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室生寺は「ムロージ」

奈良県にある室生寺は、ひらがなでかけば「むろうじ」で、これを発音すれば「ムロージ」になる。

『日本国語大辞典 第二版』(小学館)で「室生寺」をひいても、発音は「ムロージ」だってはっきりかいてあるし、これは、いまのかなづかいの原則からしてもそうなる。「現代仮名遣い」は「オ列の長音」は「オ列の仮名に『う』を添える」ってことになってるから、「ろう」っていう かなは「ロー」をあらわしてる(「おもう」みたいな例外もあるけど)。

ところが、「仏像大好。」っていう番組のナレーションで「ムロウジ」っていってたもんだから、あらためてほかのがどう発音してるかしらべてみた。

ネットで公開されてる「みうらじゅんの仏像探訪記」で、みうらじゅんは「ムロージ」って発音してる(URLにつかわれてるつづりは「murouji」っていうふうに、訓令式でもヘボン式でもなくて、よくあるローマ字入力式になっちゃってるけど)。

『後世に伝えたい文化遺産 珠玉の仏教美術 3 密教と曼茶羅世界』(アスク)っていうDVDのナレーションも「ムロージ」だし、『国宝 10 十一面観音 向源寺・聖林寺・観音寺・法華寺・室生寺・道明寺』(学習研究社)っていうビデオでも「ムロージ」だった。

ちなみに、アクセントについていうと、みうらじゅんは「ロ」のとこだけたかくして、あとの「ム」「ージ」はひくく発音してるけど、これは関西のアクセントなのかな。『日本国語大辞典 第二版』だと「ジ」にアクセント核があるようにかいてあるから、「ロ」から「ジ」までたかくて、そのあとの助詞とかからひくくなるってことになるけど、自分じゃ平板型に発音してるし、DVDとビデオのナレーションでも平板型だ。つまり、アクセント核がないから、「ロ」からあとは助詞もふくめてずっとたかいまんまになる。

で、「仏像大好。」のナレーターは、いまのかなづかいの「オ列の長音」のことをはっきりとはしらなかったか、「室生」っていう漢字にひきずられて、「室」が「むろ」で「生」が「う」だとおもって、きりはなしてよんじゃったんだろう。

「生」のよみとして、音よみにも訓よみにも「う」っていうのはない。常用漢字表にのってる「生」のよみには、音よみの「セイ、ショウ」と訓よみの「いきる、いかす、いける、うまれる、うむ、おう、はえる、はやす、き、なま」がある(訓よみがおおすぎる)。「うまれる、うむ」っていうのがあるから、「う」があるっておもいたくなるけど、「う」だけでつかわれるわけじゃない。

「生」を「う」ってよんでるみたいなのはたしかにほかにもある。「蒲生(がもう)」「柳生(やぎゅう)」「埴生(はにゅう)」なんていうのがそうだ。でも、このばあいの「生」が「う」だとすると、「柳」が「やぎゅ」、「埴」が「はにゅ」ってことになって、こんなよみはないだろう。

「室生寺」「蒲生」「柳生」「埴生」のむかしの発音は「ムロフジ」「ガマフ」「ヤギフ」「ハニフ」だった。この「フ」の発音がかわって「ウ」になったもんだから、それぞれ「ムロフジムロウジムロージ」「ガマフガマウガモー」「ヤギフヤギウヤギュー」「ハニフハニウハニュー」っていうふうにかわってきたわけで、発音がこうなったいまじゃ「生」のよみが「う」ってことじゃなくて、漢字2文字全体のよみになってる。それに、かなづかいとしてはみんな「う」だけど、発音は「室生寺」と「蒲生」のばあいはオ列をのばした音だし、「柳生」と「埴生」はウ列をのばした音で、発音そのものがちがう。

この「ふ」っていうのは、草木がおいしげったり、あるものを産出したりするとこのことで、むかしは「生」に「ふ」っていう訓よみがあったことになる。いまでもこのよみがのこってるものがあって、それは「芝生」だ。常用漢字表の「生」の備考欄にも「芝生(しばふ)」っていうのがのってて、例外としてこれをみとめてる。そのまんまだったら「シボー」になってたとこだけど、意味が意識された結果、もともとの「ふ」がのこされたか復活したんだろう。

2010.03.04 kakikomi

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