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「アイ」は「エ」になる。「イア」は?

「ア・イ」っていう母音の連続か二重母音が「エ(ー)」になったり、「ア・ウ」が「オ(ー)」になったりするのは、あっちこっちのことばにあることで、日本語でも、「たかい」が「たけー」になったりするし、むかし「アウ」だったのが「オー」になってる。フランス語で ai は「エ」、au は「オ」ってよむけど、つづりのほうはむかしの発音をのこしてるから、これもおんなじ変化があったわけだ。英語の ai と au のよみかただってだいたいおんなじようなもんだ。サンスクリット語の「エー」は「アイ」が起源で、「オー」は「アウ」が変化したものだから、ここでもおんなじことがおこってる。

これは、「ア」と「イ」の中間の口のかたちが「エ」だからだ。「ア」から「イ」に口をうごかすのを節約して、だんだんその中間の「エ」ですましちゃうわけだ。「ア」と「ウ」もおんなじで、中間の口のかたちが「オ」だから、そうなる。じゃあ、逆のならびならどうなんだろ。

「イ・ア」とか「ウ・ア」のばあいは、まえの「イ」「ウ」が母音のまえで半母音になって、けっきょく「ヤ」「ワ」になるっていうのがまずかんがえられるけど、「エ(ー)」「オ(ー)」になることはないのか…。

で、「イ・ア」「ヤ」が「エ」になったり、「ウ・ア」「ワ」が「オ」になったりする例がないかっておもってたら、まずは奈良時代よりまえの日本語で「イ・ア」が「エ」になったらしい。それから、ネパール語にもあった。文字のうえでは(ローマ字にうつせば) ya ってかいてあるのを「エ」って発音するとか、wa も、とくに単語のおわりでそのまえに子音があると「オ」になることがおおいらしい。たとえばサンスクリット語の सत्त्व sattva [サットワ]が「サット(satto)」になったりする。それから、ネパールの首都カトマンズにある有名な仏塔はサンスクリット語としていえば स्वयम्भू svayambhū [スワヤンブー]だけど、現地の発音だと「ソエンブ(soembhu)」みたいになるらしくて、ここでも「ワ」が「オ」になって、「ヤ」が「エ」になってるのがわかる。「ワ」「ヤ」だったのが「オ」「エ」になってるのはヒンディー語にもある。

サットワ:サットヴァ。 カトマンズ:カトマンドゥ。 スワヤンブー:スヴァヤンブー。

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コメント

「イ」や「ウ」が、半母音化するばあいと、しないばあいの ちがいは、どこからくるんでしょうね。

投稿: ハラナ・タカマサ | 2005.09.04 12:19

もともと、[ai]のような二重母音は母音+半母音とも解釈されるものです。スラブ語では二重母音を母音字+半母音字であらわしているようで、たぶんそれにならってエスペラント語でもそうしています。逆に、[wa]のようなものも二重母音とも解釈されます。半母音がまえにあるほうが子音として意識されやすいということではないでしょうか。
まず母音連続があって、それが二重母音になる。さらにばあいによっては二重母音がとけあってしまう。こういう順序だとおもうのですが、くりかえすと、この二重母音というものは、母音と半母音のくみあわせとかんがえることもできるということです。

投稿: ゆみや | 2005.09.04 18:13

>「イ・ア」「ヤ」が「エ」になったり…
する例ですが、

『リグ・ヴェーダ』以来のYAMAを中国経由で
「閻魔エンマ」と言いますけど、ネパールでは
「イェンマ」と発音している由。
対応するチベット語はgsin-rjeですから、
yamaからyenmaへの変化と考えるのが自然かな。
お説の例証の一つでしょうかネェ…?

投稿: jiira | 2006.06.27 23:21

「閻」は拼音で「yán」ですが、いまの北京語の発音は[iεn]です。これは主母音の「a」が介母音の「y(i)」と韻尾の「n」の影響でうえにひっぱられて[ε]になったと説明されています。ですから、「n」も関係していますが、ここでも「i」の影響ということがあるわけです。日本に「閻魔」がはいってきたときに「閻」は[yiεm]という発音だったらしくて、「エ」になっているのは日本語以前のことですね。それから、中古音で[yiεm]だったということは、このときはまだ韻尾は「n」ではないのですから、主母音が[ε]になったもともとの原因は「n」ではなくて、やっぱり「i」なのではないかとおもいます。

ネパール語の「ya」は[e]か[ye]になることがおおいので、この部分についてはどこの影響ということでもないでしょう。ただし、「Yama」の最後の母音はなくなるとおもうので、「イェム」とでもなるのならわかるんですけど、「イェンマ」なのはふしぎですね。なにかの「マ」がくっついたんでしょうか。

投稿: yumiya | 2006.06.28 19:24

つけたし:

ちょっと気になったので、『ネパール語辞典』(大学書林)をみてみたら、「ヤマ」の発音は「yam(a)」となっていました。つまり最後の母音はあったりなかったりするということです。それから、この辞書では「ya」が[ye]の発音になるものは「ya<ye>」というふうにかいてあるのですが、「ヤマ」については「ya<ye>m(a)」とはなっていなかったので、この辞書にのっている発音としては、「ヤマ」か「ヤム」ということになるようです。

以上は、単独のばあいで、「Yamarāja」みたいにあとになにかつづくときは、ヒンディー語の「yamrāj」とはちがって、「yam」とはならないで、「yamaraj」というふうにこの辞書にでていました。

投稿: yumiya | 2006.06.29 17:17

「イェンマ」という発音は辞書経由ではなく、一緒に昔インド・ネパール方面に出かけた仲間が合流後に報告してくれたもので、気になりつつもきちんと調べてないのです。

「夜磨(摩)」に対して「閻(焔・剡・琰)魔(磨・摩)」が漢訳に見られるのはヴェーダ時代の"YAMA"から"(Y)ENMA"という発音の変化もインド現地で進んでいたのかナァ…とも思えるのですが。調べてみたら面白いかも。

投稿: JIIRA | 2006.07.02 18:10

うえのコメントの後半部分は削除させていただきました。jiira さんがおっしゃっている件についてはいまのところかいていません。それでも、ここにそのなまえがあると、検索にかかってしまうこともあるでしょう。そうなると、しらべたかたがここをみにきても、それについてなにもかいてないということになってしまいます。ですから、まことに勝手ですが、その部分は削除することにしました。

投稿: yumiya | 2006.07.03 08:43

この記事へのコメントは終了しました。

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