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アメリカの「ことしのことば」に「めい王星」

ニュースによると、アメリカ方言学会(the American Dialect Society)が「2006年ことしのことば」(2006's Word of the Year)に「プルートー(めい王星)される」(plutoed)をえらんだらしい。これって、アメリカの流行語大賞みたいなもんなんだろうけど、なるほど方言学会ねえ。こういう流行語っていうか俗語っていうか、そういうのは一種の「方言」のあつかいなんだな。

もっとも、英語の dialect はせまい意味の方言だけじゃなくて、業界用語なんて意味もあるわけだから、この学会を「方言学会」って訳しちゃうのが問題なのかもしれない。ちなみに英語の dialect のもとはギリシャ語の διάλεκτος [diálektos ディアレクトス](対話、言語、方言、はなしかた)で、それがラテン語の dialectus/dialectos [ディアレクトゥス/ディアレクトス](方言)になって、英語にはいって語尾がとれた。

英語は名詞をそのまんま動詞につかうことがおおいから、Pluto [プルートウ](めい王星)もさっそく動詞になったわけだ。plutoed の意味は「格さげされた」ってことだけど、えらばれたことばが、Pluto っていう大文字ではじまってる固有名詞じゃなくて、plutoed っていう動詞の過去・過去分詞なのがちょっとおもしろい。英語の記事をみると、to pluto は「to demote or devalue someone or something」(ひとやものを格さげする、価値をへらす)ってかいてあった。

で、もともとのニュースじゃちゃんと plutoed になってるんだけど、「受動態にした『プルーテッド』」なんてかいてある記事がある。plutoed は[ˈpluːtoʊd プルートウド]なのに。「プルーテッド」じゃ pluted みたいだ。まあ、この手のまちがいはありがちかな。今回のニュースじゃめい王星の英語はたいてい「プルート」になってるんだけど、カタカナがきで「ト」でおわってるのはもとは子音だけの -t だっておもいこみやすいもんだから、「プルート」でもそういうことになっちゃったんだろう。

英語の単語をカタカナにするとき[oʊ]はたいてい「オー」になる。open が「オウプン」じゃなくて「オープン」になるなんていうのがそうだ。Pluto は[oʊ]でおわってるから、このやりかたでいくと「プルートー」になる。じっさい「プルートー」っていうのはよくみかける。これだったら、その記事みたいなまちがいはおこらなかったとおもうんだけど。

めい王星の Pluto は神話の神の名まえをつけたもので、もともとはギリシャ神話のめい界の神ハーイデース(ハーデース)の別名 Πλούτων [plǔːtɔːn プルートーン]だ。これがラテン語で Pluto(n) [プルートー(ン)]になって、英語の Pluto になった。いまのギリシャ語(民衆語=口語文)だとめい王星のことは Πλούτωνας [プルートナス]っていってる。Πλούτων [プルートン]っていう純正語(文語文)のかたちもつかわれるみたいだけど。

めい王星:冥王星。 ハーイデース:ハーデース、ハイデス、ハデス。

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 ・めい王星は「矮惑星」

2007.01.10 kakikomi; 2010.12.20 kakinaosi

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