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エスペラント語のなかのギリシャ語

エスペラント語の単語でギリシャ語起源のものはけっこうたくさんある。ただしほとんどは、ギリシャ語からラテン語にはいってロマンス語にうけつがれて、さらに英語にもはいったような単語で、たいていはロマンス語からとられた語根だ。たとえば tipo [ティーポ](型、タイプ)はイタリア語の tipo [ティーポ]あたりからとったんだろうけど、英語なら type で、さかのぼればラテン語の typus [テュプス]、そのもとがギリシャ語の τύπος [týpos テュポス](うつこと、かたでおしたあと、かた)ってことになる。

それとか、近代の用語としてギリシャ語からつくられた単語もとうぜんエスペラント語にはいってる。たとえば telefono [テレフォーノ](電話)。いうまでもないけど英語の telephone で、イタリア語なら telefono [テレーフォノ]。ギリシャ語の τῆλε [tɛ̂ːle テーレ](とおく)と φωνή [pʰɔːnɛ̌ː ポーネー](声)からつくられた。現代ギリシャ語には逆輸入でこれがはいって τηλέφωνο [ティレーフォノ]っていう。

こういう、英語とかロマンス語とかと共通のものとはちがうギリシャ語起源の単語っていうと、基本的な単語のなかに kaj [カイ]っていうのがある。これはあきらかにギリシャ語の καί [kǎi カイ]からとったものだろう。ラテン語にもロマンス語にも英語にもない。ラテン語なら et [エト]、イタリア語なら e [エ]で、英語の and にあたる。

ちなみに、エスペラント語の kaj のつづりは kai じゃなくて半母音字の j (英語の y)をつかってるけど、これは、二重母音をあらわすのにエスペラント語は母音字をふたつつかうんじゃなくて、スラブ語みたいに母音字と半母音字をつかうからだ。英語はこの2種類のかきかたをどっちもつかってるけど、半母音字をつかうのは語尾がおおい。これは eight と they のちがいをみるとわかる。

それから、単語っていうんじゃないけど、ギリシャ語からとったんじゃないかっておもえる要素もある。そのひとつは複数形のつくりかただ。エスペラント語の名詞は -o でおわって、形容詞は -a でおわるんだけど、複数形はこれに -j をつけて、それぞれ -oj [オイ]、-aj [アイ]になる。たとえば bela floro [ベーラ フローロ](きれいな花)の複数は belaj floroj [ベーライ フローロイ]になる。この「オイ」「アイ」のもとはギリシャ語の複数形だとおもう。ギリシャ語の名詞と形容詞の複数・主格の語尾には -οι [oi オイ] とか -αι [ai アイ]っていうのがあるから、たぶんここからとったんじゃないかな。

もうひとつは、対格の語尾で、-n をつける。bela floro の例でいえば、単数・対格は belan floron [ベーラン フローロン](きれいな花を)、複数・対格は belajn florojn [ベーライン フローロイン]になる。ギリシャ語の対格の語尾はいくつかあるけど、代表的なもので単数・対格の [n]があるから、こっちもたぶんこれからとったんだとおもう。ちなみに、ギリシャ語の複数・対格は「アイン」「オイン」とはぜんぜんちがう。

2006.09.12 kakikomi; 2010.09.13 kakinaosi

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