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曜日の由来(6) 水曜日

日本語の水曜日は「水星の日」ってことだけど、英語の Wednesday は、水星との関連がわかりにくい。この英語は「ウォーダン(Wodan/Woden)の日」ってことで、この神はドイツ語ならヴォーダン(Wodan)、ヴォータン(Wotan)、北欧神話ならオーディン(Odin)っていう。ワーグナーの《ニーベルングの指輪》にはウォータン〔ヴォータン〕(Wotan)って名まえででてくる。

水曜日つまり「水星の日」はラテン語で Mercurii dies [メルクリイー ディエース]で(逆の語順もある)、Mercurius [メルクリウス](この属格が Mercurii)は水星のことだけど、もともとはローマの神の名まえで、ギリシャのヘルメースにあたる。ヘルメースは商業・雄弁・ぬすみ・道・旅びとの神で、文字を発明したり、死者のたましいをあの世にはこぶ役わりもある。ウォーダンがこのメルクリウスにあたるってかんがえられたもんだから、ラテン語の「水星(メルクリウス)の日」は英語で「ウォーダンの日」って訳してとりいれられた。ただし、ラテン語は「メルクリウス(神)の日」じゃなくて「水星の日」なんだけど、英語は「水星の日」じゃなくて「ウォーダン(神)の日」になってる。

ウォーダンはゲルマン人の最高神で、もともと風とあらしの神だったらしい。そこから、はやく移動して、ひろく旅する神ってことにもなったし、死霊の軍をひきいたりもするし、さらに、雄弁の神でもある。ルーン文字も発明した。それに、ガリアとかローマの影響で商業の神にもなったらしい。このあたりのことがメルクリウスとかさなるから、ローマ人はウォーダンのことをメルクリウスっていった。ふるくはタキトゥスの『ゲルマーニア』にでてくる。「ゲルマニアにおいて、神々の中でいちばん篤く崇められているのはメルクリウス神である」(國原吉之助訳、ちくま学芸文庫)。

ドイツ語の Mittwoch [ミットヴォッホ]は英語とはだいぶちがう。教会ラテン語の media hebdomas [メディア エブドマス]を訳してとりいれたもので、英語に直訳すれば midweek、つまり週のまんなかの日って意味だ。英語でも、クエーカー教徒は水曜日のことを Midweek っていうらしい。

英語、ドイツ語とちがって、イタリア語の mercoledì [メルコレディ]、フランス語の mercredi [メルクルディ]は、ラテン語の Mercurii dies がそのまんま変化したものだから、こっちのほうは「水星の日」っていいかたがのこってる。

エスペラント語は基本的にロマンス語みたいなもんだから、ロマンス語とほとんどかわんない単語がおおくて、水曜日は merkredo [メルクレード]っていう。merkred- はフランス語からとった語根だろう。ただし、発音じゃなくてつづりをうつしてる(c はエスペラント語式に k にしてある)。これに、エスペラント語の名詞語尾 -o をつけると merkredo になる。

現代ギリシャ語の水曜日は Τετάρτη [テタルティ]で、これは「4日目」って意味だ。もともと序数で、英語でいえば Fourth (day) ってことになる。「日」って意味の (η)μέρα [(イ)メーラ]が略されてる。「4日目」っていうのは、要するに週の4番目の日ってことだけど、かぞえかたとしてはふたつかんがえられる。そのことについては「曜日の由来(2) 土曜日と安息日」と「曜日の由来(4) 月曜日」参照。

ワーグナー:ヴァーグナー。 ニーベルングの指輪:ニーベルングの指環。 ヘルメース:ヘルメス。

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2006.07.24 kakikomi; 2009.05.05 kakinaosi

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