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ギリシャ語フォントの鋭アクセント記号

ギリシャ語のアクセント記号はむかしは3つあったんだけど、1982年からはひとつだけになって、むかしの鋭アクセント記号だけがのこった。この鋭アクセントっていうのは、要するにふつうのアクセント記号のことで、右上から左下にむかってななめにかく発音記号のアクセント記号とおんなじものだ。

現代ギリシャ語を入力するときに、アクセント記号つきの母音字を入力するには、ギリシャ語のキーボードの設定にしたうえで、まず「;/れ」のキーをおして、つぎに母音字のキーをおせばいい。

古典語のばあいは、現代でもつかわれてる鋭アクセントのほかに、のこりふたつのアクセント記号が入力できればいいわけだから、気息記号なしのアクセント記号を入力するキーとしては、現代語のアクセント記号のキーのほかにふたつだけあればすむはずだ。

ところが、「ギリシャ語 Polytonic」っていう古典語につかえるキーボードには現代語のアクセント記号以外にアクセント記号用のキーが3つある(「ギリシャ語 Polytonic」のキーボード配列」)。現代語のアクセント記号とはべつに鋭アクセント記号のキーもあるわけだ。「Q/た」のキーをおしてから母音字のキーをおすと鋭アクセントつきの母音字が入力できる。もともとおんなじ記号のはずなのに、なんかムダなことになってるなあ、っておもったけど、いろんなフォントをみてるうちに、あることに気がついた。

それは、フォントによって、現代語のアクセント記号と古典語の鋭アクセント記号のかたちがちがってるのがあるってことだ。それに、そもそも、現代語のアクセントつきの母音字と古典語の鋭アクセントつきの母音字はユニコードでべつべつのコードになってるし、名まえもちがってる。現代語のアクセントつきの母音字は「ギリシャ文字及びコプト文字(Greek and Coptic)」のとこにあるから、ほとんどのフォントで表示できるし、現代語なんだからとうぜん古典語用のフォントは必要ない。でも、古典語の鋭アクセント記号つきの母音字のほうは「ギリシャ文字拡張(Greek Extended)」のとこにあるから、その部分をふくんでるフォントじゃないと表示できない。ユニコードでつかってる名まえは、現代語のアクセント記号は tonos で、「アクセント」って意味のギリシャ語 τόνος [トノス]。古典の鋭アクセント記号のほうは oxia で、これは「鋭アクセント」。oxia っていうのは現代語の οξεία [オクスィーア]で、古典語なら ὀξεῖα [oksêːa オクセ~ア](つづりをうつせば oxeia)。

そういえば、現代語のアクセント記号は、いまのギリシャの活字だと、ななめの棒のかたちじゃない記号がよくつかわれてて、タテの棒とか、逆三角形のかたちをしてるのとか、たんなる点とかがある。アクセント記号が3つあったときは、ちゃんとそれぞれのかたちを区別しなきゃいけなかったけど、ひとつだけになったいまは、要するにアクセントがあることがわかればいいだけだから、記号のかたちそのものはどんなものでもかまわないんだろう。

ってことで、活字のデザインによっては、いまのアクセント記号と古典の鋭アクセント記号はべつのかたちになることがあるわけだ。パソコンのフォントでもこれとおんなじことがあるから、ふたつの記号がべつべつのキーになっちゃってるのは、このあたりのことが関係あるんだろうな。

古典語を入力するとき、現代アクセント用のキー「;/れ」で鋭アクセント記号を入力しちゃうと、フォントによっては、鋭アクセントらしくないかたちの記号になっちゃうし、気息記号つきの鋭アクセント記号ともかたちがちがっちゃうから、気をつけたほうがいいだろう。最初っから鋭アクセント用のキー「Q/た」で入力したほうがいいとおもうんだけど、単純にそうともいいきれないとこもある。

このちがいは、分離記号(¨)とアクセント記号のくみあわせのばあいにも当然あって、現代アクセント記号+分離記号は「W/て」+Shift (または「;/れ」+AltGr)で、鋭アクセント記号+分離記号は「半/全」をつかう。

このサイトの「古典ギリシャ語用のフォント」で古典ギリシャ語が表示できるフォントを紹介してるけど、それぞれのフォントで現代語のアクセント記号と古典語の鋭アクセント記号がどうなってるか、つぎにまとめておきたい。

Windows XP にはいってるフォントのなかでは、「Palatino Linotype」と「Microsoft Sans Serif」がいまのアクセントと鋭アクセントがおんなじかたちをしてて、どっちもふつうのアクセント記号みたいにななめの棒になってる(ただし「Palatino Linotype」は現代アクセント+分離記号はタテの棒で、鋭アクセントとちがってる)。これに対して、「Tahoma」はふたつのアクセント記号のかたちがちがってて、現代語のほうはタテの棒、っていうかタテながの逆三角形みたいな感じになってる。鋭アクセントはもちろんななめの棒。それから、Office にはいってる「Arial Unicode MS」はどっちもおんなじかたちのななめの棒。

