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「貸し方」「借り方」

商業関係の用語には、けっこうわかりやすいっていうか、ちゃんとした日本語のがあったりする。ほかの分野だとこむずかしい漢語がいろいろあって、こういうのはたいてい明治になってつくられた翻訳語だけど、商業関係にはやまとことばの用語がけっこうある。それでも、なかには翻訳に問題があるともいわれてる用語があるみたいだ。

大阪の電気街、日本橋の最初の店は中川無線電機らしいんだけど、その創業者、中川昌蔵っていうひとがこんなことをいってる。

 それまでは、簿記というものは非常に難しい(簿記の専門学校もあるくらいですから)と思われていましたが、これは意外と簡単なのです。
 簿記には損益計算書と貸借対照表がありますが、まず、損益計算書は家計簿と全く同じものです。「損益計算書」という難しい名前がついていますが、中身は家計簿と同じだと思えば簡単に書けます。
 次に貸借対照表は、自分の持っている資産と負債を並べて書いたものと思えばよいのです。自分の名義のものであれば、まだお金を払っていなくても資産になります。負債の欄には借金、つまり家や車などのローンがいくら残っているかを書けばよいのです。
 簿記がなぜわかりにくいかという理由があります。それは、貸借対照表で、「貸し方」「借り方」という言葉を使うことでしょう。
 貸借対照表は明治の初めにフランスから入ってきたのですが、それを翻訳した日本人が間違えて、「貸し方」と「借り方」を逆にしてしまったのではないかと私は思うのです。なぜなら、資産の上に「借り方」、借金の上に「貸し方」と書いてあるからです。
 そして、その間違ったまま、現在まで踏襲してきたのではないかというのが、私の推測です。
 ですから、私の会社では「貸し方」「借り方」という言葉は一切使わず(使わせず)、「資産」と「負債」に替えて書くことにしたのです。そうすれば、まず1カ月くらいで皆、書けるようになります。
(小林正観『守護霊との対話―― 中川昌蔵の世界』弘園社)

簿記のことはまったくしらないから、もとのフランス語がどうなってるのかも、翻訳がどうなのかもぜんぜんわかんないけど、資産が「借り方」で借金が「貸し方」っていうのはたしかに逆になってる感じだ。

それにしても、「タイシャク タイショーヒョー」なんていうのはいいづらい。こんな用語はやっぱり漢字の意味だけでつくってて、よみのことはまったくかんがえにいれてないんだろうな。

2008.03.03 kakikomi

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コメント

貸方、借方、が誤訳という事は無いと思います。全ての資産は「借り物」です。借金は借り物ではなく、貸し物です。
借金をして、車(資産)を買ったとしますと、車という資産の元は、借金です。ですから、借方に「車」、貸方に「借入金」と記す訳です。誤訳とか何とかというレベルの問題ではなく、本質的な考え方の問題です。表層的なものの捉え方で無く、本質的な考え方をしっかり押さえて理解すれば、何の問題もないことです。

投稿: 徂徠 | 2008.04.19 10:41

誤訳かどうかは、もとのフランス語をしらないのでなんともいえません。ただ、誤訳ではないとしても、ここに引用した文章で指摘されていることにはかわりはないとおもいます。

実際に簿記はむずかしいとおもわれていて、ここでいわれているようなやりかただと かんたんになるということなのですから、その「本質的な考え方」そのものが、ふだんの感覚とはちがう むずかしいものだということなのでしょう。

いったん理解すればなんでもないとしても、それは専門家の感覚であって、どの分野でもそうですが、専門家の感覚というのはどうもちょっとズレているようにおもいます。簿記の目的はそのような「本質的な考え方」を理解することなのでしょうか。かんがえかたというのはたんなる手段です。いくらそういう習慣でやってきているからといって、ちがうやりかたで簿記の目的が達成できるのであれば、かんたんなほうがいいとおもうのですが。

もっとも、このようなやりかたがひろまってしまっては、簿記の専門学校がこまるのかもしれませんね。

まあこれは、簿記について なにもしらない人間のたわごとです。

投稿: yumiya | 2008.04.19 14:25

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