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ドイツ語の「e」と「ä」

ドイツ語で「エ」をあらわす文字としては e と ä がある。ä はこの活字がないときは ae ってかくことになってるけど、これはもともと a の上の記号が e だったからだ。ふるくは a の上にちいさい e をつけてた。ドイツ文字(Fraktur [フラクトゥーア]、亀の甲文字)の e の筆記体が(前後につながる部分をのぞくと)「〃」ににてて、それからふたつの点になった。

このふたつの文字の発音は、アクセントがあるばあい、みじかい母音のときはおんなじひろい「エ[ɛ]」だけど、ながい母音だと、e はせまい「エ~[eː]」、ä はひろい「エー[ɛː]」ってことになってる。ところが実際にはドイツ人はどっちもせまい「エ~[eː]」で発音してる。方言的な発音ってこともかんがえられるけど、実際の発音だと、口のうごきを節約する方向にかわってくのはよくあることだから、これもそうなんだろう、っておもってたけど、どうもそういうことじゃないらしい。

そもそも、いまのドイツ語の音韻体系としては、ながい母音はせまく、みじかい母音はひろく発音される。ä とおんなじ記号がついてる ö と ü も、みじかい母音のときはひろくて、ながい母音のときはせまいのに、なぜか ä だけは標準発音としてはながい母音でもせまくならない。

ä は変化形とか派生語につかわれることになってる。このつづりは南ドイツの印刷所からひろまったらしい。このつづりの影響で、標準発音としてはながくてせまい[eː]とながくてひろい[ɛː]のちがいがうまれたんだけど、このちがいは歴史的な発音の変化からしても根拠がないらしいし、いまの母音の組織としてもおかしい。

これは、かきことばがはなしことばの(標準)発音に影響をおよぼしたっていう近代的な逆転した現象だ。そもそも標準発音そのものが人工的なものだけど、それにしても、ながい ä の実際の発音は、いまのドイツ語としてはもともとあった区別がなくなっちゃったってことじゃなくて、ほんとは最初からながくてひろい ä の発音なんてなかったんだ。

2005.09.21 kakikomi

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コメント

ご無沙汰しています。LとRの半母音のお話もなるほどと面白いのですが、ここのウムラウトの件も、書き言葉から話し言葉と言う事で良く理解出来ます。

例えば、Teddy Bärの発音記号は、[ε]と[ε:]とは異なり、もちろんTee[e:]とも峻別されて明らかに響きも違いますね。

投稿: pfaelzerwein | 2005.10.18 18:52

おひさしぶりです。
Teddy Bär ということでおもいだしましたが、英語からドイツ語にはいった単語の発音で、ドイツ語式には、ながい「a」つまり[ei]は[e:]、みじかい「a」つまり[æ]は[ε]と発音しているみたいですね。辞書をみると、「Baby」は[be:bi]、「Band(バンド、楽団)」は[bεnt]になってました。ただ「Band」には英語式の[bænd]という発音ものっていたので、このへんはいろいろあるんでしょうけど、「Adams」という英語のなまえをドイツ人が[εdams]みたいに発音していたのをきいたこともあります。

投稿: yumiya | 2005.10.18 19:28

流石に外来語の事を気づかれましたか。私も辞書を見ていて、Teteとかフランス語からの言葉も見付けました。

[bεnt]は、非常に一般的で特徴的な英語発音と感じています。

投稿: pfaelzerwein | 2005.10.19 19:04

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