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プトレマイオスの詩

οἶδ᾿ ὅτι θνατὸς ἐγὼ καὶ ἐφάμερος· ἀλλ᾿ ὅταν ἄστρων
 μαστεύω πυκινὰς ἀμφιδρόμους ἕλικας,
οὐκέτ᾿ ἐπιψαύω γαίης ποσὶν ἀλλὰ παρ᾿ αὐτῷ
 Ζανὶ θεοτρεφέος πίμπλαμαι ἀμβροσίης.

[ôid hóti taːtós eɡɔ̌ː káj epʰǎːmeros all hótan ástrɔːn
 mastěuwɔː pykinǎːs ampʰidrómuːs hélikas
uːkét epipsǎuwɔː ɡǎijɛːs posín allá par autɔ̂ːi
 zaːní tʰeottrepʰéos pímplamaj ambrosíɛːs]

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 ―∪∪|―∪∪|―∥―∪∪|―∪∪|―

わたしは知っている、自分が死ぬべき運命の はかない命であることを。
 それでも星ぼしの円をえがく無数の軌道をさぐるとき、
もはや足で大地にふれることはなく、ゼウスご自身のもとで
 神がみをやしなうアンブロシアーで腹をみたすのだ。
(『ギリシャ詞花集』9.577)


これは、2世紀なかばにアレクサンドリアで活躍した天文学者・数学者・地理学者のプトレマイオスがのこした詩で、韻律はエレゲイオン(古代ギリシャの韻律:エレゲイオン」)。プトレマイオスがかいた本っていうと天文学の『アルマゲスト(数理天文学体系)』とか星うらないの『テトラビブロス』が有名だけど、プトレマイオスの名前でつたわってる詩がちょこっとある。

クラウディオス・プトレマイオスはギリシャ語で Κλαύδιος Πτολεμαῖος [klǎudios ptolemâijos]だけど、クラウディオスっていうのはもともとラテン語の名前で、プトレマイオスはギリシャ語の名前だ。この名前全部をラテン語にすれば Claudius Ptolemaeus [クラウディウス プトレマエウス]になる。プトレマイオスは英語だと Ptolemy [ˈtɒləmi]で、それをそのまんまカタカナにした「トレミー」っていうのもつかわれてた(いまでもちょっとあるか)。


単語の説明:
οἶδ᾿: = οἶδα 「知っている」 直説法・完了・1人称・単数。かたちの上では完了だけど、意味は現在。つぎが母音ではじまってるから(有気記号がついててもおんなじこと)最後の母音が省略されてる。
ὅτι: 「~ということ」
θνᾱτός: 「死をまぬがれない、死ぬべき運命の」 男性・単数・主格。θνητός のドーリス方言のかたち。
ἐγώ: 「わたしが」 人称代名詞の1人称・単数・主格。
καί: 「そして、と」
ἐφάμερος [ᾱ]: 「一日かぎりの、つかのまの」 男性・単数・主格。ἐφήμερος のドーリス方言のかたち。
ἀλλ᾿: = ἀλλά 「しかし」 つぎが母音ではじまってるから(有気記号がついててもおんなじこと)最後の母音が省略されてる。
ὅταν: 「~するときはいつも」 接続法といっしょにつかわれる。<ὅτεἄν
ἄστρων: ἄστρον, ου, τό 「星、星座」の複数・属格。複数形のばあいがおおい。
μαστεύω: 「もとめる、さがす」 能動態・直説法・現在・1人称・単数。
πυκινάς [ᾱ]: πυκινόςπυκνός の詩語)「すきまのない、密集した、たくさんの、無数の」の女性・複数・対格。
ἀμφιδρόμους: ἀμφίδρομος 「かこむ、とりまく、(あるものの)まわりをはしる、回転する」の女性・複数・対格。
ἕλικας: ἕλιξ, ικος, ἡ 「円周、らせん、輪状あるいはらせん状のもの、(天体の)軌道」の複数・対格。
οὐκέτ᾿: = οὐκέτι 「もはや~ではない」 つぎが母音ではじまってるから最後の母音が省略されてる。
ἐπιψαύω: 「表面にふれる〔属格と〕、達する、とどく」 能動態・直説法・現在・1人称・単数。
γαίης: γαῖα, ης, ἡ 「大地」の単数・属格。γῆ の詩語・イオーニアー方言のかたち。
ποσίν: πούς, ποδός, ὁ 「足」の複数・与格。
παρ᾿: = παρά 「~のそばで、~のところで、~のもとで」〔与格支配〕 つぎが母音ではじまってるから最後の母音が省略されてる。
αὐτῷ: αὐτός の男性・単数・与格。つぎの Ζανὶ を強調して「~自身」。
Ζᾱνί: Ζάν [ᾱ], Ζᾱνός, ὁ の単数・与格。Ζεύς, Διός, ὁ 「ゼウス」のドーリス方言のかたち。
θεοτρεφέος: θεοτρεφής, ής, ές 「神がみをやしなう」の女性・単数・属格。
πίμπλαμαι: πίμπλημι 「みたす、いっぱいにする、満腹させる〔属格と〕」の受動態・直説法・現在・1人称・単数で、「満腹する」。
ἀμβροσίης: ἀμβροσίᾱ, ᾱς, ἡ 「アンブロシアー、神がみのたべもの」の単数・属格、イオーニアー方言のかたち。

『ギリシャ詞花集』:『ギリシャ詞華集』。 星うらない:星占い、占星術。 ドーリス:ドリス。 イオーニアー:イオニア。 アンブロシアー:アンブロシア。

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2007.03.26 kakikomi; 2015.09.24 kakinaosi

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