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文章の最初につかわれる助詞の「は」

単語はおおきく自立語と付属語にわけられる。日本語でいうと、名詞とか動詞とか形容詞が自立語で、助詞とか助動詞が付属語だ(ただし、学校の国文法でいう助詞と助動詞には、“ほんとは”付属語っていう単語じゃなくて、付属形式つまり動詞とか形容詞の語尾のものがある。国文法のおかしなところ」「わかちがきのための単語のみわけかた」)。英語でいうと、前置詞とか冠詞が付属語だ。

付属語っていうぐらいだから、助詞は自立語にくっついてつかわれる。日本語の助詞はいうまでもなく自立語のあとにつく(英語の前置詞とか冠詞は自立語のまえ)。助詞が単独でつかわれることはふつうはない。でも、助詞の「は」がまえになんにもなくてつかわれてるのをけっこうきくことがある。

たとえば、「すきな映画は?」ってきかれて、「ワ~、《……》と《……》です」とか こたえたりすることがある。最初の「ワ~」は、助詞の「は」で、もともと発音は「ワ」だけど、このばあい、1拍じゃなくて2拍ぐらいにのばして発音される。それに、そのあとにマがあることもおおい(かんがえながら こたえてるからだろうけど)。

もともと1拍の単語が2拍にのばして発音されるのは関西だとふつうだし、関東でも助詞とかがつかなきゃ2拍になる傾向がある(「手をあげて」「手~あげて」)。おんなじように、この「は」も、あとになんにもつかないから1拍のまんまだと不安定で2拍にひきのばされてるんだろう。

このいいかたは「は」のまえに「すきな映画」とか「それ」とかが省略されてるんだろうけど、もともと省略だったにしても、こういうふうに実際に「は」が単独で文章の最初につかわれてるわけだ。

これって、けっこうわかい世代のいいかたなのかなっておもったんだけど、最近よくテレビにでてて、独特のしゃべりかたでも注目されてる戦場カメラマンの渡部陽一さん(38才)も、よく こういう こたえかたをしてる。このいいかたはどこまでひろまってるんだろ。

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2010.09.30 kakikomi; 2010.10.07 kakinaosi

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コメント

文頭によくつかわれるものといえば、引用をあらわす「と」がありますね。これはその性格にもよるのでしょうが。「というのは」「といいますと?」など。
また、起源ははっきりしませんが、これの変種とおもわれる「って」も同様につかわれますね。「っていうかさ」音便で「っちゅうのは」など。「って?」とイントネーションをともなって単独で疑問をあらわすこともある様です。
これに関しておもしろいのは、文頭にくるばあいにも、「て」ではなく「って」、つまり促音をともなったかたちでとらえられているらしいことです。音素でかけば/Q.te/とでもなるのでしょうか。わたしもこれをつかうときには、つねに促音を意識します。国語では一般に文頭に促音はきませんから、これはめずらしい例ですね。省略の意識があるためでしょうが、文法上省略ととらえるべきかどうかはわかりません。一方「ってか」は「てか」ともかかれることがおおく、促音を意識しないことがおおい様です。接続詞化がすすんでいるといえましょう。「ていうか」というのもみかけることがあります。
ほかにには、接続助詞の「と」(「と、その時」)、-queの「と」(「と、あとこれこれ」)、順接の「て」の音便「で」「んで」(「て」はみみにしません)、逆接の「が」、などがおもいうかびます。完全に接続詞あつかいの語もありますが、基本は省略の様です。やけにタ行が多いのが気にかかります。「本是同根生」だったりして。
もう完全に定着してしまったのが、「けど」「けれど」「だが」「だけど」などですね。学校で作文をおそわるときに、「けど」でなく「けれども」をつかう様に指導されたおぼえがあります。つまり「けれども」の方がいわばformalなことばだというわけで、さらにいえば「けれども」はformalなことばだというわけです。

投稿: monk | 2010.10.06 21:55

順接の「て」のおはなしで「『て』はみみにしません」というのがおもしろいですね。

「は」もそうですが、monk さんが例にあげられたものは、すべて単語であって語尾ではないわけです。べつのいいかたをすれば、付属語であって付属形式ではありません。単語だからこそ、文章のあたまにつかわれる余地があるのではないでしょうか。

それに対して、「て」は付属形式(語尾)であって付属語(単語)ではありません。学校の国文法では「て」のことを接続助詞なんていって、助詞つまり付属語のあつかいになっていますが、これは、国文法に単語という意識がないからです。単語という観点からすると「て」は付属語ではなくて付属形式です。

このように「て」は語尾なので、これを単独できりはなしてつかうということが おこなわれにくいのではないでしょうか。

そうなると、「で」「んで」はどうなんだといわれるかもしれませんが、このばあいの「で」は順接の「て」の音便ではありません。「そこで」「それで」の「そこ」「それ」が省略されたものです。その結果、「で」という格助詞が接続詞としてつかわれるようになったということになります。格助詞は、単語という観点からしても、付属語であって付属形式ではありません。また、「んで」は、「それで」が「そんで」になって、さらに「んで」になったのでしょう。

「って」ではじまる文章では「っ」ではじまってる発音がめずらしいわけですが、おなじように、「んで」ではじまる文章も「ん」ではじまる発音がめずらしいですね。

万葉集には引用の「と」にあたる上代の東国方言の「て」がでてきます。この「て」と、はなしことばの「って」は関係あるんでしょうかねえ。

投稿: yumiya | 2010.10.06 22:54

『日本国語大辞典 第2版』(小学館)にかいてあることをつけたします。

「って」をひくと、「『と言う(といふ)』が『てふ』などを経て変化したもの。『ん』の後では『て』となる」とあります。

格助詞の「て」をひくと、最初に上代東国方言があげてあって、そのつぎの「現代口頭語」という説明があるところの補注に、「方言資料が通時的に整わないため推測の域を出ないが、(…)上代東国方言の流れを汲むものか」とかいてあります。

接続詞の「で」をみると、「『そこで』『それで』などの『そこ』『それ』が略され、助詞『で』が自立語化したもの」と説明されています。

接続詞の「んで」には、「『それで』に同じ」という説明があります。

投稿: yumiya | 2010.10.07 16:39

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