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『マハーバーラタ』第8巻

おもいがけず、上村勝彦[かみむら かつひこ]訳『原典訳 マハーバーラタ』第8巻がでた。この翻訳にはちょっとした因縁がある。

『マハーバーラタ』は、『ラーマーヤナ』とならび称されるインドの叙事詩で、ホメーロスの『イーリアス』と『オデュッセイア』をあわせた行数の3倍ぐらいのながさがある。バラタ族の王子たちの対立・戦争がおもなストーリーだけど、それだけなら全体の5分の1しかない。この手のものによくあるように途中にいろんな神話・伝説・ものがたりがさしはさまれてて、かえってそのへんがおもしろい。ヒンドゥー教の百科事典なんていわれることもある。ヒンドゥー教の聖典として有名な『バガバッド・ギーター』もこのなかにある。『バガバッド・ギーター』はおんなじひとの翻訳で岩波文庫にはいってるけど、そのあと、ちくま学芸文庫として『原典訳 マハーバーラタ』がでることになった。英語訳からの翻訳がもうでてたけど(山際素男訳、三一書房)、こっちはサンスクリット語の原文からの翻訳だからタイトルも「原典訳」になってる。

2002年1月にでた第1巻の「まえがき」でこの翻訳者はこんなことをかいてた。

『マハーバーラタ』の英訳者(van Buitenen)は、三冊目の訳書を出版したところで亡くなっている。『マハーバーラタ』と並ぶ叙事詩『ラーマーヤナ』を翻訳されていた岩本裕先生は、二冊を出版されただけでこの世を去られた。この種の仕事は寿命をちぢめるものなのかも知れない。

(岩本裕訳の『ラーマーヤナ』は平凡社の東洋文庫。『ラーマーヤナ』の英語訳からの翻訳は、阿部知二訳が河出書房の世界文学全集にあった。)

全11巻の予定ではじまったこのシリーズだったけど、2003年3月に第7巻がでたあとは中断してた。この翻訳者がなくなったからだ。本人が最初にかいてたようなことになったわけで……。

今回でた第8巻は、実物をみてみると、いままでの巻よりずっとあつみがない本になってた。のこされた原稿だけとりあえず出版したってことで、この巻の半分ぐらいまでの内容になってる。のこりはべつのひとたちが担当するみたいだけど、どうなるんだろ。せっかくここまできたんだからなんとか完結させてほしい。

ホメーロス:ホメロス。 イーリアス:イリアス、イリアッド。 バガバッド・ギーター:バガヴァッド・ギーター。

2005.05.18 kakikomi; 2009.03.28 kakikae

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コメント

上村先生、最後まで完成できないことを残念がっておられたそうです。夏休み前までは元気に(というか、もともと飄々とした方なので、「元気」という言葉のイメージとは合わないのですが・・・)授業をしてくださっていたんですよ。さぞ無念だったことと思います。ご冥福を心からお祈りいたします。

投稿: BuSuKu | 2005.05.19 00:37

上村氏の訳した『ギーター』(岩波文庫)は、くわしい注つきで、よく参考にしています。いい解説もついてますし。これよりあとに、上村氏はNHK文化セミナーで『ギーター』のことをやってましたけど、このテキストの内容もいいものでした(あとで単行本になりました)。おしいかたがなくなってしまいました。

投稿: ゆみや | 2005.05.21 00:26

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