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西洋とインドの星うらない

星うらないにつかう 星座 っていえば12個ある。英語だと(発音でタテ線でわけたものは あとのほうがアメリカの発音)、

  • おひつじ: Aries [エアリーズ、エアリイーズ|エリーズ、エリイーズ]
  • おうし: Taurus [トーラス]
  • ふたご: Gemini [ジェミナイ、ジェミニー]
  • かに: Cancer [キャンサー]
  • しし: Leo [リーオウ]
  • おとめ: Virgo [ヴァーゴウ、ヴィアゴウ]
  • てんびん: Libra [リーブラ、リブラ、ライブラ]
  • さそり: Scorpio [スコーピオウ]
  • いて: Sagittarius [サジテアリアス、サギテアリテス、サジターリアス、サギターリアス|サジャテリアス]
  • やぎ: Capricorn [キャプリコーン]/Capricornus [キャプリコーナス]
  • みずがめ: Aquarius [アクウェアリアス|アクウェリアス]
  • うお: Pisces [パイスィーズ、ピスィーズ、ピスキーズ]

ほとんどラテン語そのまんまを英語よみしたものだけど、これとはべつに英語に訳した名まえもある。

  • おひつじ: the Ram
  • おうし: the Bull
  • ふたご: the Twins
  • かに: the Crab
  • しし: the Lion
  • おとめ: the Virgin
  • てんびん: the Scales/the Balance
  • さそり: the Scorpion
  • いて: the Archer
  • やぎ: the Goat
  • みずがめ: the Water Bearer/the Water Carrier
  • うお: the Fishes

ドイツ語は翻訳語で、

  • おひつじ: Widder [ヴィダー]
  • おうし: Stier [シュティーア]
  • ふたご: Zwillinge [ツヴィリンゲ]
  • かに: Krebs [クレープス]
  • しし: Löwe [レーヴェ]
  • おとめ: Jungfrau [ユングフラウ]
  • てんびん: Waage [ヴァーゲ]
  • さそり: Skorpion [スコルピオーン]
  • いて: Schütze [シュッツェ]
  • やぎ: Steinbock [シュタインボック]
  • みずがめ: Wassermann [ヴァッサーマン]
  • うお: Fische [フィッシェ]

イタリア語は、

  • おひつじ: Ariete [アリエーテ]
  • おうし: Toro [トーロ]
  • ふたご: Gemelli [ジェメッリ]
  • かに: Cancro [カンクロ]
  • しし: Leone [レオーネ]
  • おとめ: Vergine [ヴェルジネ]
  • てんびん: Libra [リーブラ]/Bilancia [ビランチャ]
  • さそり: Scorpione [スコルピオーネ]
  • いて: Sagittario [サジッターリオ]
  • やぎ: Capricorno [カプリコルノ]
  • みずがめ: Aquario [アクヮーリオ]
  • うお: Pesci [ペッシ]

フランス語は、

  • おひつじ: Bélier [ベリエ]
  • おうし: Taureau [トロ]
  • ふたご: Gémeaux [ジェモ]
  • かに: Cancer [コンセール]
  • しし: Lion [リヨン]
  • おとめ: Vierge [ヴィエルジュ]
  • てんびん: Balance [バロンス]
  • さそり: Scorpion [スコルピヨン]
  • いて: Sagittaire [サジテール]
  • やぎ: Capricorne [キャプリコルヌ]
  • みずがめ: Verseau [ヴェルソ]
  • うお: Poissons [ポワソン]

イタリア語とフランス語は、ラテン語が変化したことばだから、この名まえもラテン語の単語が変化したもので(単語そのものがかわってるのもあるけど)、もとのラテン語だとこうなる。

  • おひつじ: Aries [アリエース]
  • おうし: Taurus [タウルス]
  • ふたご: Gemini [ゲミニー]
  • かに: Cancer [カンケル]
  • しし: Leo [レオー]
  • おとめ: Virgo [ウィルゴー]
  • てんびん: Libra [リーブラ]
  • さそり: Scorpio [スコルピオー]/Scorpius [スコルピウス]
  • いて: Sagittarius [サギッターリウス]
  • やぎ: Capricornus [カプリコルヌス]
  • みずがめ: Aquarius [アクヮーリウス]
  • うお: Pisces [ピスケース]

こういう名まえは例によってギリシャ語の翻訳だったりするから、そのもとの古典ギリシャ語(古代ギリシャ語)もあげとくと(現代ギリシャ語は十二宮をえがいたギリシャの壁かけタイル」)、

  • おひつじ: Κριός [kriːós クリーオス]
  • おうし: Ταῦρος [tâuros タウロス]
  • ふたご: Δίδυμοι [dídymoi ディデュモイ]
  • かに: Καρκίνος [karkínos カルキノス]
  • しし: Λέων [léɔːn レオーン]
  • おとめ: Παρθένος [partʰénos パルテノス]
  • てんびん: Ζυγός [zdyɡós ズデュゴス/zyɡós ズュゴス]
  • さそり: Σκορπίος [skorpíos スコルピオス]
  • いて: Τοξότης [toksótɛːs トクソテース]
  • やぎ: Αἰγόκερως [aiɡókerɔːs アイゴケロース]
  • みずがめ: Ὑδροχόος [hydrokʰóos ヒュドロコオス]/Ὑδρηχόος [hydrɛːkʰóos ヒュドレーコオス]
  • うお: Ἰχθύες [ikʰtʰýes イクテュエス]/Ἰχθῦς [ikʰtʰŷːs イクテュース]

