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アテネとギリシャの漢字

アテネを漢字でかくと「雅典」になる。これはどうよんでも「ガテン」だろうっていいたくなるけど、「雅」の音にはふたつあって、「みやび」って意味のときは「ガ」って音なのに対して、「カラス」って意味のときは「ア」だから(「鴉[ア]」とおんなじ)、こっちの音でよめば「アテン」になる。だからって、これを「アテネ」ってよませるのはどうかとおもうけど、それでも、「雅典[アテン]」と「アテネ」にはまだ共通点がある。もともとおんなじ名まえがもとになってて、それをうつしたものなんだから、それはそうだろう。

でも、これがギリシャの漢字となるとはなしがちがう。ギリシャを漢字でかくと「希臘」で、音よみすれば「キロウ/ケロウ」だ。これはこれで「ギリシャ」にちかい感じがしないでもないけど、アテネのばあいとくらべれば、ずいぶんかけはなれてる。

「希臘」(いまの中国でつかわれてる簡体字だと「希腊」)は、日本語の「ギリシャ」のもとになったポルトガル語の Grécia (「ギリシャ」というなまえ」)とかそのあたりのことばをうつしたもんじゃなくて、ギリシャ語でギリシャのことをいう Ἑλλάς [hellás ヘッラス]をうつしたものだ。「希臘(希腊)」をいまのペキン語の発音でよめば xīlà [シーラー]だけど、「希」の子音はむかしは /h/ だったから、もともとは「ヒーラー」みたいな感じだったんだろう。

つまり、日本語の「ギリシャ」と中国の「希臘」はもとになってる名まえがちがう。それなのに、中国のかきかたをそのまんま日本語にもってきて、ムリやり「ギリシャ」ってよませてるわけだ。

漢字といっしょに中国からはいってきた名まえならまだしも、そうじゃないものまでわざわざ中国のかきかたをあてはめることなんかしなくてもいいだろう。中国とちがって日本にはひらがなとカタカナがある。だから外国の場所とかひとの名まえを漢字でかく必要なんかない。漢字に関しては「先人の工夫」なんてことをいうことがあるけど、それをいうなら、ひらがなとカタカナをつくってくれた「先人の工夫」はどうなんだっていいたい。

それでも、一時期そういうものを漢字でかいてたことは事実だから、そのやりかたをすると、レトロな感じっていうか当時の感じがだせるってことがあるにはある。たしかにそれはそれでおもしろいけど、そういうのは特殊なばあいで、そういうつもりでもなきゃ、漢字そのものに意味があるわけでもないこんなあて字をわざわざつかったってしょうがないし、現にいまはもう一般的なかきかたじゃなくなった。

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2006.12.23 kakikomi; 2011.08.09 kakinaosi

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