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聖書とネコ

ネコは聖書には1か所しか出てこないっていうから、新共同訳で「猫」を検索してみたら、たしかにそうだった。ネコが出てくるのは『エレミヤの手紙』第21節で、これは旧約聖書続編のひとつだ。

旧約聖書続編っていうのは、カトリックだと「第二正典」っていって正典の一部になってるんだけど(ただし新共同訳の旧約聖書続編には第二正典にないものも入ってる)、プロテスタントだと「アポクリファ/外典」っていって正典には入れてない。新共同訳にはこの続編つきとそうじゃないのの2種類がある。口語訳聖書はプロテスタントだから続編はない。

そういうことだから、聖書によってはネコはまったく出てこないことになる。

『エレミヤの手紙』はバビロニア人の偶像崇拝をえんえんと非難してる内容で、「金や銀や木でできた神々の像」は神じゃなくて、人間がつくったものだから、動きもしないし、なんの力もない。ほこりが積もっても人間がはらってやんなきゃいけないし、虫にくわれてもなんにも感じない。それに(これが第21節)、

ἐπὶ τὸ σῶμα αὐτῶν καὶ ἐπὶ τὴν κεφαλὴν ἐφίπτανται νυκτερίδες, χελιδόνες καὶ τὰ ὄρνεα, ὡσαύτως δὲ καὶ οἱ αἴλουροι.

その体や頭の上を、こうもりやつばめ、小鳥が飛び交い、猫までやって来ます。
(新共同訳)

体と頭に蝙蝠こうもりつばめ、その他の鳥が飛んできてとまるし、猫さえ同じようにする。
(『聖書外典偽典2 旧約外典Ⅱ』教文館)

原文の最後に出てくる αἴλουροιǎiluːroi アイルーロイ]がネコで、「ギリシャ語のネコ」のページに書いた αἴλουροςǎiluːros アイルーロス]の複数形だ。

『エレミヤの手紙』の原文はヘブライ語かアラム語だっただろうっていわれてるんだけど、ギリシャ語版だけが伝わってて、七十人訳(セプトゥアギンタ、ギリシャ語訳旧約聖書)に入ってる。ウルガタ(ラテン語訳聖書)にもあって、第21節に、

Super corpus eorum et super caput volitant noctuae et hirundines et aves, similiter et cattae.

っていうふうに最後にネコって意味の cattae [カッテ](ローマ式〔教会式〕発音。古典式なら[カッタエ])が出てくる。これは「ギリシャ語のネコ」に書いた catta [カッタ]の複数形だ。

ウルガタの『エレミヤの手紙』は『バルク書』の第6章つまり最後の部分になってて、七十人訳とはちがって独立した文書じゃない。これはルターの聖書と欽定訳でもおんなじで、ウルガタの影響なのか、おんなじように『バルク書』の第6章になってる(『バルク書』はアポクリファ)。それと、ウルガタのばあい節の数えかたが新共同訳とか七十人訳とおんなじだけど、ルターの聖書と欽定訳は序文のとこから第1節って数えてるから、ネコが出てくるとこは第22節になる。

ルターの聖書
vnd die Nachteulen / Schwalben vnd ander Vogel / setzen sich auff jre Köpffe / des gleichen auch die Katzen.

欽定訳
Upon their bodies and heads, sit battes, swallowes, and birds, and the cats also.

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2010.03.08 kakikomi; 2018.10.06 kakitasi

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