このなかで、日本語とちょっとちがうのはやぎ座で、日本語だとヤギそのものみたいだけど、「アイゴケロース」っていうのは「ヤギのツノがあるもの」っていう意味で、星座の絵をみても、ヤギはヤギだけど、下半身はサカナになってる。ラテン語の「カプリコルヌス」もこれをそのまんま訳したものだからおんなじ意味だ。ただし、英語に訳した星座の名まえだとやぎ座は the Goat で、日本語とおんなじようにヤギそのもの。それから、みずがめ座の「ヒュドロコオス」も日本語とはちょっとちがう。星座の絵でも人間が水がめをもって水をそそいでる絵になってるみたいに、このことばの意味は「水をそそぐ男」だ。ラテン語の「アクワーリウス」はこれの翻訳だけど、ちょっと意味がちがうみたいで「水男、水をはこぶ男」。英語訳は the Water Bearer 〔Carrier〕 でラテン語のとおり。

この星うらないの12 星座 は、実際の星座とはべつものだ。だから、「黄道[こうどう]十二宮」っていうふうに「宮[きゅう]」っていうわけだ。英語で「サイン(sign)」っていうから、十二宮のことをそのまんま「サイン」っていってるひともいるみたいだし、それぞれの名まえに「座」をつけないでただ「おひつじ」とかにしてることもある。英語にしても、ラテン語でもギリシャ語でも、星座と宮はまったくおんなじ名まえだからややっこしいんだけど、日本語じゃ「宮」としての名まえがある(もとは日本語じゃなくて中国からはいったものだけど)。

  • 白羊[はくよう]宮
  • 金牛[きんぎゅう]宮
  • 双子[そうし]宮
  • 巨蟹[きょかい]宮
  • 獅子[しし]宮
  • 処女[しょじょ]宮
  • 天秤[てんびん]宮
  • 天蝎[てんかつ]宮
  • 人馬[じんば]宮
  • 磨羯[まかつ]宮
  • 宝瓶[ほうへい]宮
  • 双魚[そうぎょ]宮

ただ、これをみてわかるように、みなれない漢字もあるし、こういう用語はちょっとねえ…。それに、ムリに1文字つけたして全部3文字にしてるけど、もとの名まえに「白」だの「金」だのはない。「宮」をいかすんなら、こういうんじゃなくて、「おひつじ宮」っていうふうに星座の名まえの「座」を「宮」にかえるっていうのはどうなんだろ。そうすると、こんな感じになる。

  • おひつじ宮
  • おうし宮
  • ふたご宮
  • かに宮
  • しし宮
  • おとめ宮
  • てんびん宮
  • さそり宮
  • いて宮
  • やぎ宮
  • みずがめ宮
  • うお宮

天文学のほうじゃ星座の名まえは外来語以外はひらがなでかいてるから、「宮」の名まえだってそうしたらいいとおもう。ただ、まあ、こんなこと、とっくにだれかがかんがえてるだろうし、これをつかってる本なんかもあるのかもしれない、なんておもってたら、やっぱりあった。それは、矢野道雄『星占いの文化交流史』(シリーズ言葉と社会Ⅰ、勁草書房)っていう本で、「実際の星座の名前と、座標としての十二宮の名前とは区別した方がよい。現在世の中に出回っている占星術関係の書物でも、テレビやインターネットの『占いコーナー』でも、『座』と『宮』を区別しているものは少ないが、区別する場合には『白羊宮』『金牛宮』のように普段使いなれない漢字が用いられることが多い。/わたしは本書のように、星座の場合は『おひつじ座』のように『座』を用い、十二宮の場合は『おひつじ宮』のように『宮』を用いることにしている。」ってかいてある。

星うらないの十二宮と実際の星座はなにがちがうかっていうと、十二宮は黄道(地球からみた太陽の軌道)を30度ずつ12にくぎったものだけど、黄道にある実際の星座のほうはおおきさもまちまちだし、黄道の座標としてはかさなってるとこもある。このことからして、このふたつはべつものなんだけど、もっと重要なのは、黄道十二宮は春分点を出発点にして黄道をくぎったものだってことだ。春分点っていうのは、簡単にいえば、春分の日の太陽の位置っていえばいいとおもうけど、べつのいいかたをすれば、黄道と天の赤道(地球上の赤道を天球にうつしたもの)がまじわるとこで、このまじわる点にはもうひとつ、秋分点がある。

