冠詞
Dice+K さんのコメントに冠詞のはなしがでてきたから、それについておもいついたことを書くことにする。
冠詞なんて、日本語からすれば、いらない気がする。だいたいインド・ヨーロッパ語族でも、ラテン語にもサンスクリット語にもロシア語にも冠詞はない。語族がちがうハンガリー語は、まわりのことばに影響されて定冠詞ができちゃったけど、名詞のうしろにくっつける。古代ギリシャ語は定冠詞だけだったのに(ホメーロスの段階じゃまだ指示代名詞だけど)、現代語のほうは不定冠詞もできちゃった。この点、またまたほかの近代ヨーロッパ語とおんなじになってるわけで…。
フランス語とスペイン語となるとさらに不定冠詞の複数形があったり、フランス語とイタリア語には部分冠詞なんていうのまである。
不定冠詞はエスペラント語にもないし、古代ギリシャ語の例からいっても、定冠詞ほど必要じゃないのかもしれない。定冠詞のほうはエスペラント語にはあるけど、ザメンホフがこのことばをつくるとき、定冠詞をいれるかどうかまよったらしい。ところが、夢で、定冠詞をつかった文章を自分でくちばしって、そのいいかたからやっぱりあったほうがいいっておもって、定冠詞をとりいれることにしたんだって。『エスペラント四週間』(大島義夫著、大学書林)には冠詞についてこんなことがかいてある。
ことばとしてなくてはならないものではないが、あれば調法で、表現がゆたかになるというものである。
しかし、ザメンホフが言うように、冠詞をつかった方がよいか、どうか、うたがわしいときには、むしろつかわない方がよい。冠詞は、文の内容について本質的な関係をもつものでなはく、なくても十分、文の意味はあらわせる。
つかわないほうがいいっていうのはエスペラント語だからいえることだけど。
まあ、固有名詞に不定冠詞をつけるいいかたなんて便利だとはいえるかもしれない。それとか、古代ギリシャ語だと、なんにでも定冠詞をつけられるから、形容詞も副詞も名詞にできるし、文とかフレーズに定冠詞をつけてその全体を名詞にすることもできる。だからそういうのは便利だけど、でも、そんなことしなくたって、べつのいいかたでいいわけで…。
ホメーロス:ホメロス。
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2005.04.18 kakikomi; 2009.03.29 kakikae
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