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古文のわかちがきの実例(1) 『古事記』

単語式のわかちがきのもとになる単語のわけかたについて「わかちがきのための単語のみわけかた」にかいたけど、そこの例文は現代文だった。でも、これは現代文だけのことじゃなくて、この原則にもとづいて古文の単語をわけることもできる。結論だけを簡単にいえば、だいたい、未然形・連用形につく助詞・助動詞は付属形式で、終止形・連体形につく助詞・助動詞は付属語だってことになる(古文のわかちがき」)。

そこで、3つの古典から、わかちがきした古文の実例をあげておきたい。まずはいちばんふるい『古事記』から。ただし、『古事記』の大部分は一種の漢文でかいてあって、よみかたはいろいろだから、原文がはっきりしてる歌謡のとこにする。そのなかでも、オオクニヌシの神のものがたりにでてくる「かむがたり」はけっこうまとまった量があるから、そこをとりあげる。

わかちがきした文は、ひらがなとローマ字の2種類をあげることにする。ローマ字のほうは上代特殊かなづかいの区別をかきわけて、ハ行の子音は古文だから f であらわした(日本語のローマ字つづり」)。それから、参考のために最後に原文をつけた。

やちほこ の かみ の みこと は
やしまくに つま まき かねて
とほとほし こし の くに に
さかしめ を あり と きかして
くはしめ を あり と きこして
さよばひ に あり たたし
よばひ に あり かよはせ
たち が を も いまだ とかずて
おすひ を も いまだ とかねば
をとめ の なす や いたと を
おそぶらひ わ が たたせれば
ひこづらひ わ が たたせれば
あをやま に ぬえ は なきぬ
さの つ とり きぎし は とよむ
には つ とり かけ は なく
うれたく も なく なる とり か
こ の とり も うち やめこせね
いしたふ や あまはせづかひ
こと の かたりごと も こ をば

やちほこ の かみ の みこと
ぬえくさ の め に し あれば
わ が こころ うらす の とり ぞ
いま こそ は わどり に あらめ
のち は などり に あらむ を
いのち は な しせ たまひそ
いしたふ や あまはせづかひ
こと の かたりごと も こ をば
あをやま に ひ が かくらば
ぬばたま の よ は いでなむ
あさひ の ゑみ さかえ きて
たくづの の しろき ただむき
あわゆき の わかやる むね を
そだたき たたき まながり
またまで たまで さし まき
ももなが に い は なさむ を
あや に な こひ きこし
やちほこ の かみ の みこと
こと の かたりごと も こ をば

ぬばたま の くろき みけし を
まつぶさ に とり よそひ
おき つ とり むな みる とき
はたたぎ も これ は ふさはず
へ つ なみ そ に ぬき うて
そにどり の あをき みけし を
まつぶさ に とり よそひ
おき つ とり むな みる とき
はたたぎ も こ も ふさはず
へ つ なみ そ に ぬき うて
やまがた に まきし あたたね つき
そめき が しる に しめころも を
まつぶさ に とり よそひ
おき つ とり むな みる とき
はたたぎ も こ し よろし
いとこ や の いも の みこと
むらとり の わ が むれ いなば
ひけとり の わ が ひけ いなば
なかじ と は な は いふ と も
やまと の ひともとすすき
うなかぶし な が なかさまく
あさあめ の きり に たたむ ぞ
わかくさ の つま の みこと
こと の かたりごと も こ をば

やちほこ の かみ の みこと や
あ が おほくにぬし
な こそ は を に いませば
うち みる しま の さきざき
かき みる いそ の さき おちず
わかくさ の つま もたせらめ
あ は も よ め に し あれば
な を きて を は なし
な を きて つま は なし
あやかき の ふはや が した に
むしぶすま にこや が した に
たくぶすま さやぐ が した に
あわゆき の わかやる むね を
たくづの の しろき ただむき
そだたき たたき まながり
またまで たまで さし まき
ももなが に い を し なせ
とよみき たてまつらせ

Yatifökö nö kamï nö mikötö fa
yasimakuni tuma maki kanete
töfötöfösi Kosi nö kuni ni
sakasime wo ari tö kikasite
kufasime wo ari tö kikösite
sayobafi ni ari tatasi
yobafi ni ari kayofase
tati ga wo mö imada tökazute
ösufi wo mö imada tökaneba
wötöme nö nasu ya itato wo
ösöburafi wa ga tatasereba
fiködurafi wa ga tatasereba
awoyama ni nuye fa nakinu
sano tu töri kigisi fa töyömu
nifa tu töri kake fa naku
uretaku mö naku naru töri ka
kö nö töri mö uti yamë kösene
isitafu ya amafasedukafi
kötö nö katarigötö mö kö woba

Yatifökö nö kamï nö mikötö
nuyekusa nö me ni si areba
wa ga kökörö urasu nö töri zö
ima kösö fa wadöri ni aramë
nöti fa nadöri ni aramu wo
inöti fa na sise tamafi sö
isitafu ya amafasedukafi
kötö nö katarigötö mö kö woba
awoyama ni fi ga kakuraba
nubatama nö yo fa idenamu
asafi nö wemi sakaye kite
takuduno nö siroki tadamuki
awayuki nö wakayaru mune wo
södataki tataki managari
matamade tamade sasi maki
momonaga ni i fa nasamu wo
aya ni na kofï kikösi
Yatifökö nö kamï nö mikötö
kötö nö katarigötö mö kö woba

