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『西洋古典学事典』をちらっとみて

2010年6月に京都大学学術出版会から『西洋古典学事典』っていう本がでた。著者は松原國師[まつばら くにのり]っていうひとで、A4判、1712ページ、税こみ2万9400円のおおきめの本なんだけど、出版社の宣伝文には、「神話伝説から歴史、宗教、文学、哲学、美術、政治、衣食住や性生活に至るギリシア・ローマ世界に関連する事項を幅広く約5600項目とりあげ、詳細に解説したわが国初の本格的事典」ってかいてある。

例によってギリシャ語・ラテン語のながい母音がカタカナがきでどうなってるか(ギリシャ語・ラテン語のながい母音のあつかい」)、この本をちょっとみてみたら、京都大学学術出版会なのに、母音のながさをちゃんと表記してた。さらに、かさね子音も無視してない。

たとえば、「ヒポクラテス」な~んてかかれることもあるこの名まえは「ヒッポクラテース」だし、「ヘレスポントス」じゃなくて「ヘッレースポントス」になってる(ラ行と濁音のまえのちいさい「ッ」」)。それとか、「アプレイウス」は「アープレイユス」、「ポンペイウス」は「ポンペイユス」で、ラテン語の eiu が[エイユ]になるのも忠実にうつしてる。

京都大学学術出版会なのに、っていうのは、この出版社からでてる「西洋古典叢書」が残念なことに基本的にながい母音を無視してるからだ。でもまあ、出版社の問題じゃないか。「西洋古典叢書」の編集委員でもある西洋古典学者が推薦文で著者のことを「氏は学会にも属さぬ孤往の学究である」なんてかいてるから、こっちのほうが関係あるのかも?

ほんとにちらっとみただけだから、かんじんのなかみについてはほとんどよんでないんだけど、ちょっとおもしろいとおもったのは、みだし語のあとにギリシャ語・ラテン語だけじゃなくて、ほかのことばものせてることだ。出版社の宣伝文でも、「各見出しには、ギリシア語、ラテン語はもとより、英仏独伊西露など現代のヨーロッパ諸語形、時にはアラビア語、古ペルシア語、トルコ語、コプト語、ヘブライ語、前ギリシア語である線文字B、漢語、等々の表記を掲載」って説明してる。

関連記事
 ・ギリシャ語・ラテン語のながい母音のあつかい
 ・ながい母音と「ン」
 ・ラ行と濁音のまえのちいさい「ッ」

2010.06.25 kakikomi; 2010.08.11 kakitasi, kakinaosi

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コメント

こちらのサイトを拝見して『西洋古典学事典』を購入しました。
 一読して呵々大笑。こんなに読んでいて面白い「事典」にお目にかかったのは、生まれてはじめてです。詳細きわまりない系図や、各見出し項目に列挙されている古代ギリシア語の方言形、近代諸語形などの丁寧さもさることながら、私の如き門外漢が読んでも興味津々のエピソードとか後世の文芸や諸学問に及ぼした影響などが分かりやすく書かれています。
 単独執筆だという事実にも喫驚しました。今では暇さえあれば、この大事典を開いて眺めている毎日です。
このホームページに感謝しています。

投稿: 松に一声の秋 | 2010.08.11 11:38

ここでは、この事典の特徴のほんの一点をとりあげただけなので、本の紹介には全然なってないとおもうんですけど、参考になることがあったとすれば、うれしくおもいます。

当然ほかのサイトもご覧になって、実際はむしろそちらのほうが購入の参考になったんじゃないでしょうか。ネットでみるところ、この事典の評判はなかなかいいようですね。

投稿: yumiya | 2010.08.11 15:37

月刊誌『新潮』10月号(現在発売中)に「『西洋古典学事典』を編んで」というコラムが載っていました。
編纂者の松原氏の軽妙な文章は大変楽しく、声を出して笑ってしまう箇所もありました。
一読の価値がありますよ。

投稿: 松に一声の秋 | 2010.10.04 11:49

機会があったら、よんでみたいとおもいます。

投稿: yumiya | 2010.10.04 18:00

パピルス賞、お目出度うございます。
『西洋古典学事典』が第8回パピルス賞を受賞したと、友人から聞き及びました。
やはり本物を見抜き評価する財団が存在するのですね。
それに今月新たに刊行された増刷版は初版の誤植・ミスをかなり訂正してあるとか。
初版購入者のために正誤表が京都大学学術出版会のホームページに掲載されるそうです。
楽しみですね。

投稿: 松に一声の秋 | 2010.11.17 06:11

パピルス賞というものがあったんですね。

この事典の受賞がめでたいかどうかはよくわかりませんけど、賞をとるぐらいですから、けっこう評価されてるわけですね。この事典をちらっとみて以来、なかみをまったくよんでないので、個人的には内容についてなんともいえません coldsweats01

それにしても、もう増刷版がでるんですねえ。

はっきりいって、この事典のなかみについては、あまり興味はありません。ただ、このように評価されてるらしい本で、それもリファレンスになるような事典というものでギリシャ語・ラテン語の名まえの表記がちゃんとしてるというのがうれしいところです。基本的に関心があるのはその一点です。

投稿: yumiya | 2010.11.17 17:28

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