この4つのなかじゃ両方がおんなじかたちのもののほうがおおいわけだけど、のこりのフォントでもどっちもおんなじになってるほうがおおくて、やっぱりななめの棒みたいなふつうのアクセント記号のかたちをしてる。フォントの名まえをあげると、「Aegean」「Aisa Unicode」「Alexander」「Alfios」「Alkaios」「Anaktoria」「Arev Sans」「Aristarcoj」「Aroania」「Asteria」「Atavyros」「Athena Unicode」「Avdira」「Cardo」「CMU Bright」「CMU Classical Serif」「CMU Concrete」「CMU Sans Serif」「CMU Sans Serif Demi Condensed」「CMU Serif」「CMU Serif Extra」「CMU Serif Upright Italic」「CMU Typewriter Text」「DejaVu Sans」「DejaVu Sans Condensed」「DejaVu Sans Light」「DejaVu Sans Mono」「DejaVu Serif」「DejaVu Serif Condensed」「Galatia SIL」「Gandhari Unicode」「Gentium」「GentiumAlt」「Hindsight Unicode」「Kerkis」「KerkisSans」「Legendum」「Linux Libertine」「Linux Libertine C」「MgDimitrios UC Pol」「MgOpen Canonica」「Minion Pro」「New Athena Unicode」「Old Standard」「Old Standard TT」「Porson」「Theano Didot」「Theano Modern」「Theano Old Style」、それに Greek Font Society の「GFS」ではじまるフォント。

ただし、よ~くみくらべてみると、ふたつのあいだにちょっとしたちがいがあるものもある。でもこれはたぶんフォントをつくるときに結果としてそうなっちゃっただけで、わざわざちがえようとしたっていうのとはちがうんじゃないかな。たとえば「Cardo」は分離記号つきのほうで かたむきにちがいがある。「Minion Pro」は分離記号つきのほうは両方おんなじだけど、単独のアクセント記号だと かたむきにちょっとちがいがある。それから「Arev Sans」は分離記号つきの鋭アクセントが重アクセントになっちゃってる。「FreeMono」は分離記号つきの鋭アクセントがつかない。

enoriaka.gr っていうギリシャのサイトにある70以上の SK ではじまるフォントは、鋭アクセントのほうをフォントをいれてないで、現代アクセントを鋭アクセントにしてる。分離記号つきのほうは、どっちもある(フォントによってはちょっとヘンなのもあるけど)。はなしによると、アクセント記号をひとつにしたとき、最初現代アクセントは古典のとはちがうってことにしたんだけど、あとになって現代語のアクセントは鋭アクセントだってことになおしたらしい。でも、ユニコードはなおすまえにきめたもんだから、鋭アクセント記号と現代アクセント記号がべつべつになった。ギリシャで方針をあらためたもんだから、このギリシャのサイトのフォントはそれにしたがって現代アクセントを鋭アクセントにして、鋭アクセントのほうはつかってないんだろう。

「Tahoma」みたいに いまのアクセントと鋭アクセントのかたちがちがってるのは、「Athena」「Chrysanthi Unicode」「FMBF Tahoma」「FreeMono」「FreeSans」「FreeSerif」「Georgia Greek」「Thryomanes」「TITUS Cyberbit Basic」で、現代語のアクセント記号はだいたいタテの棒みたいなかたち。鋭アクセント記号のほうはふつうのアクセント記号のかたちをしてる。ただし、「Georgia Greek」の現代語のアクセントは、「Tahoma」よりもはっきりとした逆三角形のかたちになってる。

かわってるのは「Galilee Unicode Gk」で、フォントの紹介のとこでもかいたけど、このフォントには「ギリシャ文字及びコプト文字(Greek and Coptic)」のとこの現代語のアクセント記号つきの母音字がない。だから、これで現代語を入力しようとしたら古典の鋭アクセントをつかうしかないことになる。現代語用のほうを省略したのはもともと古典専用のつもりだからなのかな。

こうしてみると、現代語のアクセント記号と鋭アクセント記号がちがってるのは少数派で、ギリシャで方針をあらためたときより ふるいフォントなんだろう。こういうフォントだと鋭アクセントの表示がちょっとヘンな感じになっちゃうけど、古典の文章でも現代アクセントのほうをつかうほうがいいのかもしれない。TLG なんかもそうみたいだし。「Galilee Unicode Gk」だけはそういうわけにはいかないけど。

古典ギリシャ語:古代ギリシャ語。

関連記事
 ・古典ギリシャ語用のフォント
 ・「ギリシャ語 Polytonic」のキーボード配列
 ・ウェブサイトのギリシャ語原典について

2006.09.05 kakikomi; 2010.12.27 kakinaosi

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