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ヒエログリフのネコ

mjw古代エジプトの象形文字 ヒエログリフでネコっていう単語はこういうふうに かく。象形文字っていうと、ネコをあらわす文字だけでよさそうだけど、ヒエログリフは絵文字じゃないから、そうはならない。

鳥とネコの絵が左をむいてるから文字は左から右によむ(逆方向にもタテにもかける)。最初の文字は網でもちはこぶミルクの壺で、表音文字として mj っていう ふたつの子音をあらわしてる。この j は英語の j じゃなくて、ラテン語とかドイツ語とか発音記号の j とおんなじで、英語だったら y になるとこだ。ヒエログリフをラテン文字にうつすやりかたにはいくつかあって、この j のかわりに i の点をアポストロフィーみたいなかたちにした記号をつかうこともある。

つぎの文字はアシの花穂で、これは j をあらわしてる。最初の文字が mj だから、この j はなくてもいいんだけど、こういうふうに ふたつか3つの子音をあらわす文字にさらにそのなかの子音をあらわす文字をそえてかくことがおおい。

そのつぎの文字はウズラのヒナで、w をあらわしてる。ここまでが表音文字で、最後のネコの文字は限定符(決定詞)っていわれてるんだけど、限定符っていうのは単語の意味を限定するだけで発音はあらわさない。だから全体としては mjw っていう3つの子音からなるネコっていう意味の名詞になる。もちろん実際には母音もあったんだけど、文字としてはヘブライ語とかアラビア語とかとおんなじで子音しかあらわさない。

mjwこの単語にはべつのつづりもあって、ネコそのものをあらわす限定符のかわりに、べつの限定符がつく。この限定符はウシの毛皮で、とうぜん毛皮って意味もあるんだけど、そのほかにホ乳類をあらわす。でも、古代エジプトにホ乳類っていう分類があったのかな。

この限定符は文法書とかだと mammal ってことばで説明されてるんだけど、もともとは毛皮の絵なんだからホ乳類ってことをあらわしてるんじゃなくて日本語でいうケモノのことなんじゃないかな。ケモノっていっても、「獣」っていう漢字は日本語のケモノの本来の意味をあらわしてないから、この漢字の意味からかんがえたらダメだけど、ケモノってことばは「毛がはえてるもの」っていうようなことだから、この限定符の意味としては日本語のケモノがちょうどいい感じだとおもう。ケモノを毛皮の文字であらわしてるわけだ。

mjt古代エジプト語の名詞には男性と女性があって、女性名詞のネコはこう かく。ここではアシの花穂がふたつになってるけど発音には影響ない(ひとつのつづりもある)。そのつぎのちいさめの文字はパンで、t をあらわしてる。そのあとはケモノの限定符だから、全体で mjt っていう単語になる(限定符は毛皮じゃなくてネコのばあいもある)。かきかたとしてはケモノの限定符をパンの下にちいさくかくこともできる。意味はとうぜんメスネコだけど、こういうふうに古代エジプト語の女性名詞はたいてい t っていう語尾でおわる。

そういえば、エジプトの碑文にはクレオパトラの名前がでてくるものがあるけど、クレオパトラはギリシャ語の名前で、ā っていう女性語尾でおわってる。でも、エジプト語のなかでは最後に t がついたかたちになってて、エジプト語の女性名詞にあわせてある。

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2011.05.02 kakikomi; 2014.11.16 kakinaosi

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