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「アセンション」「イニシエーション」

「アセンション」っていうことばはこのまんまカタカナでつかわれることがおおいけど、翻訳語として「次元上昇」っていうのをよくみかける。なるほど、って感じだけど、直訳だったらただの「上昇」だ。

ただし、たんなる「上昇」ってことなら ascension より ascent のほうがふつうで、ascension は the Ascension でキリストの昇天のことだ。だから、そのまんま訳せば「上昇」より「昇天」のほうがいいんだろう。

それでも「昇天」っていうと宗教色がつよいし、いまいわれてる「アセンション」は人間の「昇天」だけじゃないから、「昇天」だとちょっと感じがちがうかもしれない。

翻訳するとき ことばをおぎなうのはよくあることで、ここでもただの「上昇」じゃ なんのことだかわかんないから、「次元」っていうのがつくことになる。地球とか人間とかがいまの3次元から4次元・5次元に上昇するってことをいってるから「次元上昇」って訳になるわけだけど、「次元」なんてことをいうと、物理学とかの次元のことをおもって、いろいろうるさいことをいう例の物理学者みたいな やからもいるかもしれない。

最近はこの手のはなしで「次元」っていうことばをつかうことがおおいけど、どうももともとは「密度(density)」なんていってたみたいだ。いまでもこのことばをつかってるひともいる。そうすると、いまの第3密度から第4・第5密度に上昇するってはなしになるから、「密度上昇」? でもまあ、こう訳したらやっぱりちょっとちがうだろうな。

「次元上昇」みたいにことばをおぎなって4文字の漢字になってる翻訳語っていえば、「秘儀参入」っていうのもある。

これも訳さなくてカタカナで「イニシエーション」っていわれることもおおいけど、initiation をそのまんま訳せば「参入」だけになる。で、これだとなんだからわかんないから「秘儀」をおぎなうことになるわけで、「次元上昇」とおんなじことだ。

名詞の initiate は「秘儀参入者」って訳される。そのまんま訳すならただの「参入者」だ。前後関係でこれだけでいいばあいもあるだろう。こっちもカタカナで「イニシエート」っていうのもつかわれてる。

モーツァルトの歌劇《魔法の笛》(魔笛、Die Zauberflöte、1791)にはザラストロっていう登場人物がでてくるけど、このザラストロとそのなかまたちのことはドイツ語で Eingeweihte [アインゲヴァイテ]っていわれてる。台本の対訳でこれを「神に仕える人」とか「聖職者」とか「入門者」なんて訳してたりするけど、これははっきり「秘儀参入者」だろう。英語で initiate っていうのをドイツ語だとこういうし、内容からしてもそうだ。まあ、このばあい「参入者」だけでもいいかもしれないけど、とにかく「入門者」っていうのはちがうとおもうし、たんなる「神に仕える人」とか「聖職者」っていうのともちがう。もちろん日常的な意味の「事情に通じてるひと、消息通」っていうのともちがう。そもそもこの作品のおおすじは主人公の秘儀参入のはなしだ。

ちなみに登場人物のひとりタミーノは日本の かりぎぬ をきてる(in einem prächtigen japanischen Jagdkleide)って台本にかいてあるんだけど、そういう衣装をきてる舞台はみたことがない。

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2008.04.02 kakikomi

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