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ドイツ語の外来語文字

ドイツ語の印刷物の活字は、いまはアンティークワ(Antiqua [アンティークヴァ])っていう英語とかとおんなじ活字をつかってるけど、むかしはフラクトゥーア(Fraktur、ドイツ文字、「亀の甲文字」)っていうゴシック体の一種をつかってた(ドイツ文字(フラクトゥーア)とドイツ語の筆記体」)。そのフラクトゥーアで Fraktur と Antiqua って単語をかくとこうなる。

Fraktur Antiqua

このフラクトゥーアをつかってたころ、外来語(っていうかラテン語の単語?)だけにはアンティークワをつかうなんてことをやってたことがあった。日本語で外来語をカタカナでかくのとおんなじようなもんかな。当時はラテン語もいまよりつかわれてたけど、そのラテン語の文章の活字も当然フラクトゥーアじゃなくてアンティークワだった。

たいていは、その外来語全体がアンティークワになってるけど、なかには語幹の部分だけアンティークワで語尾はフラクトゥーアなんてこともある。外来語にドイツ語としての語尾をくっつけて活用させた単語のばあいがそうだ。

たとえば、musizieren (演奏する)っていう動詞は、むかしは musiciren っていうつづりだったけど、これはギリシャ語起源のラテン語 musica (音楽)に -ieren (むかしは -iren)っていう外来語用の動詞の語尾をくっつけたことばだ。バッハの《クリスマス・オラトリオ》の歌詞の初版本(1734)の表紙をみると、この過去分詞 musiciret (いまなら musiziert)の musici までがアンティークワで、そのあとの ret がフラクトゥーアで印刷されてる。

musiciret

-iren (-ieren)っていう語尾も外来語起源で、むかしのフランス語の動詞の語尾 -ier にドイツ語の動詞の語尾 -en をつけものだから、musicir- までが外来語だともいえるけど、この動詞の語尾そのものは外来語っていう意識はないのかもしれない。それにしても、フラクトゥーアになるのは c のあとの i からじゃないのかなっておもわないでもないけど、音節でくぎったのかな。それから、アンティークワのとこが muſici になってるのは、アンティークワのむかしの活字にもフラクトゥーアとかギリシャ文字みたいにエスが2種類あったからで、s は音節のおわりにつかって、それ以外はながい ſ になる。

で、このばあいもまた日本語のかきかたとにてて、日本語で「サボる」なんていうのをカタカナとひらがなにわけてかいてるとのおんなじような感じだ。このことばはフランス語からはいった「サボタージュ」の「サボ」に動詞の活用語尾「る」をつけたものだから、ドイツ語と日本語でにたようなことをやってるのがわかる。

アンティークワ:アンティークヴァ、アンティクワ、アンティクヴァ。

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2005.11.20 kakikomi; 2009.03.28 kakikae

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コメント

これはかなり専門的なトポグラフィーの問題かなと思いますが、今後は気を付けて見てみましょう。

投稿: pfaelzerwein | 2005.12.05 01:03

むかしのものでこういう例をみたことがある、という程度のはなしなんですけどね。それに「外来語文字」なんていうのはふさわしいいいかたではないかもしれませんけど。

投稿: yumiya | 2005.12.05 17:15

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