この春分点がすこしずつうごいてくことを、紀元前2世紀の天文学者、ギリシャのロドス島出身のヒッパルコスが発見した(もっとむかしの古代人もしってたって説もある)。これを歳差[さいさ]っていうんだけど、太陽の年周運動とは逆方向に、1年に約50秒、72年に約1度のわりあいでずれてく(ヒッパルコスは天動説の時代のひとだから、春分点がうごくんじゃなくて、恒星の天球が太陽の年周運動の方向にずれてくってかんがえてたけど)。2160年で30度、つまり十二宮のひとつ分ずれて、2万5920年で1周することになる。この周期をプラトーン年っていってる。西洋の天文学と星うらないはこの春分点を出発点として黄道座標をかんがえてるから、そうなると、黄道十二宮の位置も歳差のせいで実際の恒星の位置からずれてくことになる。十二宮の名まえは、ヒッパルコスのころに十二宮それぞれの位置にあった星座とおんなじの名まえがつけられたから、当時は十二宮と星座の位置はだいたい一致してたんだけど(うえにかいたように幅は一致してない)、それから2000年以上たったいまは30度ぐらいずれてるから、十二宮と星座はだいたいひとつ分ずれてることになる。

こういうふうに、たいていの西洋の星うらないは春分点を基準にして十二宮をかんがえてて、このやりかたを「トロピカル(tropical)」(回帰点の、至点の、[分点の])っていってる。これに対して、十二宮の出発点(おひつじ宮の0度)を実際の恒星に固定するやりかたもあるにはある。そっちのほうは「サイデリアル(sidereal)」(恒星の)っていう。これだと星座との関係はかわらない。最近みかける13星座の星うらないっていうのは、宮じゃなくて実際の星座をつかってるから、この「サイデリアル」の一種っていえるのかもしれない。どっちの方法にしても、惑星と惑星の位置関係(アスペクト)にかわりはないから、その部分じゃおんなじことになるはずだ。

ところで、西洋の星うらないと基本的におんなじものが日本には平安時代につたわってた。空海が密教経典のひとつとして『宿曜経[すくようきょう/しゅくようきょう]』をつたえたのが最初で(中国の星うらないはこれよりまえに日本にはいってる)、このあと宿曜道っていううらないの一派もできて、陰陽師で有名な陰陽道に対抗するぐらいにもなった。このうらないは密教占星術ともいって、いまでもつづいてる。なかみは基本的にインドの星うらないだけど、インドのものも基本的には西洋の星うらないがつたわったものだ。もちろん、インドにそれよりまえからあった要素もあるんだけど、うまれたときの星の位置でうらなうホロスコープ占星術はギリシャからつたわった。

『宿曜経』では、十二宮の名まえはこうなってる。

  • 羊宮
  • 牛宮
  • 婬宮/男女宮
  • 蟹宮
  • 師子〔獅子〕宮
  • 女宮
  • 秤宮
  • 蝎宮
  • 弓宮
  • 磨竭宮
  • 瓶宮
  • 魚宮

このもとになったサンスクリット語の名まえもあげておこう。

  • おひつじ: मेष mea [メーシャ]
  • おうし: वृष(न्) vṛṣa(n) [ヴリシャ(ン)]
  • ふたご: मिथुन mithuna [ミトゥナ]
  • かに: कर्क karka [カルカ]/कर्कट() karkaa(ka) [カルカタ(カ)]
  • しし: सिंह siha [スィンハ]
  • おとめ: कन्या kanyā [カンニャー]
  • てんびん: तुला tulā [トゥラー]
  • さそり: वृश्चिक vścika [ヴリシュチカ]
  • いて: धनुस् dhanus [ダヌス]/धन्विन् dhanvin [ダンヌィン]
  • やぎ: मकर makara [マカラ]/मृग mga [ムリガ]
  • みずがめ: कुम्भ kumbha [クンバ]
  • うお: मीन mīna [ミーナ]

このなかで西洋の名まえとちがってるのがいくつかある。ふたご宮は西洋じゃ男の双子なのに、『宿曜経』だと「婬宮/男女宮」で男と女になってる。ただし「ミトゥナ」は「一対」っていう意味で、「双子」の意味もあるから、インドの名まえとしては西洋とおんなじ「双子」だったのに、中国でまちがって翻訳されただけなのかもしれない。それから、いて宮は「弓宮」だから、射手[いて]じゃなくて弓そのものになってる。っていっても、「ダヌス」(弓)以外に「ダンヌィン」(弓をもつもの)ともいうから、それなら射手とおんなじだ。あと、やぎ宮が「磨竭[まかつ]宮」になってるけど、磨羯宮とは漢字がちがうだけで、「マカラ」の発音をうつしたことにかわりはない。マカラっていうのは、インドの伝説上の海の怪物で、ワニだとかサメだとかイルカだとかいわれることもある。インド神話の愛の神カーマの旗じるしにもなってる(マカラの旗は日本の密教にもある)。西洋のやぎ宮は下半身がサカナだから、そこに共通点があるとはいえる。この宮はほかに「ムリガ」ともいうけど、これは森のけもののことでおもにシカのことらしい。こっちのほうがヤギにちかいことはちかい。それと、みずがめ宮は「瓶宮」で、日本の名まえとおんなじでひとをさしてはいないから、これも西洋とちがう。

