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クレーター

クレーターっていうのは、月とか惑星の表面にある噴火口みたいなかたちのくぼみのことだけど、英語の crater はほかにも、火山の火口とか、弾丸のあととか、ようするに噴火口のかたちをしてるもののことをいうし、動詞として「へこみをつける」「へこみができる」なんて意味にもつかわれる。それから the Crater っていえばコップ座のことで(the Cup ともいう。プトレマイオスの48星座とアラートスの星座(ギリシャ語とラテン語):コップ座」)、これが crater のもともとの意味をのこしてる。

kraateerescrater のもとはギリシャ語の κρατήρ [kraːtɛ̌ːr クラーテール]で、ブドウ酒と水をまぜるうつわのことだ。ひろ口で、下すぼみで、とっ手がふたつある。古代人はブドウ酒を水でわってのんだ。この単語は動詞の κεράννυμι [keránnyːmi ケランニューミ](まぜる)と関係がある。もともとはまぜる容器のことだけど、さかずきの意味にもなったし、クラーテールみたいなかたちのものってことで、岩のくぼみとか噴火口のこともいうようになった。

このギリシャ語がラテン語の crater [クラーテール]になって、それが英語にはいったわけだけど、英語にたくさんある中世にノルマン・フランス語からはいったラテン語系の単語とはべつで、はいってきたのは17世紀はじめのことらしい。英語の crater はもともとのクラーテールの意味でもつかわれる。この意味だと krater ともつづる。こっちのつづりは、ラテン語式つまり古代ローマ人がギリシャ語をうつすやりかたじゃなくて、あらためてギリシャ語から直接ローマ字にうつしたものだ。古代のラテン語だと c はつねに[k]の音だったけど、その後発音がかわったから、ギリシャ語の κ をローマ字にうつすときには k がつかわれることがおおい。

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2006.11.26 kakikomi; 2011.08.09 kakinaosi

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