしかないみたいです。こちらの設定ではそんな感じです。

ながい母音とかのだしかたですが、ATOKなら文字パレットのunicode表のなかからさがして入力します。MS-IMEならIMEパッドの文字一覧でunicodeの表からえらべばいいはずです。

投稿: ゆみや | 2005.04.07 18:37

早速のご教示、有難うございます。なるほど、パレットから選べばいいんですか。・・・ああ、なるほど。了解しました。

私も自分のサイトにサンスクリットの偈頌(これは正真正銘のシュローカです(笑))の一節を載せているのですが、上記のTSの元コードで入れているので、小文字・大文字が入り混じって大変見苦しいものになってしまっています。まぁ、仕方ないですけど。

TSというのはマイナーチェンジ版を作った方のイニシャルです・・・。KHですと、口蓋歯擦音のsaをZaで入力することになりますが、これだと入力時(?)に面倒な問題が起こということで、Caで入力するように変更したのがTSフォントです。変更点はそれだけですので、不細工なことに変わりはありません。

MacやLaTexを使っている人達は、フォントもいくつか選んで使えるよなのうで、うらやましいです。

投稿: BuSuKu | 2005.04.08 01:58

なるほど、そういうことでしたか。そちらのサイトの"C"はそういうわけだったんですね。そういえば、ふるい文法書なんかは"ś"のかわりに"ç"をつかってましたよね。"Whitney"とか。そのへんの関連があるのかも?

それから、"MW"のオンライン版なんてあったんですね。そちらのリンクではじめてしりました。いまどき、あってもおかしくないですけど。

投稿: ゆみや | 2005.04.08 08:19

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