インドの星うらないで西洋とちがう点は惑星にもある。星うらないの惑星っていうのは、むかしの天動説だから、太陽と月もふくまれてて、伝統的には7つある(月、水星、金星、太陽、火星、木星、土星)。インドだとこれにふたつ架空の惑星がくわわって、九曜とか九執(नवग्रह navagraha [ナヴァッグラハ])っていってる。架空のふたつっていうのは、羅睺[らご]星と計都[けいと]星で、サンスクリット語なら राहु rāhu [ラーフ]と केतु ketu [ケートゥ]。これは西洋のドラゴン・ヘッドとドラゴン・テールにあたるもので、黄道と白道(月の軌道)がまじわる2点のことなんだけど、ラーフは日食と月食をおこす魔物だから、これにあてはめられた。ケートゥのほうは、ほうき星〔彗星〕のことだったこともあったけど、けっきょくはドラゴンのしっぽのほうになった。『宿曜経』にはこのふたつはでてこない。

このインドの、つまり密教占星術の十二宮と惑星の絵は、日本の胎蔵マンダラと星マンダラ(北斗マンダラ)にでてくる(十二宮の絵だけど、おんなじ名まえの星座の絵ともいえる)。西洋と名まえがちがってる宮はやっぱり絵でもちがってて、ふたご宮は「婬(男女)宮」だから男と女の絵になってるし、やぎ宮は「磨竭宮」だからマカラの絵になってる。みずがめ宮も、西洋の、ひとが水がめをもってるのとちがって、水がめだけの絵。それから、胎蔵マンダラと星マンダラのちがいもある。おとめ宮は、胎蔵マンダラだと女の子ひとりだけど、星マンダラのほうはふたりになってる(「双女[そうにょ]宮」って名まえもある)。てんびん宮は、胎蔵マンダラはおじいさんが天びんをもってる絵だけど、星マンダラのほうは天びんだけ。いて宮は、胎蔵マンダラだとひとが弓矢をもってるけど、星マンダラは弓矢だけ。

मिथुन [ミトゥナ](一対、夫婦、双子)を『梵和大辞典』(講談社)でひくと、「双女宮(黄道帯十二宮の一)」っていう意味がのってるけど、これはおかしいとおもう。「双女宮」はおとめ宮のことなんだから。星マンダラとか、のちの仏像の図像集なんかだと、うえにかいたみたいに、おとめ宮が女の子ふたりの双女宮になってて、名まえも「双子」とまぎらわしいから、それでまちがえたんだろう。

なんでおとめ宮がふたりになったのかかんがえてみると、たぶん十二宮の三要素(quality)っていうのと関係があるとおもう。これは、十二宮を4つずつ3つのグループにわけたもので、ふたご宮・おとめ宮・いて宮・うお宮が mutable (ある本では「変通」って訳してる)っていわれてる。この4つは季節のかわり目にあって、ふたつの季節の性質をそなえてるから「共通宮」ともいうし、ふるくは(直訳すれば)「二体宮」っていった。「二体」(ギリシャ語で δίσωμον [dísɔːmon ディソーモン]、英語で bicorporeal)は「ふたつのからだをもってる」って意味だけど、実際にふたつっていえるのは、ふたご宮とうお宮で、うお宮もサカナが2匹いる。ただ、いて宮はケンタウロスで人間とウマが合体したすがただから、これも「ふたつのからだ」っていえなくもない。となると、おとめ宮だけふたつじゃないわけだ。それでも、「二体宮」のグループに属してるもんだから、ふたりのすがたになってる絵ができちゃったんじゃないのかな。それと、実際のおとめ座の星の配列をみると、ふたご座みたいにふたりがならんでるようにみえなくもない。

インドと西洋のちがいっていえば、もっと重要なことがある。西洋の主流は「トロピカル」方式だけど、インドのほうは「サイデリアル」方式だってことだ(いまじゃ西洋式もないことはない)。つまり、インドの天文学の黄道座標は歳差のことはかんがえないで、恒星の天球に固定してある一点をおひつじ宮の0度(サンスクリット語で मेषादि meādi [メーシャーディ]=おひつじ宮のはじめ)として十二宮をわけてる。この一点は、ギリシャの星うらないと天文学がつたわってまもないころ、紀元300年ごろの春分点で、その時点だと西洋とインドの十二宮は一致してたわけだけど(星座と一致してるわけじゃない)、このあとインド式はこの点に固定したまんまだから、いまじゃ西洋とインドの座標は24度ちかくのずれがある。この差をだす計算方法はいくつもあるらしくて、こまかい数字はそれによってちがってくるみたいだけど、とりあえずそのなかのひとつの具体的な数字をあげると、2005年の西洋とインドの座標のずれは23度50分。2017年にちょうど24度のちがいになる。だから、いまインドのメーシャーディは西洋のおひつじ宮の24度あたりにあるし、インドのこよみの春分の日は西暦の4月中旬になる。おんなじ名まえの宮でも、西洋のとインドのは6度ぐらいしかかさなってないわけだ。だから、西洋式とインド式でうまれた 星座 (ほんとは宮)がちがってくるひともたくさんいることになる。

