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ケルンのサッカー・チームの応援歌

NHK教育テレビの外国語会話は、10月からは前期の再放送がおおいけど、番組のなかのコーナーにはすこしちがいがあって、「ドイツ語会話」の後半の「文化コーナー」の毎月第1週には、3月までこの番組にでてたペナルティが復活した。

コーナーの名まえは、「ペナルティが行く ドイツ・ワールドカップへの道」。第1回は、FCケルンの本拠地で、ワールドカップの会場にもなるライン・エネルギー・シュタディオン(RheinEnergieStadion)にいって、サポーターとビールのんでさわいだりしてたけど、そのなかでチームの応援歌がでてきて、この歌詞が方言だった。

ひとつ目の歌を字幕のとおりにうつすと、

Es unser Veedel
ここが我らのまち
Denn He halt m'r zosamme
ここで我らは団結している

これを標準ドイツ語にそのまんま訳すと、たぶん「Ist unser Viertel/Denn hier halten wir zusammen」になるだろう(これでいいのかな…)。Veedel はケルンの方言の特徴的なことばらしくて、字幕の訳は「まち」だけど、ドイツ語のウィキペディアにわざわざ「Veedel」って項目があった。

もうひとつの歌は、

Lehrefeld, Raderthal, Nippes, Poll, Esch, Pesch un Kalk
Üvverall jett es Fans vom FC Kölle
どこにでも FC Köln のファンがいる

っていうのだったけど、1行めには訳はついてなかった。まあ、ケルンの町の名まえをならべてるだけだから…。で、字幕にはまちがいがあるみたいで、ネットでしらべたら、最初の Lehrefeld はほんとは Iehrefeld だった。番組のなかでも「イエーレフェルト」ってうたってたし。それから、2行めの jett es のとこは jitt et で、vom はそのまんまのもあったけど、vum になってるのもあった。方言の発音は幅があるから、o でも u でもいいようなこともよくある(e と i もそう)。で、標準語に訳すと、「Ehrenfeld, Raderthal, Nippes, Poll, Esch, Pesch und Kalk/Überall gibt es Fans vom FC Köln」。

土地の名まえにも方言があって、上の歌詞でも、Ehrenfeld が Iehrefeld 、Köln (ケルン)が Kölle (ケレ)になってる。ケルンっていう名まえのもとは、ラテン語の Colonia Agrippina [コローニア・アグリッピーナ]」または Colonia Agrippinensis [コローニア・アグリッピーネ(ー)ンシス]」で、「アグリッピーナ(皇帝ネローの母)の植民地」っていう意味だ。これが「コローニア」(植民地)だけがのこって、ドイツ語では Köln になった。イタリア語だと Colonia [コローニア]で、フランス語なら Cologne [コローニュ]、英語なら Cologne [カロウン]、それから現代ギリシャ語だと Κολωνία [コロニーア]になる。

FCケルンの応援歌は番組じゃ2行ずつしかながれなかったけど、歌詞のほかの部分にはライン川(Rhein)も方言ででてきて、Rhing になってた。「ライン」って名まえはケルト系のことばで、「ながれ」ってことだから、要するにたんなる「川」って意味なわけだ。ドイツ語そのものでも、fließen [フリーセン](ながれる)って動詞の名詞 Fluss [フルス](ながれ)が「川」っていう意味になってる。で、この Rhein ってことばはギリシャ語の「ながれる」(不定詞でいえば ῥεῖνêːn レ~ン]、ローマ字でかけば rhein)っていう動詞と語源がおんなじで、それから、ギリシャ語でライン川のことは Ῥῆνοςêːnos レーノス]っていった(現代語なら Ρήνος [リーノス])。ラテン語だと Rhenus [レーヌス]で、イタリア語なら Reno [レーノ]、フランス語だと Rhin [ラン]、英語なら Rhine [ライン]。

チームの応援歌が方言なのはドイツらしいのかな、とおもったけど、しらべてみるとべつにそういうわけでもないみたいで、ほかのチームのは標準語だった。

アグリッピーナ:アグリッピナ。 ネロー:ネロ。

2005.10.15 kakikomi; 2009.05.06 kakinaosi

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コメント

Kölnの方言のお話、興味深くうかがいました。標準ドイツ語もケルンの
方言もよくわからぬ罰当たり者です。私の乏しい観察では、こっちの
人は、ichをイッシといい、richtigの語尾はリヒティクのように~クと発音するように思えます。
2月にカーニヴァルがあるのですが、その時には、コローニアという歌がどこでも聞こえてきますよ。

投稿: tamayam | 2005.10.15 05:39

「ich」の「ch」は、どこの方言ということではなくて、たいてい日本語の「シ」にちかい感じにきこえるようにおもいます。日本語の「ヒ」というふうにならうのがふつうですが、ちょっとちがうようにおもいます。この「ch」は「j」の無声音で、ドイツ語の「j」は日本語のヤ行とちがって摩擦音なので、まえにかいたことがありますが、「ジ」にちかいような感じでもあります。これの無声音なら「シ」ににていてもおかしくありません。テレビの「ドイツ語会話」にでているひとの発音でも、「München」は「ミュンシェン」にきこえます。

日本語の「シ」はくちびるをまるめないで、舌さきは下前歯のほうにむいているのですが、これとちがって、英語の「sh」、ドイツ語の「sch」はくちびるをまるめて、舌さきを上前歯のほうにあげています。ですから、この点でも、日本語の「シ」はドイツ語の「ich」の「ch」にちかいといえます。

「richtig」の発音は、これも、どこの方言とはいえないとおもうんですけど、けっこう「リヒティク」というのはききますねえ。これは標準発音ではないわけですが、「~ク」と発音するひとはけっこうおおいんじゃないでしょうか。

カーニバルのうたで、「コローニア」ですか。やっぱり、なにかとラテン語のなまえってでてくるんですね。そういえば、イギリスでも、ブリテンのラテン語名をつかった「Rule, Britannia」といううたがあります。ドイツのラテン語名は「Germania」ですけど、ライン川のほとりに「Germania」の像がありますよね。

投稿: yumiya | 2005.10.15 19:07

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