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ヘンデルにみる英語の名詞の大文字がき

ヘンデル(1685-1759)のオラトリオは初期のものをのぞけば英語の台本だけど、当時劇場でくばってたリブレットをみると、ちょっとした特徴に気がつく。それは、ドイツ語みたいに、名詞のあたまを大文字でかいてることだ。当時の新聞でもそうなってたりする。たとえば、こういう感じ。

See, the conqu'ring Hero comes!
Sound the Trumpets, beat the Drums.
Sports prepare, the Laurel bring,
Songs of Triumph to him sing.

See the godlike Youth advance!
Breathe the Flutes, and lead the Dance;
Myrtle Wreaths, and Roses twine,
To deck the Hero's Brow divine.

見ろ、勝利の英雄がやってくる!
ラッパをならせ、太鼓をたたけ、
競技会の準備をしろ、ゲッケイジュをもってこい、
英雄にむかって勝利の歌をうたえ。

神のような若者がすすんでくるのを見ろ!
笛をふき、踊りの音頭をとれ。
ギンバイカとバラの冠をあんで、
神々しい英雄の額をかざれ。

これは有名な「見よ、勇者は帰る」(表彰式の曲)の歌詞で、もともとオラトリオ《ヨシュア》(Joshua)のなかの曲だけど、ひとつまえのオラトリオ《ユダス・マカベウス》(Judas Maccabaeus)にあとからつけたされた。行のあたまが大文字になってるのは詩だから当然だけど、名詞のあたまも大文字になってる。

デンマーク語が1948年に名詞の大文字がきをやめてからは、この習慣はヨーロッパでドイツ語だけになった。ドイツ語がこのやりかたを定着させたのは18世紀のことで、だいたいヘンデルがイギリスにいたころってことになるだろう(ヘンデルはドイツうまれでイギリスに帰化した)。イギリスのトマス・カーライル(1795-1881)が名詞のあたまを大文字でかいてたらしいけど、これはヘンデルよりあとのことだ。

英語でむかしこういうことをやってたっていうのはきいたことないんだけど、実際こういう例があるわけで、カーライルのはなしなんかからすると、当時こういうことをやってたひともいたぐらいのことなのかな。英語が全部そうだったっていうんじゃなくて、そういうかんがえのひともいて…。でも、新聞でもそうなってたってことは、一時的にでもけっこうひろまってたのかも。そのあと、カーライルはそれがいいとおもってつづけてたけど、結局そのやりかたは英語には定着しなかったってことなんだろう。

2005.06.11 kakikomi; 2012.10.09 kakikae

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