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名まえの相性とハ行

姓名判断みたいな 名まえのうらないっていうのはよくあるけど、そのなかには音のくみあわせをみるようなのもある。たとえば名字と名まえそれぞれの最初の音の相性をみたりするんだけど、そのばあいの音の分類がちょっとおもしろい。

もとになってるのは中国の五行説で、いろんなものを木火土金水[もっかどごんすい]の五行にあてはめて分類する。このなかで中心になるのは土だから、これに母音と半母音をあてはめた。つまり、ア行・ヤ行・ワ行は土ってことになってる。で、のこりのものも発音の種類によってわけるんだけど、カ行(ガ行)は口の奥のほう(軟口がい)の音、タ行(ダ行)・ナ行・ラ行は舌の音、サ行(ザ行)は歯の音、ハ行(バ行・パ行)・マ行はくちびるの音ってことで、母音がノドの奥からでる音だとすれば、そのあとだんだんいまいった順番で外にちかづいてって、最後はくちびるになってる。これを土以外のものに順にあてはめると、結局こうなる。

木:カ行
火:タ・ナ・ラ行
土:ア・ヤ・ワ行
金:サ行
水:ハ・マ行

これをおぼえる方法として、むかしから、「アワヤ土、ハマ水、サ金、タラナ火ぞ、カは柿の木に属す」っていうのがあるらしいんだけど、それはそれとして、相性としては、木火土金水の順番のとなりどうしは(水と木も)相性がいい。たとえば、カ行ではじまる名字は、タ行・ナ行・ラ行・ハ行・マ行ではじまる名まえと相性がいいし、ハ行・マ行ではじまる名まえは、サ行・カ行ではじまる名字と相性がいいってことになる。

で、はなしはここからで、もう気がついたかもしれないけど、このハ行のあつかいがおもしろい。ハ行がくちびるの音?

これは、ハ行の濁音・半濁音がバ行・パ行で、実際にくちびるの音になってることとも関係あるんだけど、ハ行はむかしはくちびるの音だった。だからこういう分類になってる。この発音はいまの「ファ」の子音とおんなじで、いまのハ行には「フ」の子音としてのこってる。発音記号なら[ɸ]ってかく。ヘボン式ローマ字はそこんとこをつかまえて fu ってかくけど、もちろん英語の f の音とはちがうんだから、ほんとはそういう意味でもおかしい。ただし、むかしの日本語をローマ字でかくばあいに、英語とかの f とはちがうって前提で、ハ行を f であらわすっていうやりかたはある。

ハ行は江戸時代なかごろ、つまり元禄時代にはいまとおんなじ[h]になってたらしいけど、もともとくちびるの音だったからこそ、濁音・半濁音もくちびるの音、つまり[b][p]になるわけだ。それから、単語のあたま以外のとこのハ行は、室町時代にはワ行とおんなじになってたみたいだけど、これは、ヨーロッパのことばで、母音にはさまれた「s」がよく有声音の[z]になるのとおんなじようなもんで、母音にはさまれたハ行の子音が有声音の[w]になったってことだ。これだって、ともとも[h]の音だったら[w]にはならなかっただろう。

それにしても、いまの人間のことをうらなうのにむかしの発音のまんまでいいのかな。姓名判断で旧漢字でうらなう流派があるけど、そんなようなもんか。それと、漢字は中国でできたから中国の陰陽五行説でうらなうのはまだわかるけど、ひらがな・カタカナまで中国の説でうらなうのはどうなんだろ。もちろん、かなは漢字が起源だけど、漢字そのものじゃないんだし。それに、音の相性ってことなら、日本語の発音なんだから中国の五行説にあてはめるのがいいのかどうか。数の意味づけだって、音の分類だって、世界中でいろいろちがいがあるし、いつまでもむかしの中国の説をひきずってるっていうのも…。

名まえ:名前、なまえ。

2005.07.30 kakikomi; 2009.03.28 kakikae

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