インドの星うらないと天文学が「サイデリアル」だからって、インドの天文学者が歳差をしらなかったわけじゃない。それでも、こういうことになったのは、太陽より月を重視するかららしい。月に関連して、星宿(サンスクリット語で नक्षत्र nakatra [ナクシャットラ])ってものがあるんだけど、これは中国にも中世ヨーロッパにもあって、二十八宿っていうのが日本でもつかわれてる。インドのばあい二十七宿がふつうみたいだけど、要するに月のやどのことで、月が地球のまわりを1周するとき1日ごとに月が位置する恒星のことをいってる。さらに、恒星そのものより、黄道を27(または28)等分した区分のこともいう。インドの星うらない(ってことは密教占星術)はこの星宿が重要だし、インドのこよみの月の名まえは満月のときの星宿の名まえからきてるもんだから、恒星のほうに座標をあわせなきゃいけなかった。でも、このせいでインドのこよみは実際の季節とはだんだんずれてくことになった。

太陽は意識を、月は潜在意識をあらわしてるなんていうことがあるけど、「トロピカル」の西洋はこよみも太陽暦で、意識の文化を発達させたっていえるかもしれない。そのせいか星うらないみたいなものはサブカルチャーになった。それに対して、インドのほうは星うらないは文化・文明の重要な一部になってて、いまでもすごくさかんにおこなわれてる。うまれたときにはホロスコープ(出生天宮図)をつくるし、結婚相手とはホロスコープで相性をみる。

そのホロスコープだけど、いまの西洋占星術だとまるいのがおおい。でも、むかしは四角いのがふつうだった(ただし、のこってるいちばんふるいものはまるい)。インドはいまも四角いのがふつう。それと、十二宮も惑星も西洋式なら記号をつかうけど、インドのばあい、惑星は名まえでかいて、十二宮はおひつじ宮を1、おうし宮を2、っていうふうに数字でかく。

ホロスコープはインドでは भावचक्र bhāvacakra [バーヴァチャックラ]っていってるけど、おんなじことばは仏教だと六道(五道)輪廻図のことだったりする。それぞれ「バーヴァ」の意味がちがう(「チャックラ(チャクラ)」は「車輪、円盤」)。星うらないの「バーヴァ」は「ハウス」(「室」ともいう)のことで、宿曜道の用語なら「位」。ハウスっていうのは、東の地平線のところ、つまり上昇点を出発点にして黄道を12にくぎったもので、十二宮とはちがう。六道〔五道〕輪廻図の「バーヴァ」は「存在、状態」ってことだろう。

西洋のホロスコープもインドの「バーヴァチャクラ」も、十二宮を反時計まわりにならべてるけど、インドのケララ州には राशिचक्र rāśicakra [ラーシチャックラ]っていうホロスコープがあって、これはハウスをかかないで、「ラーシ」つまり十二宮を時計まわりにかいてる。このちがいはなんなんだ? っていっても、ギリシャのおみやげで十二宮の壁かけがあって、それなんかは時計まわりに十二宮をならべてるし、時計まわりの図もけっこうみることはある。こういう図はたぶん星座早見表みたいに北極星を中心にして平面に投影した図とおんなじことで、これだと黄道の星座と十二宮は時計まわりにならぶことになる。これに対して、黄道を自分をとりまくような感じでながめると、十二宮の順序は反時計まわりで(太陽の年周運動の方向)、それをそのまんま地上におろしたような図にすると、よくあるホロスコープのならびになる。そういえば、ホロスコープは出生天宮図なんていってるけど、実際は地上図で、地上のできごとをしめすハウスのなかに天体をかきこんで、天体を地上にひきおろして地上のできごとに関係させてるとかいうもんな。これが「ラーシチャクラ」のばあいは、ハウスをかかないもんだから、天をみあげたような図になってるのかな。

十二宮と惑星の意味は西洋もインドも基本的にかわりないみたいだけど、おおきな特徴として、西洋の星うらないは自由意志をみとめてるのに対して、インドのほうは、わりきっていえば、自由意志はみとめてないってはなしだ。西洋とインド以外の星うらないでも、月を重視するところはインドとおんなじように自由意志をみとめてないらしい。

星うらない:星占い、占星術。 おひつじ座:牡羊座。 おうし座:牡牛座。 ふたご座:双子座。 かに座:蟹座。 しし座:獅子座。 おとめ座:乙女座。 てんびん座:天秤座。 さそり座:蠍座。 いて座:射手座。 やぎ座:山羊座。 みずがめ座:水瓶座。 うお座:魚座。 プラトーン:プラトン。 サイデリアル:サイディリアル。 マンダラ:曼荼羅。

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 ・クロノスとクロノス
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2005.05.20 kakikomi; 2012.02.23 kakitasi

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コメント

リクエストしていた記事を書いていただけて大変光栄です!
それもこんな大作を!!

