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肉汁、愛猫

最近グルメ番組がおおいせいか、「肉汁」ってことばがテレビによくでてくる。でも、それにもふたつあって、「にくじゅう」っいってるのと「にくじる」っていってるのがある。ちょっとした辞書でしらべると、「にくじゅう」のほうがただしいようにおもえる。たしかにこうよめばぜんぶ音よみで、漢語の熟語になる。でも、『日本国語大辞典 第二版』(全13巻、小学館)には、「にくしる」「にくじる」っていうみだし語もちゃんとある。これだと重ばこよみだ(「重箱読み」と「湯桶読み」」)。ちいさい国語辞典をひいただけで、「にくじる」っていうよみはまだ辞書にはないなんていってるひともいるみたいだけど、ちゃんとおおきな辞書でしらべてからそういうことはいってもらいたいもんだ。

で、このことばは「にくじる」っていうほうがいいとおもう。じっさいテレビで耳にするのも「にくじる」のほうがおおい。どうしてそうなのかっていえば、「にくじゅう」じゃわかりにくいからだろう。「にくじる」っていえば漢字をみなくてもすぐわかる。

あくまで「肉汁」のよみは「にくじゅう」のほうがただしいっていうひとに対してはこう説明すればいいとおもう。「肉汁」っていう漢語のよみはたしかに「にくじゅう」かもしれないけど、じっさいに「にくじる」ってことばはつかわれてるし、そのばあいは漢語の「にく」とやまとことばの「しる」をくっつけたことばってことになる。「にくじゅう」って漢語のほかに「にくじる」ってことばもあるってことだ。それに、「肉じる」とでもかけばなんの問題もなくなるだろう。さすがにこれを「にくじゅう」ってよめとはいえないはずだ。

「にくじる」ってことばができたのは、うえにかいたみたいに、「にくじゅう」じゃ漢字をみなきゃわかりにくいってことがあるとおもうけど、ほかに、「肉」ってことばがすごく身ぢかで、音よみの漢語だとは意識されてないっていうのもあるんじゃないかな。「にく」ってきいてわかんないひとはいないとおもうけど、これに「じゅう」なんて、なんの「じゅう」だか漢字をみなきゃわかんないようなものをくっつけたってしょうがない。

「果汁」が「かじゅう」だから、「肉汁」も「にくじゅう」だっていってるひともいるみたいけど、「か」っていわれただけじゃなんの「か」だかわかんないけど、「にく」ならそれだけでなんのことかわかるんだから、「果汁」と「肉汁」の「汁」がちがうよみでもおかしくないだろう。

にたようなことで、「愛猫」っていうのもある。「愛犬[あいけん]」のほうは定着してて、よみかたもべつに問題ない。正式には「しばいぬ」なのに、漢字で「柴犬」ってかいてるせいか「しばけん」っていいかたができちゃったみたいに、「犬」の音よみ「けん」はなじみがあっていろいろつかわれてる。でも「猫」の音よみの「びょう」っていうのは……。「びょう」っていったらなんのことか わかりにくい。だから「愛猫」を「あいびょう」じゃなくて「あいねこ」ってよみたくなるのは当然だ。このよみがおかしいっていうんなら「愛ネコ」とでもかけば文句はいえないだろう(「ひらひらの ひらがなめがね」」)。

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2005.03.28 kakikomi; 2012.01.24 kakitasi

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