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「Milky Way、Galaxy」(天の川、銀河)

天の川(銀河)のことは英語で Milky Way とか Galaxy っていうけど、ひとつのものにちがういいかたがあるのは日本語の「天の川」と「銀河」の関係ににてるかもしれない。「天の川」はやまとことばで、「銀河」は漢語つまり外来語なわけだけど、英語のほうもおんなじような感じで、Milky Way は単語としてはもとから英語にあることばなのに対して、Galaxy は外来語だ。ただし Milky Way は なぞり(calque)とか翻訳借用(loan translation)っていわれるもので、外国語のいいまわしをそのまんま翻訳してとりいれたものだから、一種の外来語かもしれない。まあ、外来“語”っていうか外来“表現”だけど。

Milky Way はラテン語の via lactea [ウィア ラクテア]を訳したものだ。via が way、lactea が milky にあたる。さらに、このラテン語も なぞりで、ギリシャ語を訳したものだ。ただし、英語もラテン語も「乳の道」だけど、もとのギリシャ語は「道」じゃないから、英語とちがって直訳にはなってない。

ギリシャ語で天の川のことは γαλαξίας κύκλοςɡalaksíaːs kýklos ガラクスィアース キュクロス]っていって、これは「乳の輪」っていう意味だ。γαλαξίαςγάλαɡála ガラ](乳)の形容詞で、κύκλος は「円」とか「輪」とかの円のかたちをしてるもののこと。それから、「輪」を略した γαλαξίας だけでも天の川の意味でつかわれて、このばあいは名詞になる。

γαλαξίας っていう形容詞をつかわないで、名詞の γάλα をつかった ὁ τοῦ γάλακτος κύκλος [hoː ɡálaktos kýklos ホ トゥー ガラクトス キュクロス]っていういいかたもある。もちろんこれもおんなじ「乳の輪」っていう意味で、κύκλος にかかる定冠詞、τοῦγάλακτος にかかる定冠詞、γάλακτοςγάλα の属格だから「乳の」っていう意味になる。さらに γάλα だけでも天の川って意味でつかわれる。

こういうふうにもともとギリシャ語だと道じゃなくて輪っかだったし、ラテン語でもこれを直訳した circulus lacteus [キルクルス ラクテウス]っていうのがあったから、英語がこっちをもとにしてたら Milky Circle とでもなってただろう。「輪」っていわれてるのは天の川が天を一周してるからだ。でも、英語とかの西洋語にひきつがれたのは via lactea のほうだった。

ギリシャ語の γαλαξίας はラテン語に訳されただけじゃなくて、後期ラテン語で galaxias っていうラテン語の単語としてもつかわれた。そのラテン語が英語に直接はいったか、フランス語経由で英語にはいったのが Galaxy だ。だからけっきょく Galaxy イコール Milky で、おんなじものをちがうことばでいってるにしても、おんなじ意味のちがうことばをつかってるってことになる。この点は「天の川」と「銀河」の関係とはちょっとちがう。

「乳の」っていわれてることについてはギリシャ神話にいくつかちがうはなしがある。代表的なものとしてはヘーラクレースのものがたりがあげられるだろう。ヘーラクレースはゼウスと人間の女アルクメーネーの子どもなんだけど、この子が神がみとおんなじ性質、つまり不死身になるためにはゼウスの后ヘーラーの乳をのむ必要があった。そこで、ヘルメースがうまれたばっかりのヘーラクレースをヘーラーのとこまでつれてって、ねむってるヘーラーの乳をすわせた。ヘーラーがそれに気がついてヘーラクレースをふりはらったとき、ヘーラーの乳がこぼれて、それが天の川になった。

ヘーラクレース:ヘラクレス。 アルクメーネー:アルクメネ。 ヘーラー:ヘラ。 ヘルメース:ヘルメス。

2009.07.30 kakikomi; 2010.09.13 kakinaosi

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