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ラムダ、ランブダ、ラブダ

ギリシャ文字の Λ (大文字)、λ (小文字)は、発音としては[l](英語でいえばエルの音)をあらわしてて、たいてい「ラムダ」っていわれてる。この「ラムダ」はギリシャ語よみだっておもわれてることがおおいんだけど、ほんとは英語よみだ。

英語だと lambda ってかいて、b を発音しないから[ˈlæmdə]になる。ほかのヨーロッパ語をいくつかみても、発音はちがってもつづりは英語とおんなじで、ドイツ語は Lambda [ランプダ]、フランス語は lambda [ロンブダ]、イタリア語は lambda [ランブダ]だ。「ラムダ」っていうと lamda みたいだけど、みんな b がはいってる。これはどうしてかっていうと、もともとのギリシャ語に b があるからだ。

西洋にひろまったギリシャ文字の名まえは中世のギリシャ語の名まえがもとになってて、それだとラムダは λάμβδα ってかく。だからギリシャ語の名まえは「ランブダ」だ。これをローマ字にうつせば lambda になる。

時代をさかのぼると、古典時代の名まえは λάβδα [lábda ラブダ] だった。逆に、現代ギリシャ語になると、λάμβδα から β がとれた λάμδαˈlamða ラムザ]になってる(ふるいつづりのまんまの λάμβδαˈlaɱvða ランヴザ]っていうのもあることはある)。

ここまでのことは「日本でみかけるギリシャ文字の名まえ」にも「ギリシャ語の文字と発音:Λ λ」にもかいたし、「ギリシャ文字の名まえ(古典ギリシャ語・現代ギリシャ語・英語・ドイツ語・フランス語・イタリア語)」をみてもらってもとりあえずわかるだろう。で、このあとは、古典時代の名まえがなんで「ラブダ」なのかをかんがえてみたい。

ギリシャ文字のもとになったのはフェニキア文字で、文字の名まえもだいたいひきついでる。だから、ギリシャ文字の名まえはギリシャ語としては意味がなくて、外来語だ。ただ、フェニキア文字の名まえはのこってなくて、かわりにヘブライ文字の名まえがよくつかわれる。いまのヘブライ文字はフェニキア文字とおんなじ系統の文字だからだ。それに、むかしのヘブライ文字はフェニキア文字そのものだ。

ラムダのもとになったフェニキア文字の名まえはヘブライ語でいうと למד lāmedh [ラーメド]なんだけど、これが λάβδα [lábda ラブダ]になったってことは、m が b にかわってるわけだ。

ほかの文字をみてみると、ἄλφα [álpʰa アルパ]つまりアルファのもとになった文字のヘブライ語の名まえは אלף ʼāleph [アーレフ]で、ラムダと共通のことっていえば、ヘブライ語のほうは子音でおわってるのに、ギリシャ語のほうにはそのあとに母音の a がついてることだろう。そのかわりっていうわけでもないけど、ヘブライ語にあった e がなくなってる。

まず a についていうと、ギリシャ語の単語は母音のほかは子音の n、r、s でしかおわれない。だから、それ以外の子音でおわってる名まえにはギリシャ人が発音しやすいように a がついたんだろう。ギリシャ文字には、ベータ、ガンマ、デルタ、ゼータっていうふうに a でおわってるのがたくさんあるけど、これはみんなそういうことだ。

e がなくなってることについては、ギリシャ人がおとしたわけじゃなくて、もともと e はなかったらしい。学者が推定したフェニキア文字の名まえでアーレフとラーメドにあたるものは alp- と lamd- で(ちなみに、ユニコードの一覧表にある名まえは alf、lamd)、これをみると e がない。

で、labda だけど、lamd- とくらべても、a がついただけじゃなくて m が b にかわってる。どうしてこうなったかっていえば、これもやっぱりギリシャ語の発音の特徴が関係してるとおもう。ギリシャ語の単語には md っていう子音の連続がない。でも bd ならある。だから、ギリシャ人が発音しやすいように md にちかい bd にかわっちゃったんだろう。

関連記事
 ・ギリシャ語の文字と発音
 ・日本でみかけるギリシャ文字の名まえ
 ・ギリシャ文字の名まえ(古典ギリシャ語・現代ギリシャ語・英語・ドイツ語・フランス語・イタリア語)

2009.07.31 kakikomi; 2010.11.22 kakinaosi

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