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コンクラーベ

あたらしいローマ教皇をえらぶ会議がはじまった(カトリックの正式の用語としては、ローマ法王じゃなくてローマ教皇らしいから、そうかくことにする。じっさい、テレビのインタビューにこたえてた日本人の枢機卿は「教皇さま」っていってた)。この会議のことを「コンクラーベ」っていうけど、こういうようになったのは、新聞の説明によると、13世紀に、選挙で2年以上たってもつぎの教皇がきまらなくて、おこった市民が会場にカギをかけてきめさせたってことがあって、カギのことをラテン語で「クラーベ」っていうことから「コンクラーベ」になったらしい。でも、この説明、イマイチ納得できない(新聞もテレビのニュースも全部みたわけじゃないから、ちがう説明もあったかもしれないけど)。

で、そのことをいうまえに、ちょっと説明しておくと、もともとラテン語には U と V の区別はなくて V だけだった(I と J もおんなじで I だけだった)。V も I も母音のばあいと半母音(子音)のばあいがあって、のちには子音としては v と j がつかわれるようになって、母音としては u に i になった。子音としての v はもともと半母音だから古代には英語の w の音だったけど、あとから英語の v の音にかわった。つぎのはなしは、このことをちょっとあたまのすみにでもおいといてもらうと余計なとこでひっかからないですむとおもう。

さて、はなしをもどして、新聞の説明のどこが気になるかっていうと、カギはラテン語で「クラーウィス(clavis)」で「クラーベ〔クラーウェ〕(clave)」じゃないっていうのもあるけど、「クラーウェ(clave)」は「クラーウィス」の奪格(「カギで、カギから」っていう意味)ともかんがえられるから、それはいいとして、新聞の説明だと、「コンクラーベ(conclave)」ってことばがこのときにできたみたいにおもえる。でも、「コンクラーウェ」ってことばは古代からあった。

「コンクラーウェ」は、con (ともに)+ clavis (カギ)で、「カギつきの部屋」「おなじカギでしめられる ひとつづきの部屋」っていう意味だ。それが、教皇の選挙の一件があって、そのときからその選挙のことをいうことばにもなったわけで、この事件のときにこのことばができたわけじゃない。

要するに、カギをかけてとじこめたことから、この会議のことを、カギ(クラーウィス)からこのときつくった「コンクラーベ」ってことばでいうようになったんじゃなくて、カギがかかる部屋にとじこめたから、カギつきの部屋って意味の「コンクラーベ」が会議の名まえになったってことだとおもう。「コンクラーベ」ってことばそのものはカギ(クラーウィス)からきてるけど、会議の名まえとしては直接カギに由来するんじゃなくて、“部屋”ってことが起源なんだから。でも、テレビなんかでも、カギをかけてとじこめたってとこを強調して説明してるんだよな…。

ところで、「コンクラーベ」はもともとラテン語だけど、イタリア語でもある。ただし、ラテン語とはちがって、イタリア語としては「教皇の選挙」「教皇の選挙会場」って意味しかなくて、ただの(カギつきの)部屋の意味はない(はず)。

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2005.04.19 kakikomi

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