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ギリシャ語の回文

回文っていうのは、逆からよんでもおんなじ文章になってるもののことだけど、日本語だと「タケやぶ やけた」なんてのが有名だろう。英語なら ‘Madam, I'm Adam.’ あたりかな。

古代ギリシャ語の回文にはこんなのがある。

νίψον ἀνομήματα μὴ μόναν ὄψιν.

よみかたは、[nípson anomɛ̌ːmata mɛ̌ː mónaːn ópsin ニプソン アノメーマタ メー モナーン オプスィン]。意味は「顔だけではなく罪をあらいきよめろ」。νίψον は「あらえ、きよめろ」、ἀνομήματα は「罪(複数)を」、μὴ は否定の副詞、μόναν は「だけ」(古典ギリシャ語の代表格のアッティカ方言なら μόνην [mónɛːn モネーン]になるけど、それじゃ回文にならない。これはアッティカ方言・イオーニアー方言以外のかたち)、ὄψιν は「顔(単数)を」。

この回文は、ほかのことばでもそうだけど、あくまで文字を逆からよむものだから、ローマ字にうつしたものからするといくつかおかしいとこがある。ひとつは ps 。最後の単語 opsin を逆によむと nispo になって、最初の nipso(n) とおんなじにはならない。これはギリシャ文字の ψ (=ps)があるからで、ラテン文字の x みたいにふたつの子音をあらわしてる文字だから、回文でも、x は[ks]のまんまかわりがないのとおんなじで、[ps]も逆にはならない。だから、ギリシャ文字で οψιν (opsin)を逆からよむと νιψο (nipso)になる。

それからもうひとつ。古代のギリシャ語の α はみじかい「ア」とながい「アー」の両方をあらわしてた。だから、この回文でも、まえからよめば「モナーン」のながい「アー」なのが、うしろからよむときは「アノメーマタ」の最初のみじかい「ア」になってる。

イオーニアー:イオニア。

2005.11.25 kakikomi; 2011.08.037 kakinaosi

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