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ギリシャ語の「閉鎖音+流音」の発音

古典ギリシャ語の「閉鎖音+流音」のくみあわせが韻律のうえでながい単位をつくらないことがあるってことは「古典ギリシャ語の閉鎖音+流音」にかいた。韻律のうえでみじかい単位になるのは、みじかい母音のあとに子音がひとつだけつづくばあいなんだけど(古代ギリシャの韻律」)、「閉鎖音+流音」がそうなるってことは、このばあいの「閉鎖音+流音」がひとつの子音みたいに発音されるからだろうってそこではかんがえた。

「閉鎖音+流音」について よくある説明だと、たとえば μακρός [makrós マクロス](ながい)っていう単語なら、[kr]っていう「閉鎖音+流音」がながい単位をつくるばあいは、μακ.ρός っていうふうに音節がきれて、みじかい単位をつくるばあいは音節が μα.κρός っていうふうにきれるっていうんだけど、音節のながさを問題にするんなら、はなしはそれでおわってもいい。でも、韻律ってことだとそれじゃあんまり説明になってないとおもう。

[kr]の[k]がまえの音節にふくまれても、うしろの音節にふくまれても、それだけじゃ発音するうえでかかる時間がかわるわけじゃないだろう。たしかに、発音がかわれば音節のきれめもかわるんだろうけど、音節をくぎっただけじゃ、発音のちがいの説明にはなってない。

古典ギリシャ語の閉鎖音+流音」には、サンスクリット語だと この子音のくみあわせはみじかい単位をつくらないってことにふれて、サンスクリット語の発音だと「閉鎖音+流音」の閉鎖音は[kkr]みたいにふたつ分に発音されるってことをかいた。このばあい、なんで閉鎖音がふたつ分になるのかっていうのをかんがえてみると、閉鎖音の最初の閉鎖と最後の破裂のあいだにちょっとマがあるからだろう。

たとえば[ka]っていう発音なら、[k]につづいてすぐ[a]が発音されるから、[k]の閉鎖と、[a]を発音するときの[k]の破裂がほとんど同時におこることになる。ところが、[kka]だったら、まず[k]の閉鎖がおこって、そのあとちょっと閉鎖したまんまになったあと、[k]の破裂が[a]の発音とともにおこる。

[kr]がひとつの子音みたいに発音されるばあいは、[k]の閉鎖と、つづいて[r]を発音するときの[k]の破裂がほとんど同時におこる。ところが、[k]と[r]をべつべつのふたつの子音として発音するばあいは、まず[k]の閉鎖がおこったあと、閉鎖したまんまの状態が子音ひとつ分つづいて(これが[k]の部分)、そのあと[r]を発音するときに、閉鎖したまんまだった[k]の破裂がおこるから、結果として[kkr]みたいになる。

あくまで実用的ってことで、ギリシャ語でも、韻律のうえでながい単位になるときは、閉鎖音のほうをふたつ分発音するようにすれば、韻文をよむうえでちゃんとながい単位としてよむことができるってかんがえてたけど、しらべてみると、ギリシャ語でも実際こういう発音があったことをうかがわせるつづりが碑文にのこってることがわかった。ΚΑΛΛΙΚΡΑΤΟΥ [kallikrátuː カッリクラトゥー]が ΚΑΛΛΙΚΚΡΑΤΟΥ [kallikkrátuː カッリックラトゥー]ってつづられてて、ΚΡ じゃなくて ΚΚΡ になってる。

こういうことだと、韻律のうえでながい単位になるときの発音は、たんに実用的な意味で閉鎖音をふたつ分発音すればいいっていうんじゃなくて、実際にそうだったっていえるんじゃないかな。

古典ギリシャ語:古代ギリシャ語。

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 ・古典ギリシャ語の閉鎖音+流音
 ・古代ギリシャの韻律

2009.03.20 kakikomi; 2009.04.23 kakinaosi

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