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「ちがうよ」が「ちゲーよ」になるのはどうしてか

「ちがうよ」のことを「ちゲーよ」っていうのをけっこう耳にすることがあるけど、「ガウ」が「ゲー」にかわるのはちょっとふしぎだ。「ア」と「ウ」の中間の音は「オ」だから、「アウ」が「オー」になるんならわかる。それからすると「ちゴーよ」になりそうなもんだけど、そんな発音はきかない。

「エー」にかわるとしたら、そのもとは「アイ」だ。「ア」と「イ」の中間の音が「エ」だからだ(「アイ」は「エ」になる。「イア」は?」)。じっさい、「たかい」が「たケー」、「こわい」が「こエー」になってる(「こエー」の「エ」はワ行のエ)。それから、いまじゃ いわないだろうけど、「ちゲーネー」っていうのもある。このもとは「ちがいない」で、「アイ」が「エー」になったとこが2か所ある。

それから、形容詞の語尾が「エー」になってる例が「アイ」以外にもある。「すごい」が「すゲー」になってるのとか、「つよい」が「つエー」になってるのとかがそうだ(「つエー」の「エ」はヤ行の「エ」)。このばあい「オイ」が「エー」になってるわけで、このパターンもいろんな方言にみられる。

そういえば、「かっこいい」を「かっケー」っていったりするのもこれとおんなじことなのかもしれない。「すごい」とちがって、ここの母音は「オイイ」だけど、「オイ」とだいたいおんなじようなもんだから、その部分が語尾の母音みたいなあつかいになって、「かっケー」になったんだろう、たぶん。

ついでにいうと、形容詞の語尾としては「イー」もある。「わるい」が「わリー」に、「かゆい」が「かイー」になるのがそうだ(「かイー」の「イ」はヤ行の「イ」)。これは「ウイ」が「イー」になるパターンで、これもあっちこっちの方言にある。

つまり、はなしことばの形容詞には終止形・連体形が「エー」と「イー」でおわるのがあって(これを「エー活用」と「イー活用」っていったりする)、発音の変化のパターンとしては「アイ」と「オイ」が「エー」になったのと、「ウイ」が「イー」になったのがあるわけだけど、「ちゲー」はこのどれでもない。そうなると、「ちゲー」は発音の変化ってことじゃ説明できないことなのかもしれない。

「ちゲーネー」になったのは発音の変化だ。もともとの「ちがいない」は全体として形容詞だともいえるし、「ちがいがない」ってことだから、「ちがい」と「ない」にわけることもできて、そのばあい「ちがい」は名詞で「ない」は形容詞だ。

「ちゲーネー」について文法的なことをいえばこんな感じだけど、「ちゲーよ」のほうは「ちがうよ」だから、「ちがい」っていう名詞の発音がかわったわけでもないし、そもそも「ちがう」は動詞なんだから、そこが「たケー」とかが形容詞なのとおおきくちがうとこだ。それでも、「ちゲー」の「エー」はやっぱり形容詞の語尾だろう。

「ちがう」っていうのはたしかに動詞なんだけど、意味をかんがえると、動作とかをあらわしてるんじゃなくて、なんていうか、性質とか状態をあらわしてるって感じだろう。で、性質をあらわすのはおもに形容詞だから、「ちがう」も意味からいって形容詞みたいに感じられて、形容詞の語尾「エー」がつけられることになったんじゃないかな(「ちがう」の形容詞変化」)。こういうふうにほかの変化形があてはめられることを類推(analogy)っていうんだけど、こうかんがえれば、「アウ」が「エー」になるなんていう、ちょっと奇妙なことをかんがえる必要はなくなる。

それから、形容詞の語尾がつけられたにしても、どうして「イー」じゃなくて「エー」なのかっていえば、「ちが・う」の「ちが」の部分から、語幹が「ア」でおわってる「たか・い」とかとおんなじあつかいになって、「アイ」が「エー」になるパターンがあてはめられたからだろう。

ちゲーよ:ちげーよ、違げーよ。 たケー:たけー、高けー。 こエー:こえー、恐えー、怖えー。 ちゲーネー:ちげーねー、違げーねー。 すゲー:すげー、スゲー、凄げー。 つエー:つえー、強えー。 かっケー:かっけー。 わリー:わりー、、悪りー。 かイー:かいー、痒いー。

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2009.05.19 kakikomi; 2009.05.31 kakinaosi

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