Nubatama nö kuroki mikesi wo
matubusa ni töri yösöfi
öki tu töri muna miru töki
fatatagi mö köre fa fusafazu
fe tu nami sö ni nuki ute
sonidöri nö awoki mikesi wo
matubusa ni töri yösöfi
öki tu töri muna miru töki
fatatagi mö kö mö fusafazu
fe tu nami sö ni nuki ute
yamagata ni makisi atatane tuki
sömëkï ga siru ni simëkörömö wo
matubusa ni töri yösöfi
öki tu töri muna miru töki
fatatagi mö kö si yörösi
itoko ya nö imo nö mikötö
muratöri nö wa ga mure inaba
fikëtöri nö wa ga fikë inaba
nakazi tö fa na fa ifu tö mö
yamatö nö fitömötö susuki
unakabusi na ga nakasamaku
asaamë nö kïri ni tatamu zö
wakakusa nö tuma nö mikötö
kötö nö katarigötö mö kö woba

Yatifökö nö kamï nö mikötö ya
a ga Öfökuninusi
na kösö fa wo ni imaseba
uti mïru sima nö sakizaki
kaki mïru iso nö saki ötizu
wakakusa nö tuma mötaseramë
a fa mö yö me ni si areba
na wo 'kite wo fa nasi
na wo 'kite tuma fa nasi
ayakaki nö fufaya ga sita ni
musibusuma nikoya ga sita ni
takubusuma sayagu ga sita ni
awayuki nö wakayaru mune wo
takuduno nö siroki tadamuki
södataki tataki managari
matamade tamade sasi maki
momonaga ni i wo si nase
töyömiki tatematurase

夜知富許能 迦微能美許登波
夜斯麻久尓 都麻〃岐迦泥弖
登〃富〃斯 故志能久迩〃
佐加志売袁 阿理登岐迦志弖
久波志売遠 阿理登伎許志弖
佐用婆比迩 阿理多〃斯
用婆比迩 阿理迦用婆勢
多知賀遠母 伊麻陀登加受弖
淤須比遠母 伊麻陀登加泥婆
遠登売能 那須夜伊多斗遠
淤曾夫良比 和何多〃勢礼婆
比許豆良比 和何多〃勢礼婆
阿遠夜麻迩 奴延波那伎奴
佐怒都登理 岐藝斯波登与牟
尓波都登理 迦祁波那久
宇礼多久母 那久那留登理加
許能登理母 宇知夜米許世泥
伊斯多布夜 阿麻波勢豆加比
許登能 加多理其登母 許遠婆

夜知富許能 迦微能美許等
奴延久佐能 売迩志阿礼婆
和何許〃呂 宇良須能登理叙
伊麻許曾婆 和杼理迩阿良米
能知波 那杼理尓阿良牟遠
伊能知波 那志勢多麻比曾
伊斯多布夜 阿麻波世豆迦比
許登能 加多理碁登母 許遠婆
阿遠夜麻迩 比賀加久良婆
奴婆多麻能 用波伊伝那牟
阿佐比能 恵美佐加延岐弖
多久豆怒能 斯路岐多陀牟岐
阿和由岐能 和加夜流牟泥遠
曾陀多岐 多〃岐麻那賀理
麻多麻伝 多麻伝佐斯麻岐
毛〃那賀尓 伊波那佐牟遠
阿夜尓 那古斐岐許志
夜知富許能 迦微能美許登
許登能 迦多理碁登母 許遠婆

奴婆多麻能 久路岐美祁斯遠
麻都夫佐尓 登理与曾比
淤岐都登理 牟那美流登岐
波多〃藝母 許礼婆布佐波受
弊都那美 曾迩奴岐宇弖
蘇迩杼理能 阿遠岐美祁斯遠
麻都夫佐迩 登理与曾比
淤岐都登理 牟那美流登岐
波多〃藝母 許母布佐波受
弊都那美 曾迩奴棄宇弖
夜麻賀多尓 麻岐斯 阿多〃尼都岐
曾米紀賀斯流迩 斯米許呂母遠
麻都夫佐迩 登理与曾比
淤岐都登理 牟那美流登岐
波多〃藝母 許斯与呂志
伊刀古夜能 伊毛能美許等
牟良登理能 和賀牟礼伊那婆
比気登理能 和賀比気伊那婆
那迦士登波 那波伊布登母
夜麻登能 比登母登須〃岐
宇那加夫斯 那賀那加佐麻久
阿佐阿米能 疑理迩多〃牟叙
和加久佐能 都麻能美許登
許登能 加多理碁登母 許遠婆

夜知富許能 加微能美許登夜
阿賀淤富久迩奴斯
那許曾波 遠迩伊麻世婆
宇知微流 斯麻能佐岐耶岐
加岐微流 伊蘇能佐岐淤知受
和加久佐能 都麻母多勢良米
阿波母与 売迩斯阿礼婆
那遠岐弖 遠波那志
那遠岐弖 都麻波那斯
阿夜加岐能 布波夜賀斯多尓
牟斯夫須麻 尓古夜賀斯多尓
多久夫須麻 佐夜具賀斯多尓
阿和由岐能 和加夜流牟泥遠
多久豆怒能 斯路岐多陀牟岐
曾陀多岐 多〃岐麻那賀理
麻多麻伝 多麻伝佐斯麻岐
毛〃那賀迩 伊遠斯那世
登与美岐 多弖麻都良世

わかちがき:分かち書き、分ち書き。 オオクニヌシの神:大国主神、大国主命。

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2006.03.18 kakikomi; 2009.03.28 kakikae

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