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子音だけの ktkr

ネット用語で ktkr っていうのがある。キタコレ(来た これ)の略らしい。この略しかたは kita kore の子音だけをのこしたものだけど、こういうのをみるとヘブライ語とかアラビア語とか古代エジプト語みたいだなっておもう。

日本語を子音だけでかいたら当然よめなくなる。たとえば ktkr だって、あくまでキタコレの略としてつかってるからこれで通用してるけど、「片栗」「肩こり」「着たきり」「着つける」とかよめるし、わかちがきして kt kr にしても「肩から」「口から」「勝つから」「来たから」「来てくれ」っていうふうにいろいろよめる(訓令式として)。

日本語だとこういうことになっちゃうわけだけど、ヘブライ語とかアラビア語は基本的に子音しか かかないで、それでもよめてる。それはことばの特徴がこのかきかたにあってるからだろう。

ヘブライ語とかアラビア語は子音が語根になってる。子音3文字の語根がおおくて、これに母音をつけると基本的な意味はかわんないで名詞になったり動詞になったり時制がかわったりする。

インド・ヨーロッパ語族のことばにも多少そういうとこがあって、英語にもほんのちょこっとそういうのがのこってる。たとえば song、sing、sang、sung なんていうのがそうで、子音 s-ng はかわんないで母音がだけがかわることで名詞になったり動詞になったり過去形になったり過去分詞になったりしてる。英語のばあい こういうのは なんていうか化石みたいなもんなんだけど、ヘブライ語とかアラビア語のばあいは組織的にそういうふうになってる。

それに、日本語の名詞だったら、でてくる母音にとくにきまりはないけど、ヘブライ語とかアラビア語だと名詞なら名詞、動詞なら動詞で母音のパターンがきまってる。っていってもパターンはひとつじゃないんだけど、とにかく日本語とはだいぶはなしがちがう。

ただし、ある程度は母音を暗示するつづりもあることはあって、それが手がかりになるし、こどもの教科書とか、よみまちがえちゃいけないコーランとかには母音記号がついてる。なんとか実用的につかえてはいるけど、子音だけの表記っていうのはやっぱり不完全な表記にはちがいないだろう。

いまのヘブライ文字のもとになったフェニキア文字(むかしのヘブライ文字ともいえる)からギリシャ文字はつくられた。フェニキア文字をギリシャ文字としてつかうときにギリシャ語としては必要ない文字を母音の文字としてつかうようにした。ギリシャ語をあらわすには母音もかく必要があるからだ。母音をあらわす文字がふくまれるギリシャ文字は、そのあとラテン文字とかキリール文字のもとになったわけだけど、とうぜんラテン文字にもキリール文字にも母音の文字がある。

アンシャル体のギリシャ文字からはコプト文字ができた。コプト文字はギリシャ文字だけじゃたりない文字をすこしおぎなっただけのギリシャ文字ともいえるもので、とうぜん母音も表記する。コプト語はだいたい3世紀以降のエジプト語のことで(1世紀ごろからのエジプト語のことを古コプト語ともいうけど)、コプト語よりまえの古代エジプト語はヒエログリフでかいた。ヒエログリフは発音の表記としては母音をかかない。だから、ギリシャ文字をつかうようになってエジプト語は母音をかくようになったわけで、ギリシャ文字の段階で母音の文字ができた影響がここにもあらわれてる。

そういえば、フェニキア文字をギリシャ語に応用したときとおんなじようなことはイディッシュ語にもある。イディッシュ語はドイツ語の方言みたいなことばで、ヘブライ文字でかくんだけど、イディッシュ語としては必要ない文字と半母音の文字を母音の文字としてつかってる(半母音の文字は母音と半母音の両方をあらわす)。

2011.06.25 kakikomi

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