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クロノスとクロノス

土星(クロノス)が時間の神クロノスだってかいてあるのをよくみかける。星うらないの土星の説明にもそういうのがよくある。でも、土星のクロノス(Κρόνος [krónos]=Cronus)と時間のクロノス(Χρόνος [kónos]=Chronus)はべつのことばだから(ブラウザーによってはちゃんと表示されないかもしれないけど、時間のクロノスのほうの発音記号の[r]の下にはちいさい丸があって、無声音の[r]をあらわしてる)、それがどうもひっかかって、気になってた。

土星のクロノスはもともとギリシャ神話の神で、ゼウスの父親だけど、のちには土星の名まえにもなった。英語だと土星は Saturn [サターン]で、これはギリシャのクロノスにあたるローマ神話の神サートゥルヌス(Saturnus)からきてる。そういえば、「サターン」はアメリカのロケットの名まえにも、セガのゲーム機の名まえにもなってたっけ。もちろん悪魔の「サタン」(Satan、英語よみで[セイタン])とはちがう。

で、ちょっとしらべてみたら、カール・ケレーニイの『ギリシアの神話 神々の時代』(中公文庫)にこんなことがかいてあった。

さらにのちの物語では、オルペウス教徒たちは、ギリシアの神ではないクロノス(「時」)を冒頭に持ち込んでいる。われわれギリシアのクロノスとこの決して齢をとることのないクロノスを混同することは許されない。

それから、エルンスト・ユンガーの『砂時計の書』(講談社学術文庫)にもこうある。

時間の神クロノスは、ギリシャ神話のクロノス、すなわちゼウスの父のクロノスに結びつけた中世の創造物である。

やっぱり、もともとはべつだったんだ。

で、このふたつは名まえがにてるから混同されたんじゃないかっておもってたけど、どうもそれだけじゃないらしい。ユンガーによると、ギリシャ神話のクロノスと時間の神がいっしょになるきっかけは古代からあって、神話がたとえばなしとして哲学的に解釈されるようになったころにはじまるってことだ。ユンガーはそれ以上はいってないけど、要するに、クロノスが自分のこどもをむさぼりくうのと、時間が自分のうみだしたものをみんなほろぼしちゃう(時間がたてばすべてのものはほろびちゃう)のがにてるってことだろう。

これとはべつに、ユンガー自身があげてる、ゼウスの父クロノスの時間っぽい特徴がある。クロノスの父はウーラノス(天)だけど、これは空間ともいえるわけで、それに対してそのむすこクロノスは時間ってことになる。この父と子の対立は一般的にもいえて、父親のほうは保守的だけど、むすこのほうは変化をもとめるものだから、むすこは時間をあらわすことになる。

そういえば、クロノスが父親から支配権をうばったとき、ウーラノスと大地の女神ガイアのまじわりがたたれたわけだから、このとき天と地がわかれたっていえる。いろんな神話にあるみたいに、おおむかしには天と地はすごくちかかったけど、なんかの拍子にとおくはなれるようになっちゃって、そのときから地上の歴史がはじるまるようなもんだから、その意味で、クロノスのときからこの世の時間がはじまったともいえるだろう。この点でも、クロノスは時間とむすびつく。

クロノス(土星)と時間のむすびつきっていうのは人知学にもある。シュタイナーの宇宙論では、太陽系の最初の段階のことを土星期っていってるんだけど、時間はその土星期にはじまったってことになってる。こんなところにも、クロノスと時間のかかわりがでてくるっていうのはなかなかおもしろい。

サートゥルヌス:サトゥルヌス。 ウーラノス:ウラノス。 人知学:人智学。

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2005.05.10 kakikomi; 2009.07.15 kakitasi

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コメント

は~、そうだったんですか!クロノスとクロノスが違うなんて、まさに盲点でした。スペルが違うということさえ知りませんでしたが、そのあたりはさすがギリシャ語に堪能なゆみやさんならではの着眼ですね。
私は何か占いの本に守護星(?)が土星だから、時間関係に強いと書いあったのを真に受けて、「時計集め」なんぞにのめりこんでいいるのですが、これも原点まで遡ればとんだ勘違い、ということになりそうですね(笑)
そういえばインドの占星術とギリシャの占星術は関わりが深い(というか、ギリシャからの輸入ですね)そうですが、細かいところで少し違うところもあるそうですね。
ゆみやさんは星座や神話にもお詳しいようですので、もし気が向くことがあったら、ということで構いませんが、いつかそのあたりの話題も記事に書いていただけたら嬉しいです。決っっっして催促ではありませんが(笑)、楽しみにしています!

投稿: BuSuKu | 2005.05.10 13:50

土星つながりですか~。星うらないの意味で守護星(支配星・主星)が土星だってことなら、星座はやぎ座ですよね。むかしはみずがめ座の守護星も土星だったんですけど、いまは天王星になって、土星のほうは副守護星ってことになってます。

まあ、インドの星うらないのことはそのうちということで……(^_^;

投稿: ゆみや | 2005.05.11 01:01

あれ?、そうなんです、山羊座です。良くご存知ですね(って、常識ですか!?)余談中の余談ですが、私は夏でも革バンドで時計をしているんですが、なんでも山羊座は「革」製品とも縁が深いんだとか(笑)。さらに、インドとも関係が深いそうで、これまたバッチリ符合します。ちょっとコワいくらいです。
星占いのお話、1年くらいの単位で気長~~~に待ってます。なにせ、忍耐強い山羊座ですから!お後がよろしいようで・・・(笑)

投稿: BuSuKu | 2005.05.11 03:43

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