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テャ、テュ、テョ。デャ、デュ、デョ。

サンスクリット語の単語には त्य tya、द्य dya、ध्य dhya っていうような音のつながりがよくでてくる。たとえば त्याग tyāga (放棄)、द्यौस् Dyaus (神の名まえ)、ध्यान dhyāna (めい想)なんていうのがそうだけど、これをカタカナでかくとなるとちょっと問題がある。

いちばんよくあるのは「ティヤーガ」「ディヤウス」「ディヤーナ」だろう。「ティアーガ」なんていうのもあるかもしれない。それから「トヤーガ」「ドヤーナ」なんていうのもみたことがある。さらには「デャーナ」なんていうのもある。

タ行・ダ行以外だったらこんな問題はおきなくて「キャ」とか「ニャ」とかやっときゃいいんだけど、タ行・ダ行だとそうはいかない。

で、とりあえず「ティヤ」「ディヤ」ってことになってるわけだけど、これはこれでべつにおかしくはない。それにくらべて「トヤ」「ドヤ」っていうのはどうかとおもう。実際の発音からはなれすぎてる。それから「テャ」「デャ」っていうのは、こんなのほかでみることはまずないし、どうよみゃいいんだ?って感じだ。

……とりあえずそうおもってたんだけど、ちょっとかんがえなおしてみると、そうばかりともいえないかもしれない。tyu、dyu だったら「テュ」「デュ」ってかくんだから、それからすれば tya、dya、tyo、dyo を「テャ」「デャ」「テョ」「デョ」ってかいたっておかしくない。そうすると上の3つは「テャーガ」「デャウス」「デャーナ」ってことになる。

だったらなんで「テャ」「デャ」「テョ」「デョ」っていうのはほとんどつかわれてないんだろ。

カタカナでかくことばっていえば、いまは英語からはいったのがいちばんおおいわけだけど、その英語には「テャ」「デャ」「テョ」「デョ」ってかくような音はでてこない(とおもう。外来語はべつとして)。でも「テュ」「デュ」ならある。たとえば「テューダー朝」とか「プロデュース」とか。ただし「チュ」「ジュ」になってることもおおい。英語の発音がこうなのは、子音のあとにつづく母音字であらわされる 母音の要素 として、u、eu、ew とかのつづりの[ju][juː]はあるけど、[j]ではじまるほかの 母音の要素 はないからだ。

「テャ」「デャ」「テョ」「デョ」をほとんどみることがないのは、たぶんこのことがいちばんの原因だろう。

リクツからいって「テャ」「デャ」「テョ」「デョ」になるにしても、そもそもこのかきかたがつかわれることがほとんどないわけだ。そのために「テャ」「デャ」「テョ」「デョ」ってかく発音のほうもつかわれないから、このカタカナをみても、どうよんだらいいのかわかんない感じがすることになるんだろう。

おんなじようなことは v にもある。たとえば व्यास Vyāsa っていう名まえがあるけど、これはたいてい「ヴィヤーサ」ってかく。外国語そのものの発音をあらわすんじゃなくて、日本語として外来語とか外国語の名まえをカタカナでかくばあいは「ヴ」はつかわないほうがいいってかんがえてるから(「ヴ」のつかいかた」)、それでいくと「ビャーサ」ってかけばすむことだけど、「ヴ」は実際につかわれてるから、これについてもちょっとふれておきたい。

vyu だったら「ヴュ」になる。これは「テュ」「デュ」とおんなじように「ヴュ」をつかうようなことばが英語にあるからカタカナがきとして みないことはない。たとえば「レヴュー」とかだけど、まあ「レビュー」のほうがふつうかな。で、vyu が「ヴュ」なんだから、vya、vyo は「ヴャ」「ヴョ」になるはずだけど、こっちはほとんどみかけないし、よみかたにしても ちょっとわかりづらい感じがする。これも英語にこうかくような音がないからだろう。


[このはなしは「テャ」とか「ヴャ」っていうカタカナのかなづかいについていいたかっただけで、サンスクリット語のことはそれをかんがえたきっかけにすぎないっていうか、ここではサンスクリット語のカタカナがきについてとくにかんがえたかったわけじゃない。そっちのほうに はなしをもってくんなら、त्य tya とか द्य dya とか ध्य dhya とか व्य vya みたいに半母音がはいってるばあいはさらにべつのことをかんがえにいれてカタカナがきしなくちゃいけないから、その点がからんでこないように、サンスクリット語の単語の例として त्य tya みたいなのが単語のあたまにでてくるものだけにした。]

めい想:瞑想、冥想。

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 ・「ヴ」のつかいかた
 ・日本語のローマ字つづり
 ・外来語のローマ字つづり

2007.11.03 kakikomi; 2009.03.27 kakikae

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