いつもながらに情報満載でしかも明晰。宮の呼び名のことや歳差のことを大変分かりやすく解説して頂き、読ませていただいただけで、なんだか自分もいっぱしの専門家になったように錯覚してしまいます(笑)どっかで受け売りでウンチク語っちゃうかも、です。

歳差に関連する話として出てきた、西洋が太陽(=意識)重視で自由主義的、インドが月(=潜在意識)重視で運命主義的だ、というのは興味深いですよね。

それから、自分が山羊座(/宮?)なものですから、今回の記事の前半は自分が主人公になったようで気分良かったです(爆)ところで余談ですが、クリスマスが本当にイエス・キリストの誕生日だとしたら、キリストも山羊座生まれってことになるんですかねぇ。そんなこと考えていると、興味尽きないですね。

投稿: BuSuKu | 2005.05.21 11:53

たしかにイエスは「やぎ宮」のうまれですね。それに当時ならまだ「やぎ座」のうまれでもあったはずです。でも、もともと太陽神の誕生日だった冬至(のころ)がイエスの誕生日ってことになったわけで、ほんとの誕生日はわかりませんけどね。

冬至は南インドでは重要なおまつりらしくて、「makara-saMkrAnti」(太陽のやぎ宮いり)といっているということですが、本来冬至なのに、いまでは西暦の1月15日ごろになっています。「やぎ宮」うまれはインド式だと西暦の1月15日(ごろ)から1か月ほどの期間ということになりますね。

ところで、きのう本屋にいったときにみてみたら、インド占星術と宿曜占星術の本が何冊もでていておどろきました(おどろくようなことじゃないかもしれませんけど)。

もともと星うらないについては、いまのままの星うらないのこまかいやりかたにそれほど興味があるわけではなくて、自分でうらなうわけでもないので、ここにかいたこともうらない以前のことばっかりになってしまいました。

投稿: ゆみや | 2005.05.22 07:45

初めまして。 てっちゃん と申します。
最近、星座のこととかに興味を持つようになり、
「ペガサス」、「ペガスス」 なんかのことで、インターネットを手繰っておりましたら、
yumiya さんのブログ・サイト 「西洋とインドの星占い」 にたどり着いたものです。
いゃ~、すごいですね。 ギリシャ語、ラテン語をテーマにしたサイトと云うことですが、
話題豊富。
団体、組織としてのサイトではないようでこれだけのものを綴られるのは大変なことだと、
感心するばかりです。
お月様の位相 (Moon Phases)の表示もあり、言葉関係だけではなく、天体・星座
のことにも造詣が御ありと思われ、もし、宜しければ(ご多忙とは思いますが)、お教え
頂ければと思いまして、コメントさせて頂く次第です。

【Q 1.】 「ペガサス」 と 「ペガスス」
ギリシア神話に由来する 「天馬」 で、「ペガサス」 と云う言葉自体は 英語の
pegasus から来ているようで、旧モービル石油のロゴマークとしても知られています。
カタカナ語としては、「ペガサス」 が一般的と思います。
ところが、星座としては、殆どのインターネットのサイトでは「ペガスス座」 となっており、
「ペガサスは英語読みで、星座としてはラテン語読みのペガススと言う。」 とのことに
なっているとのこと。 ただ、私の電子辞書の広辞苑(1996年版)では、「ペガサス座」
として載っておりましたが。 (これ以降の時に、ペガスス座に変更になった?)
... で、質問なのですが、
pegasus はラテン語読みすると、本当に 「ペガスス」 になるのでしょうか?
単に、ローマ字読みしただけのような感じもします。

〔補足〕 全く別の事柄の用語なのですが、ステンレス・スチール(ステンレス)の
JIS(日本工業規格) の記号は SUS (Special use steel の略)なのですが、
誰もこれを 「スス」 とは呼んでいません。
「サス」 と呼ぶ慣わしです。 多分、英語式。 exp. suspension サスペンション。
「スス」 と呼んだら、鉄/金属関係の仕事をしたことのない門外漢と思われる。

〔蛇足〕 英語で 「ペガサス」 で、日本語としても 「ペガサス」 が定着しているの
だから、(ラテン読みで、本当に 「ペサスス」 になるかは兎も角、) 「ペガスス座」
などと言わないで、「ペガサス座」 でよいと思うのですがねぇ。
日本の外へ出て、役に立たない(通じない)カタカナを覚えるのは(学校教育と
云う場では強制として作用する)、エネルギー(労力)の無駄だと思うのですが。
化学で、ドイツ式発音の化学物質名を習う。 英語で話す時、通じない。
ドイツ語式カタカナ語を覚え、また今度は英語としての発音(カタカナ)を覚えな
ければならない。 日本では、このような無駄が多すぎる。
(失礼しました。 yumiya さんは別のご意見かも知れません。)

【Q 2.】 Pleiades (星団)のこと
日本語で 「すばる」 と呼ばれる星の一団がありまして、
富士重工の車名(スバル)にもなっていましたし、谷村新司の 「昴」 がそうですし、
その昔、清少納言ちゃんも綴っています。
(枕草子 254段、『星はすばる。彦星。ゆうづつ。よばひ星、すこしをかし。 ..... 』)
このすばるは、欧米式の天文の世界では、牡牛座にある プレアデス星団と呼ばれ、
(見え方で何個に見えるか違うそうですが)
ギリシア神話での、アトラス (Atlas) と 妖精の Pleione との間に生まれた (7人)姉妹
に由来するのだそうで、単語としては、
(質問)
Pleione → Plei + ades → Pleiades と云う単語の構成だと思うのですが、
ades には 「子供 or 娘 or 姉妹」 の意味があり、
Pleiades で、「Pleione の娘たち」 と云う意味なのでしょうか?

