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「主の祈り」(4) 英語

聖書の英語訳はいっぱいあるから、とりあえず代表としてやっぱり欽定訳(Authorized Version/King James Version, 1611)の「主の祈り」をあげておこう(改行は「「主の祈り」(1) ギリシャ語」にあげた日本語版にあわせた。以下おなじ)。

Our Father which art in heaven,
Hallowed be thy name.
Thy kingdom come,
Thy will be done in earth,
as it is in heaven.
Give us this day our daily bread.
And forgive us our debts,
as we forgive our debtors.
And lead us not into temptation,
but deliver us from evil:
For thine is the kingdom, and the power, and the glory, for ever. Amen.

1行めの which art はいまの英語なら who are になる。ここで、動詞が2人称単数の art/are なのは「父」に対するよびかけだからだ。でも、英語訳のなかにはここが who is になってるのもある。こっちのほうがいまの英語としてはふつうなのかな。それにしても、ここの翻訳は関係代名詞 which と動詞 art をつかってて、ウルガタ(「主の祈り」(2) ラテン語」)を訳したみたいになってる。ギリシャ語の原文だと関係代名詞と動詞はない(「主の祈り」(1) ギリシャ語」)。それから thy thine はいまなら your yours で、ふるい2人称単数だ。

もうひとつ特徴がある英語訳として、ベーシック・イングリッシュ訳の聖書 “Bible in Basic English” の「主の祈り」をあげておく。

Our Father in heaven,
may your name be kept holy.
Let your kingdom come.
Let your pleasure be done,
as in heaven, so on earth.
Give us this day bread for our needs.
And make us free of our debts,
as we have made those free who are in debt to us.
And let us not be put to the test,
but keep us safe from the Evil One.

1行めは原文どおり関係代名詞と動詞をつかってない。4行めは、ほかの英語訳だと will って訳してるのが、これだと pleasure になってる。これはベーシック・イングリッシュに名詞の will がないからだ。pleasure は、たいてい所有格がついた one's pleasure ってかたちで「意志、希望、このみ」って意味でつかわれる。それから、まえにもかいたけど(ベーシック・イングリッシュ訳の聖書」)、6行めの「パン」にかかる形容詞 ἐπιούσιος [epiǔːsios エピウースィオス]の解釈が欽定訳とちがってる。欽定訳は「毎日の(daily)」、ベーシック訳は「必要な(for our needs)」。それと、10行めの the Evil One は「悪魔」ってことで、欽定訳はただの evil だから「悪、悪事、わざわい」。11行めは “Bible in Basic English” にはない。

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 ・「主の祈り」(1) ギリシャ語
 ・「主の祈り」(2) ラテン語
 ・「主の祈り」(3) ドイツ語
 ・「主の祈り」(5) サンスクリット語
 ・ベーシック・イングリッシュ訳の聖書
 ・文語訳聖書と欽定訳聖書のちがい

2006.05.12 kakikomi; 2010.09.13 kakinaosi

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