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「ミュージック」の語源

学芸の女神ムーサはギリシャ語で Μοῦσα [mûːsa]だけど(9柱のムーサ」)、その形容詞は μουσικός [muːsikós ムースィコス]になる。で、この女性単数のかたちが μουσική [muːsikɛ̌ː ムースィケー]で、これが music の語源だ。

ムーサにかかわりがある学芸を μουσικὴ τέχνη [muːsikɛ̌ː tékɛː ムースィケー テクネー]っていって、「わざ、技術」って意味の名詞 τέχνη [テクネー]を省略して、のこった形容詞を名詞としてつかったのが女性名詞の μουσική [ムースィケー]なんだけど、もともといまの音楽よりずっとひろい意味があって、詩歌、音楽、舞踊、学芸とかをふくめた「ムーサのわざ」のことだった。それがだんだんいまの音楽の意味になってって、現代ギリシャ語の μουσική [musiˈkʲi ムスィキ]はふつうに音楽って意味だ。

女性名詞の μουσική [ムースィケー]とおんなじ意味で、中性複数形の μουσικά [muːsiká ムースィカ]っていうのもある。中性形だと「ムーサにかかわるものごと」って意味になって、けっきょく「ムーサのわざ」っていうのとおんなじことだ。それから μοῦσα [ムーサ]は普通名詞としてムーサの学芸のことをいうようにもなった。

古代ギリシャ語の μουσική [ムースィケー]がラテン語にはいると musica [ムースィカ]になる。ラテン語になったからギリシャ語の女性形の語尾 ɛː]がラテン語の女性形の語尾 -a にかわってる(名まえのばあいは -e [エー]のまんまのこともあるけど)。ラテン語の musica をみると中性複数の μουσικά [ムースィカ]からきてるんじゃないかっておもうかもしれないけど、ラテン語の musica は女性名詞だから、もとになったのは μουσική [ムースィケー]のほうだ。

で、このラテン語がイタリア語の musica [ムーズィカ/ムースィカ]とかフランス語の musique [ミュズィーク]になって、フランス語から英語にはいって music になった。ドイツ語の Musik [ムズィーク]はもともとラテン語からはいったから最初はラテン語とおんなじように Mu- にアクセントがあったんだけど、17世紀にフランス語の影響でアクセントが -sik のほうにうつって、いまの発音になった。

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2008.02.25 kakikomi; 2017.05.23 kakitasi

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