(派生の質問)
-/ Pleiades は、「プレアデス」 とカタカナ表記されますが、
  ① ラテン語の発音でしょうか?
  ② 「プレアデス」 と云う発音でいいのでしょうか?
  ③ 英語ではなんと言う発音になるのでしょうか?
-/ Pleione は、「プレイオネ」 とカタカナ表記されますが、この発音でよいのでしょうか?
  「プレイオーネ」 とは言わないのですか?

【Q 3.】 Sterope と Asterope
7人姉妹のうち6人は、Alcyone、Merope、Electra、Celaeno、Taygeta、Maia
ですが、残りに一人の表記には Sterope と Asterope の2通りあるようです。

ギリシア語の 「a」 と言えば、
アトム Atom (原子): これ以上分割できないもの。
アモルファス Amorphous (非晶質): 固体でありながら、結晶構造を持たないもの。
ブロード・バンドの ADSL Asymmetric Degital subscriber Line:
               非対称デジタル加入者線伝送方式。
のように、否定の接頭詞として使われると思うのですが、
Sterope に対しての Asterope は、どのような意味で使われているのでしょうか。

(派生の質問)
-/ Celaeno はラテン語ではどのように発音されますか?
   英語では、どうでしょうか?
-/ Taygeta についても、同じ質問です。

【Q 4.】 Asteroid と Steroid
Aster はギリシア語で 「星」 の意味だそうで、Asteroid となると、
星状の形のものの意になります。
① ヒトデ ② アステロイド(星状)曲線 ③ 小惑星
cf. asterisk = 星印

この asteroid から 「a」 が取れると、steroid になりますが、ステロイドは生体ホルモン
の一つだそうで、使われようによっては、筋肉増強のステロイド・ホルモンとなり、
オリンピックなどでは、ドーピングの対象となるそうです。

この asteroid (アステロイド) と steroid (ステロイド) は、
語源的にどのようなつながりがあるのでしょうか?

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多分、このような質問は yumiya さんにしか聞けないと思いまして、
長々と書いてしまいました。
お忙しいことと思いますが、折を見て、ご回答頂ければ、幸いです。
宜しくお願い致します。

投稿: てっちゃん | 2005.10.18 18:38

はじめまして。およみいただきまして、ありがとうございます。
さっそくご質問におこたえしたいとおもいます。ラテン語の発音は古典式とします。

【Q1.】「ペガサス」と「ペガスス」
ラテン語では「ペーガスス」です。ローマ字につかう文字は、ラテン文字といわれるように、もともとラテン語の文字ですから、ラテン語の発音はローマ字よみとほとんどおなじです。

パソコン関係のメーカーで ASUS というのがあります。世間ではいろんなよみかたをしているようですが、メーカー側では「アスース」といっています(どうよんでもかまわないともいっているようですが)。このなまえは「Pegasus」からとったらしいです。

【Q2.】Pleiades(星団)のこと
もともとは「Pleione のむすめたち」ということではなかったようです。とりあえず「Plei+ad+es」と分解するとしても(「es」は複数形の語尾)、「Plei」だけでは「Pleione」ではありません。「Pleione のむすめたち」なら「Pleionides」になったはずです。現在の説明では、「ふねでいく(プレオー)」という意味のことばがもとで、すばるがみえている時期が地中海をふねでわたれる期間だったのでこのなまえになったということです。これが民間語源説でハト(peleia, peleias)と関連するとかんがえられて、この姉妹が(星になるまえに)ハトになったというはなしとむすびついたようです。このために「Peleiades」ともいいます。

ラテン語としての発音は「プレーイアデース」で(ほかに「Pleades[プレーアデース]」「Pliades[プリーアデース]」もあります)、英語では「プライアディーズ」(「Plei・a・des」の「Plei」にアクセント。おもにイギリス)とか「プリーアディーズ」(「Ple・ia・des」の「Ple」にアクセント。おもにアメリカ)になります。

「Pleione」はラテン語で「プレーイオネー」です。英語なら「プリ(ー)アイアニー」(「Ple・i・o・ne」の「i」にアクセント)になります。

【Q3.】Sterope と Asterope
これは否定の接頭辞「a」とは関係ありません。ギリシャ語の「ステロペー」と「アステロペー」はおなじ意味で、「いなずま、まぶしいひかり」ということです。星のギリシャ語「アステール」と語源がおなじで、さらに「アステール」はラテン語の「stella[ステーッラ]」(星)とか英語の「star」とおなじ語源です。子音の連続ではじまっているので、いいやすいように「a-」がついたかたちができたようです。

「Celaeno」はラテン語で「ケラエノー」、英語で「サリーノウ」(「Ce・lae・no」の「lae」にアクセント)です。「Taygeta」は、星のなまえとしてはこのかたちのようですが、もともとはラテン語でもギリシャ語のままの「Taygete」です。ラテン語では「ターユゲテー」(「y」はドイツ語の「ü」とおなじ)、英語では「テイイジャティー」(「Ta・yg・e・te」の「yg」にアクセント)です。「Taygeta」のかたちのラテン語としては「ターユゲタ」で、英語よみなら「テイイジャタ」(「Ta・yg・e・ta」の「yg」にアクセント)でしょう。

