« 発音記号の名まえ | トップページ | 融通のきかない英語 »

サンスクリット語の惑星と曜日の名まえと日本語の曜日

まえに西洋語とサンスクリット語の黄道十二宮の名まえ(西洋とインドの星うらない」)と、西洋語の惑星の名まえ(西洋の惑星の名まえ」)のことをかいたけど、サンスクリット語の惑星の名まえについては、ギリシャ語からはいった外来語(ギリシャ語からサンスクリット語にはいった外来語(十二宮・惑星など)」)のことしかかいてないから、外来語じゃないほうの名まえについてかくことにしたい。

サンスクリット語の単語はいろんな意味があるのがおおいし、逆にひとつのもののことをいろんな単語でいうこともおおいから、代表的な名まえだけあげることにする。インドだと惑星の順序は曜日の順がふつうで、それから、西洋とおんなじでむかしは惑星に太陽と月もふくまれる。

  • 太陽:सूर्य sūrya [スーリヤ]/आदित्य āditya [アーディッテャ]/रवि ravi [ラヴィ]
  • 月:चन्द्र candra [チャンドラ]/सोम soma [ソーマ]
  • 火星:मंगल/मङ्गल magala/magala [マンガラ]/कुज kuja [クジャ]/अंगार()/अङ्गार() agāra(ka)/agāra(ka) [アンガーラ(カ)]
  • 水星:बुध budha [ブダ]
  • 木星:बृहस्पति bhaspati [ブリハスパティ]/गुरु guru [グル]
  • 金星:शुक्र śukra [シュックラ]
  • 土星:शनि śani [シャニ]/शनैश्चर śanaiścara [シャナイシュチャラ]

सूर्य [スーリヤ]は「かがやく」って意味の सुर् sur [スル]または स्वर् svar [スワル]からできたことばで、太陽(の神)の名まえとしてわかりやすい。आदित्य [アーディッテャ](アーディティヤ)は「女神アディティ(अदिति Aditi)の子」って意味で、このことばはふつう複数形でつかわれるけど、とくに単数形で太陽(の神)のことをさすようになった。रवि [ラヴィ]は語源が रु ru [ル](ほえる、さけぶ、うなる)だっていう説明がある。

चन्द्र [チャンドラ]は「ひかる、かがやく」って意味で、月(の神)の名まえとしてわかりやすいだろう。सोम [ソーマ]の意味は「しぼり汁」で、ベーダの儀式でいちばん重要な供物になるのみもののこと。これが神格化されて神の名まえになって、さらに月の神ってことにもなった。ソーマが月の神になったのは『リグ・ベーダ』(ऋग्वेद gveda)末期からで、月をソーマのうつわってかんがえたのがおもな理由らしい。

火星の मंगल [マンガラ]は「しあわせ、繁栄」って意味のことばで、火星は戦争の神カールッティケーヤ(कार्त्तिकेय Kārttikeya)とおんなじ神ってことになってる。ギリシャのアレース、ローマのマールスとおんなじでインドでも火星は戦争の神なわけだ。シバ(शिव Śiva [シヴァ])と大地の女神の子だから कुज [クジャ](大地からうまれたもの)ともいわれる。अंगार() [アンガーラ(カ)]は「炭」ってことで、これも大地の子ってことと関係がある。

水星の बुध [ブダ]は、形容詞としては「理解力がある、かしこい」、名詞としては「知者、賢者、聖者」っていう意味で、ブッダ(बुद्ध Buddha、仏陀[ぶつだ])とにてるけど、単語としてはべつ。ただしおんなじ語根からできてることばだから関係はある。बुध् budh [ブド](目ざめる、さとる)っていう動詞からできた形容詞・名詞が बुध [ブダ]で、この動詞の過去受動分詞 बुद्ध buddha の名詞としてのつかいかたが「ブッダ」(目ざめたひと、さとったひと)だ(ブッダとウォータン 」)。

木星の बृहस्पति [ブリハスパティ]は神の名まえで、ことばの意味としては「祈祷の主」。ギリシャ・ローマで木星はゼウス、ユーピテルって最高神の名まえがついてるけど、ブリハスパティも「神がみの師匠」っていわれてるからおんなじようなもんだろう。このことから「師匠」って意味の गुरु [グル]ともいわれる。

金星の शुक्र [シュックラ]は「かがやく、あかるい」って意味で、いちばんあかるい惑星の名まえとしてよくわかる。ダイティヤ(दैत्य Daitya [ダイッテャ])の師匠っていわれるけど、ダイティヤっていうは一種の巨人族で、アスラ(असुर Asura、阿修羅[あしゅら])とかとおんなじように神がみと対立する悪魔的な存在。神がみと対立する巨人族っていえば、ギリシャ神話にもティーターン族ってのがいたっけ。で、西洋じゃ、金星の別名、ラテン語の Lucifer [ルーキフェル](あけの明星、英語よみで[ルーシファー])が堕天使の名まえになって、ばあいによってはサタンってことにもなってるけど、インドの金星が悪魔族の師匠だってことをかんがえると、なかなかおもしろい。

