« チェンバロのさとがえり | トップページ | 日本の七曜神? »

オルニトミムス、アビミムス

恐竜の名まえでオルニトミムス(ornithomimus)っていうのがある。ダチョウににた感じの恐竜で、この名まえは「鳥をまねてるもの、鳥もどき」って意味だ。ギリシャ語の ὄρνις [órniːs オルニース](鳥)と μῖμος [mîːmos ミーモス](まねるもの、まね)からつくったことばなんだけど、こういっただけじゃちょっと説明がたりないだろう。

複合語をつくるときは語幹をつかう。でもってギリシャ語のばあい語幹と語幹のあいだに母音の o をはさむ。それから学名はラテン語だから最後にラテン語の語尾をつける。このばあいは男性名詞の語尾 -us [ウス]がつく。ὄρνις [オルニース]の語幹は ὀρνιθ- [orniːtʰ]だから、これに母音の o をつけて μῖμος [ミーモス]とつないで語尾を -us にかえると ornith-o-mim-us になって、ornithomimus ができあがる。

恐竜の名まえで、おんなじ「鳥もどき」って意味のアビミムスっていうのもある。オルニトミムスは19世紀のおわりごろつけられた名まえなんだけど、20世紀後半にみつかった化石で、やっぱり「鳥もどき」って名づけたいような恐竜がいたってことなんだろう。しょうがないから今度はラテン語をつかって、オルニトミムスとおんなじ意味のアビミムスって名まえをつくったんだとおもう。「鳥」の部分をラテン語の鳥 avis [アウィス]におきかえたわけだ。avis の語幹は avi- で、ラテン語の複合語は、語幹と語幹のあいだに母音の i をはさむんだけど、このばあいはもともと語幹が母音でおわってるからそれはしないで、そのまんまつないで、avi-mimus になる。これだと、ラテン語とギリシャ語をつなげたことばってことになるけど(そういうのはけっこうある)、mimus [ミームス]はギリシャ語からはいってラテン語にもなってる単語だから、このばあいはラテン語どうしをつなげたともいえる。

ちなみに、ギリシャ語の μῖμος [ミーモス](まね)はラテン語の mimus になったあと、ラテン語から英語にはいって mime になった。パントマイムの「マイム」だ。pantomime の panto- もギリシャ語で、πᾶς [pâːs パース](すべての)の語幹 παντ- [pant]に o がついたもの。

ὄρνις [オルニース](鳥)の語幹 ὀρνιθ- がでてくる英語もある。ornithology (鳥類学)、ornithomancy (鳥うらない)、ornithoscopy (バードウォッチング、鳥うらない)とかだけど、まあ、一般的なことばとはいえないか。これも全部もとはギリシャ語だけど、ornithology は近代になってつくられたことばで、-logy のもとは -λογία [logíaː ロギアー](かたること、論じること)だ。鳥のとびかたとかなき声を観察してうらなう鳥うらないのほうは古代の習慣だから、古代からあることばで、もとのギリシャ語だと ὀρνιθομαντεία [orniːtʰomantěːaː オルニートマンテ~アー]、ὀρνιθοσκοπία [orniːtʰoskopíaː オルニートスコピアー]っていう。-μαντεία [mantěːaː マンテ~アー]は「予言、うらない」、-σκοπία [skopíaː スコピアー]は「みること、観察、考察」。

関連記事
 ・新発見の恐竜の学名
 ・キュクロープス、トリケラトプス
 ・フタバスズキリュウ
 ・ムーンサルト、サルトプス

2007.01.31 kakikomi; 2010.09.13 kakinaosi

|

« チェンバロのさとがえり | トップページ | 日本の七曜神? »