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LAMBDACISM, RHOTACISM

前回の「IOTACISM, ITACISM, ETACISM」みたいにギリシャ文字の名まえに -cism をつけた用語として、ラムダ(Λ)とロー(Ρ)からつくったことばがある。ラムダとローは英語でいえばエルとアールだから、多少なかみも関係してる。

ラムダからできたのは lambdacism [ラムダスィズム]。これは labdacism [ラブダスィズム]ともいうんだけど、ラムダの名まえはもともとは λάβδα [lábda ラブダ]で、それから λάμβδα [lámbda ランブダ]ってかたちもできたから(ギリシャ語の文字と発音:Λ λ」「ラムダ、ランブダ、ラブダ」)、ラムダシズムにしてもふたつのかたちがある。ギリシャ語の λα(μ)βδακισμός [la(m)bdakizmós ラ(ン)ブダキズモス]がラテン語の la(m)bdacismus [ラ(ン)ブダキスムス]になって、それが英語の la(m)bdacism になった。英語の lambda(cism) は b を発音しない。

意味は「文章のなかで L の音をつかいすぎること」。それから、もうひとつの意味として「R を正確に発音できなくて L みたいに発音すること」っていうのもある。

ローからできたのは rhotacism [ロウタスィズム]で、rhocism じゃなくて rhotacism なのは、iotacism からの連想らしい。意味は「R の音のつかいすぎ」とか「R の特有の発音、とくにノドの R の発音」。「ノドの R」っていうのは、フランス語とかドイツ語の R の発音だけど、舌さきじゃなくてノドびこ(口がい垂)で発音する。ドイツ語のノドの R はフランス語のまねをしてひろまったらしい。英語だとイングランド北部の方言にある。それから、いまのイスラエルのヘブライ語でもノドの R がいちばんふつうの発音になってる(もともとはまき舌の R)。ただし、ノドの R っていってもいくつかあって、フランス語みたいに摩擦音なのもあれば、ノドびこをちゃんとふるわせる、まき舌の R みたいなのもある。

もうひとつの意味として、「ほかの音(とくに S)が R にかわること」っていうのがある。ラテン語の例が有名で、S が母音にはさまれてアクセントがない音節がつづいてるばあい、まず有声音の[z]になって、さらに[r]になった。たとえば、ラテン語の不定詞の語尾 -re の r はもともとは s だったのがこのロータシズムで r になってる。この語尾はたいていの動詞で amare [アマーレ](愛すること)、docere [ドケーレ](おしえること)、scribere [スクリーベレ](かくこと)、audire [アウディーレ](きくこと)っていうふうに語幹母音のあとにくっついて r が母音にされまれてるし -re にアクセントはない。ところが不規則動詞 sum [スム](ある、いる、~である)の不定詞 esse [エッセ]にはもともとの s がのこってる。これは分解すると es-se で、子音でおわる語幹 es- に -se がついたもんだから、不定詞の語尾の s が母音にはさまれなくて、ふるい s がそのまんまのこることになった。

この S が R にかわるっていうのは rhotacization/rhotacisation [ロウタサイゼイション(ロウタスィゼイション)]ともいうんだけど、このことばはほかに「R の音色つき」のこともいう。つまりアメリカ英語の舌をまるめる母音なんかのことだ。

rhotacization/rhotacisation は rhotacize/rhotacise [ロウタサイズ]って動詞の名詞で、動詞の意味は「ロータシズムの特徴がある」「ほかの音(とくに S)を R にかえる」。このもとはギリシャ語の ῥωτακίζωɔːtakízdɔː ロータキズドー/ɔːtakízɔː ロータキゾー]で、「R の音をつかいすぎること・まちがってつかうこと」。

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2006.05.27 kakikomi; 2010.09.02 kakitasi

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