【Q4.】Asteroid と Steroid
このふたつのつながりはないとおもいます。「steroid」は、コレステロールとかエルゴステロールの共通部分「sterol」から「ol」という語尾をとって、これに「oid」をつけたものです。「oid」の「o」はつなぎの母音で、「かたち」という意味なのは「id」の部分です。「ster」のもとはギリシャ語の「stereos[ステレオス]」(かたい)のようです。

投稿: yumiya | 2005.10.18 19:24

早速にご返事頂き、ありがとうございます。私が思い違いをしていたところも多々あるようでした。大変勉強になりました。もう少し教えて頂けますか。

■ Pleiades は、私が思っていた 「Pleione の娘たち」 と云うことではなく、「船で行く(プレオー)」 と云う意味の言葉がもとになっているとのことですが、この 「プレオー」 からの単語の変位(遷移)を教えて下さい。
 pleio → plei + ad + es (複数形の語尾) → pleiades でしょうか?
この場合、ad にはどのような意味 or 文法上の役割があるのでしょうか?また、この Pleiades は、実際のところ、どのような意味なのでしょうか?

宜しくお願いします。

【感想 1】 Sterope と Asterope :
そうですね。 ギリシア語の atom の 「a-」 は打消しの a だからと言って、何でも a が付けば、打消しだ、なんて思ってはいけませんよね。英語で、re- は 「反復、反作用」 を表す prefix だからと言って、re- が付く単語は全部そのような意味ではないですね。read とか、red とか、reef、region とか。(一方、実際のところ、英語の re- の場合、前述の語法ではないre-xxxx を探すのに苦労しました。 require も re+quire だった。)
sterope と asterope、英語の special と especial の関係ですね。
ただ、ギリシア語の a- の場合、一方で 打ち消しの接頭辞の意味もあり、一方で 滑らかな発音上の要請での a- もあるとなると、ややこしいですね。でも、勉強になりました。

【感想 2】 Asteroid と Steroid :
この2つは、語源(根っこ)のところでつながっているのだろうと思っていたのですが、語源が違い、aster は ster の否定形ではないのですね。 勉強になりました。

以上。

投稿: てっちゃん | 2005.10.19 22:29

語源というものはそもそも絶対確実というものでもないのですが、とくに「Pleiades」のばあい、代表的な説をあげたまでで、“たぶん”「pleō」(ギリシャ語です、念のため)がもとだろうということです。ですから、「-es」が複数形の語尾なのはいいとして、それ以上確実なことがいえるのかどうか…。一般的にいえば、「-ad」はおおくのばあいに女性形容詞や女性名詞をつくるものです。「ふねでいくものたち」というような意味ではないでしょうか。
それから、もともとがギリシャ語のなまえなので、そういうばあいはギリシャ語の語尾をとることもあります。そうすると、ここではつづりはおなじでも語尾の発音がちがってきて、ラテン語式の「プレーイアデース」のほかにギリシャ語式の語尾の「プレーイアデス」という発音もありえます。

「Pleiades」についてはハトが語源という説のことはかきましたが、ほかの説として、ヒュギーヌスの『ギリシャ神話集』(講談社学術文庫)にはこうかいてあります。「多数なので、彼女たちはプレイアデスといわれる。そうよばれるのは、彼女たちがつながり合っていたからであると考える者もある。つながり合っている状態を〔ギリシャ語で〕プレーシオンというので」。「多数」というのはギリシャ語の「plēthos[プレートス]」(多数)とか「pleos[プレオ(ー)ス]」(みちた)とか「ple(i)ōn[プレ(イ)オーン](さらにおおくの)あたりをかんがえているのでしょう。「つながり合っている」のほうは「plēsion」(ちかく)です。

投稿: yumiya | 2005.10.21 00:13

いろいろありがとうございました。
ギリシア語、ラテン語のことなら yumiya さんは何でも知っているはずだ、などと思ってお尋ねしたようなところがあったようで ..... ご負担をお掛けしたのかも知れません。
古くからの言葉で、今さら、語源等定かでないと云うことはありますよね。

Pleiades と Pleione と似ているけど何かつながりがあるのだろうか、Pleiades ってどんな意味(由来)なのだろうと、疑問に思ったのが始まりだったのですが、yumiya さんのような大家でも定かに解らぬ言葉であることが解りました。

専門的には兎も角、私の勝手な理解/翻訳として、Pleiades は、プレーイオネー(Pleione)の娘たち → Pleionides プレーオニディーズ が、ハトになって、空に昇ったハト娘 Peleiades ペレーイアディーズ になって、地中海の航海を案内をしたので、これらの言葉は重なって(束ねて)Pleiades 「船で行くものたち」 と呼ばれるようになったのだ、と考えることにしました。

「彼女たちがつながり合っていたからであると考える者もある。」 とのことですが、これは 日本 語の 「すばる」 に重なるようで面白いですね。「すばる」 とは、集まって一つになると云う意味の 「統る (すばる)」 から来た言葉と言われています。

いろいろありがとうございました。 また、何かの節には、またお願いします。

投稿: てっちゃん | 2005.10.22 00:04

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