« ドイツ語の「s」 | トップページ | ニーチェの『ツァラトゥストラ』のギリシャ語の題名 »

ゾロアスターとツァラトゥストラ

ゾロアスター教の開祖の名まえは、もともとアベスター語(古代ペルシャ語)でザラスシュトラ(Zaraθuštra)だけど、日本じゃいまんとこ英語からはいったゾロアスターをつかうことがおおいだろう(ザラスシュトラのほうもみないことはないけど)。

英語でも Zarathustra [ザラスーストラ]っていわないことはないみたいだけど、それはそれとして、英語の Zoroaster のもとはラテン語の Zoroastres [ゾーロアストレース]で、さらにそのもとは、ギリシャ語の Ζωροάστρης [zɔːroástrɛːs ゾーロアストレース]だ。なんかザラスシュトラとはずいぶんちがっちゃってるけど、ギリシャ人はほかの名まえでもなんかおおざっぱっていうか、ギリシャ語にひきつけてかなりかたちをかえてることがおおい。でも、これはギリシャ人にかぎらないみたいで、古代はこんな感じだったのかもしれない。

Ζωροάστρης には「星」って意味の ἀστήρ [astɛ̌ːr アステール]がふくまれてる感じがするけど、じっさいギリシャ人はこの名まえの意味を「星をあがめるひと」(ἀστροθύτης [astrotʰýtɛːs アストロテュテース])だっておもってた。これはいわゆる民間語源説で、 ザラスシュトラ の意味は「年をとったラクダ」ってことらしい。

ザラスシュトラをドイツ語よみしたのがツァラトゥストラ(Zarathustra)で、このいいかたはニーチェの作品で有名になった(作品のなかみは実際のザラスシュトラとはべつ)。ドイツ語でもそれまではラテン語からきた Zoroaster [ツォロアスター]だったんだんだろう。

アベスター:アヴェスター。

関連記事
 ・ニーチェの『ツァラトゥストラ』のギリシャ語の題名
 ・「ギリシャ」という名まえ
 ・「アテネ」はなに語から?
 ・『イーリアス』と『イリアッド』
 ・オデュッセウスとユリシーズ
 ・ゼウスとジュピター
 ・ガンガーとガンジス

2005.08.06 kakikomi; 2011.07.28 kakinaosi

|

« ドイツ語の「s」 | トップページ | ニーチェの『ツァラトゥストラ』のギリシャ語の題名 »

コメント

「ギリシャ人はテキトーに言葉を写している」のでしょうか?

残念ながら私はアヴェスタ語を読めませんのでえらそうなことは言えませんが、古典語の一学徒として一般論を述べさせていただきます。
古典時代のギリシャ人でアヴェスタを読めた人は多分いなかったと思います。おそらくペルシャ語の通詞を介して得た伝聞の知識であったろうと推察されます。(紀元6世紀以降はアラビア語を介して知識を得たようですが、それはまた別の話です)

日本でも「めりけん(=アメリカ)」や「ぎやまん(=ガラス)」と言う言葉が残っておりますが、それを今の感覚で「テキトーな音写である」と言うことは現代人の傲慢に過ぎないと思います。
いやしくも古典語の研究を志す者は、古代人の「いいかげんな音写」をそしるべきではなく、よくぞ現代までこのような言葉を文献に残してくれたと感謝すべきではないでしょうか。

蛇足ですが 川原拓雄著『現代ギリシア語辞典(第三版)』には Τάδε έφη Ζαρατούστρας 「ツアラツストラかく語りき」という用例が示されておりますからギリシャでも Ζωροάστηρας と Ζαρατούστρας との二つの異綴り表記があることがわかります。

投稿: ぷ | 2005.08.07 21:00

ごめんなさい。上記の投稿で名前を書き漏らしました。

投稿: ぷんだりか | 2005.08.07 23:03

>「ギリシャ人はテキトーに言葉を写している」のでしょうか?
そうだとおもいますよ。でも、ご意見をうかがって、ちょっと意外なおもいでした。「テキトー」ということばがそんなに気にくわないものでしょうか。とくにわるい意味でも、バカにしているつもりでもありません(かといって、ありがたがっているわけでもありません)。テキトーだということは事実だとおもうのですが。それに、そういうテキトーなうつしかたも、古代人であろうと現代人であろうと、それはそれで興味ぶかいものだとおもいます。

そもそも、なるべくもとのことばにちかづけようという意識がなかったのでしょう。そんなことはべつに必要だとはおもっていなかったということでしょう(現代でも、必要かといわれれば、必要とまではいえないでしょうけど)。この件に関してこだわりがなかった、とでもいえばいいのでしょうか。

「めりけん」とはちょっとはなしがちがうとおもいます。「めりけん」は、きいたままをうつしているわけですが、「Ζωροάστρης」は、それにとどまらず、さらにギリシャ語ふうにしてあります(語尾だけでなく)。古代ギリシャ人のテキトーなうつしかたのおおきな理由のひとつはこれでしょう。外国語にあわせるのではなくて、ギリシャ語にあわせるということです。日本語のばあい、名詞の語尾がないので、まずはそのへんからしてちがうわけですが。

投稿: ゆみや | 2005.08.08 18:43

この記事へのコメントは終了しました。

« ドイツ語の「s」 | トップページ | ニーチェの『ツァラトゥストラ』のギリシャ語の題名 »