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ほうき星

ほうき星は「すい星」ともいうけど、この「すい(彗)」も「ほうき」のことだ。日本の古典に「彗星」ってかいて「はうきぼし/ほうきぼし」ってよむ例がでてくる。要するに星のすがたを「ほうき」にたとえてるわけだけど、ほかにも むかしは「ほこぼし(戈星/桙星)」ともいったみたいで、こっちは「ほこ」だ。それから「ほたれぼし(穂垂れ星)」っていうのもあるらしい。ただしこれは ながれ星の一種だって説もある。「ほたれ」っていうのはヤナギとかヒノキの枝をこまかくけずってひらいた感じにした細工物で、「けずりかけ」ともいう。

ほうき星は英語だと comet で、ドイツ語は Komet [コメート]、イタリア語は cometa [コメータ]、フランス語は comète [コメットゥ]で、こういうのはみんなラテン語の cometa [コメータ]、cometes [コメーテース]からきてる。でもって、このラテン語のもとはギリシャ語の κομήτης [komɛ̌ːtɛːs コメーテース]だ。

ギリシャ語の κόμη [kómɛː コメー]は「髪の毛」で、κομήτης [コメーテース]は「ながい髪の、髪のある」って意味のことばだ。これに星って意味の ἀστήρ [astɛ̌ːr アステール]をつけて κομήτης ἀστήρ [コメーテース アステール]っていうと「ながい髪のある星」ってことで、ほうき星の意味になる。さらに星ってことばを省略して κομήτης [コメーテース]だけでも ほうき星って意味の男性名詞としてつかわれる。

こういうふうに西洋語のほうは「髪の毛」にたとえてるけど、ドイツ語で Schweifstern [シュヴァイフ・シュテルン]、Bartstern [バルト・シュテルン]っていうのもみたことがある。Schweif は「しっぽ」で、Bart は「ひげ」、Stern は「星」だ。この Schweif と Bart はそれぞれそれだけで「ほうき星のしっぽ」って意味もある。

日本語には方言もふくめてほかのいいかたもあるのかもしれないけど、とりあえず最初にあげた3つをみると、どれも道具にたとえてる。それに対して西洋語は「髪の毛」「しっぽ」「ひげ」っていうふうに人間とか いきものの一部だ。これってなんのちがいなんだろ。

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2008.01.17 kakikomi; 2011.08.13 kakitasi

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