土星の शनैश्चर [シャナイシュチャラ]は「ゆっくりうごく」って意味で、शनि [シャニ]もたぶんおんなじ意味らしい。土星が惑星のなかでいちばんうごきがおそいから、こういう名まえがついた。

こういうインドの惑星の名まえなんて、ぜんぜんなじみがないとおもうけど、むかしの日本には仏教をとおしてつたわってた。その名まえをあげれば、

  • 太陽:蘇利耶(sūrya)/阿儞底耶(āditya)
  • 月:戦捺羅(candra)/蘇摩(soma)
  • 火星:盎哦囉迦(agāraka)
  • 水星:部陀(budha)
  • 木星:勿哩訶娑跛底(bhaspati)
  • 金星:戌羯羅(śukra)
  • 土星:賖乃以室折囉(śanaiścara)

漢字はただ発音をうつしただけだから意味はないし、ほかの漢字をあててるばあいもある。それに、梵語[ぼんご](=サンスクリット語)の名まえとしてあげてあるか、真言[しんごん](梵語の呪文みたいなもの)のなかにでてくるだけで、これが日本語としてつかわれてたっていうのとはちょっとちがう。それでも「そりや」(太陽)と「そま」(月)と「しゅから」(金星)あたりはつかわれたみたいだけど。で、ふつうはこういう名まえじゃなくて訳した名まえをつかってた。つまり、「日曜」「月曜」「火曜」「木曜」「金曜」「土曜」で、この「曜」って漢字は「かがやく」ってことから「星」の意味になったから、「火曜」っていうのは「火星」ってことだ。さらに、意味がかさなるけど「星」をつけて「火曜星[かようしょう]」っていうふうにもいってた。それから仏典にはいまとおんなじ「火星」「水星」「木星」「金星」「土星」っていうのもでてくるし、「太白」(金星)とかの中国名になってるばあいもある。

ところで、こういう惑星の名まえからわかるように、「火曜日」っていうのは「火星日」ってことだ。インドでもおんなじことで、惑星の名まえのあとに「日」って意味のことばをつけて曜日の名まえになってる。「日」の意味のことばは वार vāra [ヴァーラ]だったり दिन dina [ディナ]だったり वासर vāsara [ヴァーサラ]だったりっていくつかあるし、惑星の名まえもいくつかあるから、曜日のいいかたもいろいろある。たとえば日曜日なら、सूर्यवार sūryavāra [スーリヤヴァーラ]、आदित्यवार ādityavāra [アーディッテャヴァーラ]、रविवार ravivāra [ラヴィヴァーラ]、रविदिन ravidina [ラヴィディナ]、रविवासर ravivāsara [ラヴィヴァーサラ]…。それから रवि [ラヴィ]だけでも「日曜日」の意味だったり。これなんか日本語でも曜日のいいかたを略して「日曜」とかいってるとおんなじようなもんだろう。こういうふうにいろいろある曜日の名まえだけど、そのなかで代表的なものをつぎにあげておこう。

  • 日曜日:रविवार ravivāra [ラヴィヴァーラ]
  • 月曜日:सोमवार somavāra [ソーマヴァーラ]
  • 火曜日:मंगलवार/मङ्गलवार magalavāra/magalavāra [マンガラヴァーラ]
  • 水曜日:बुधवार budhavāra [ブダヴァーラ]
  • 木曜日:बृहस्पतिवार bhaspativāra [ブリハスパティヴァーラ]/गुरुवार guruvāra [グルヴァーラ]
  • 金曜日:शुक्रवार śukravāra [シュックラヴァーラ]
  • 土曜日:शनिवार śanivāra [シャニヴァーラ]

これはこのまんまのつづりで、おんなじ文字のヒンディー語にもネパール語にもなってる(ただし発音はすこしちがう)。

名まえ:名前、なまえ。 ベーダ:ヴェーダ。 アレース:アレス。 マールス:マルス。 ユーピテル:ユピテル。 ティーターン:ティタン。 

関連記事
 ・ギリシャ語からサンスクリット語にはいった外来語(十二宮・惑星など)
 ・日本の七曜神?
 ・西洋とインドの星うらない
 ・西洋の惑星の名まえ
 ・曜日の由来(1) 曜日の順序と1週間
 ・曜日の由来(2) 土曜日と安息日
 ・曜日の由来(3) 日曜日
 ・曜日の由来(4) 月曜日
 ・曜日の由来(5) 火曜日
 ・曜日の由来(6) 水曜日
 ・曜日の由来(7) 木曜日
 ・曜日の由来(8) 金曜日
 ・ブッダとウォータン

2006.04.02 kakikomi; 2010.03.14 kakitasi

|

« 発音記号の名まえ | トップページ | 融通のきかない英語 »