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ベートーベンの第9の「ja」

アマチュア合唱団のレパートリーとしては、いわずとしれたベートーベンの交響曲第9番《合唱》がある。この歌詞はドイツ語だけど、そのなかに ja [ヤー](英語の yes)って単語がでてくる。これがどうも日本人が「ヤー」ってうたっても、ja にきこえないらしい。

クラッシックの歌手のアドバイスによると、「シャー」っていうと ja にきこえるっていうんだけど、なるほどねえ。日本語の「ヤ」の子音は半母音だけど、ドイツ語の ja の子音は摩擦音っていえる。だから、日本語の「ヤ」だとよわすぎるから、摩擦音の子音がある「シャ」でいわなきゃダメなんだ。でも、ドイツ語の「ヤー」の子音は有声音なのに、なんで無声子音の「シャ」なんだろ。

で、かんがえてみると、日本語の「ジャ」の子音は摩擦音のときもあるけど、破擦音のこともおおい。摩擦音の「ジャ」の子音っていうのは「シャ」の子音(sh)の有声音(濁音)で、フランス語の j、英語の pleasure の「ジャ」の子音みたいなもの。破擦音の「ジャ」の子音は「チャ」の子音(ch)の有声音(濁音)で、英語の「ジャ」の子音(j)みたいなもの。日本語にはこのふたつの区別がない。清音の「シャ」と「チャ」の区別はあるんだけど、濁音になると区別がなくなる。摩擦音と破擦音のちがいは英語式のつづりの sh と ch だとはっきりしないけど、ドイツ語式なら「シャ」の子音が sch、「チャ」の子音が tsch だから、「チャ」は「シャ」に[t]がくっついたものだっていうのがよくわかる。おんなじように、破擦音の「ジャ」は摩擦音の「ジャ」に[d]がくっついたものだ。

摩擦音の「ジャ」ならドイツ語の「ヤ」にちかいけど、破擦音の「ジャ」だと[d]がふくまれてるからけっこうちがうものになっちゃう。だから、この区別がない日本語の「ジャ」をつかうわけにはいかない。それに、単語のあたまの「ジャ」はたいてい破擦音のほうだから、なおさら ja のかわりにはならない。それと、無声音(清音)の子音のほうが有声音(濁音)の子音よりつよい音だから、そのへんも「シャ」のほうが、日本語より子音がつよいドイツ語の発音にふさわしいってことになるのかもしれない。

ベートーベン:ベートーヴェン。

2005.05.30 kakikomi; 2009.03.28 kakikae

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