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Twitter

twitter っていう英語は、動詞で「さえずる、さえずるように うたう、ぺちゃくちゃしゃべる、クスクスわらう、興奮して身ぶるいする、ぞくぞくする」、名詞で「さえずり、おしゃべり、クスクスわらい、興奮による身ぶるい」っていう意味で、インターネットのサービスの名まえとしてつかわれてる。

サービスの名まえは Twitter だけど、日本語で「つぶやき」って訳されてるかきこみのことは tweet なんだよな。なんでツイッターじゃなくてツイートなのかな。twitter は動詞でも名詞でもあるから、そのまんまつかえるのに。それに tweet は動詞で「さえずる」、名詞で「さえずり」で、とりあえず「おしゃべり」の意味はないみたいだから、twitter のようがいいような。でも、べつにそんなちゃんとした意味じゃなくても、なんかアピールするようなことばならいいんだろうけど。それとか、1音節のほうがよかったとか。

twitter も tweet も擬音語で、小鳥の チ チ チ っていう とぎれとぎれにつづく なき声のことなんだけど、「つぶやき」のほうはたぶん擬音語じゃないだろう。粒と関係あるとしたら、粒は「まるい」って意味の「つぶら」と関係あるみたいだから、そのへんからいっても擬音語じゃない。それに鳥のなき声でもないわけだけど、ツイッター、ツイートとおんなじ「つ」ではじまってるのがちょうどよかったのかもしれない。学者ことばとちがって、漢字の熟語で訳さなかったのが、すばらしい。

twitter とおんなじ語源のことばがドイツ語にあって、zwitschern [ツヴィチャーン]っていうんだけど、これは動詞で、「さえずる」のほかに「ぺちゃくちゃしゃべる」っていう意味があるから、twitter とおんなじようなもんだろう。語源がおんなじだからって意味がおんなじとはかぎらないんだけど。

ギリシャ語をみてみると、「さえずる」っていう意味の動詞として πιππίζω [pippízdɔː ピッピズドー]とか τιττυβίζω [tittybízdɔː ティッテュビズドー]/τιτυβίζω [tiːtybízdɔː ティーテュビズドー]っていうのがある。これなんかはいかにも擬音語だ。ただ、これには「しゃべる」っていう意味はないみたいで、「さえずる」と「しゃべる」両方の意味がある動詞っていうと、τερετίζω [teretízdɔː テレティズドー]っていうのがある。

τερετίζω は「鼻歌をうたう」のほかに「さえずる、むだばなしをする、おしゃべりをする」っていう意味があるから、いちおう twitter に にてる。これも擬音語らしい。あと、ψιθυρίζω [psitʰyrízdɔː プスィテュリズドー]が「ささやく、耳うちする、つげ口をする、中傷する」のほかに、「(木の葉が)サラサラおとをたてる、さえずる」っていう意味があって、これも twitter に にてるだろう。

ψιθυρίζω に「中傷する」っていう意味があるから、twitter の「なじるひと、あざけるひと」っていう意味を連想するかもしれない。この twitter は「さえずる」の twitter と同音異義語で、twit (なじる、あざける)っていう動詞に ひとをあらわす語尾 -er がついたものだ。-i- がみじかい母音だから語尾がつくとき twitting、twitted っていうふうに t をかさねる。twit はふるくは atwite で、16世紀にアクセントがない a- がとれた。

そういえば Twitter で bot っていうのをよくみかけるけど、そのなかに @Ancient_Gk_bot っていうのがあって、古典ギリシャ語の名言の原文と日本語訳を2時間ごとにツイートしてる。まあ、Project Gutenberg からとったアリストパネースの『リューシストラテー(女の平和)』が現代ギリシャ語だったり、アリストパネース(Ἀριστοφάνης)と『黙示録(Ἀποκάλυψις)』のつづりがちがってたり、「わたしはアルファであり、オメガである」のオメガが原文は なのに中世以来の Ὦ μέγα になってたり、っていうのがなかにはあるけど、でもこういうおもしろい bot があるんだな。

よけいなお世話だけど、@Ancient_Gk_bot の『黙示録』1.8 はたぶん水谷智洋『古典ギリシア語初歩』(岩波書店)の練習 15 からとったものだろう。この入門書はけっこうすきな本なんだけど、それはそれとして、練習問題のうち原文どおりのものには著者の名まえの右肩にアステリスクがついてる。この『黙示録』1.8 にはついてないから原文どおりじゃない。それに気がつかなかったのかな、ともおもったけど、練習問題の Ὦμεγα をわかちがきしてアクセントをつけて Ὦ μέγα にしたことで、原文どおりになおしたってかんがえたのかもしれない。そうじゃないんだけど…。

ちなみに、練習問題どおりの Ὦμεγα のつづりはアクセントの規則に違反してる。うしろから3番めの音節には曲アクセント記号はつかない。現代ギリシャ語のつづりは ωμέγα で、うしろから2番めにアクセントがある。実際の発音をきくと、オがたかくてメガがひくい発音だったりするから、オにアクセントがあるみたいな感じがするかもしれないけど、これはアクセントじゃなくてイントネーションで、アクセントはメにある(ギリシャ語の文字と発音: Ω ω」)。

bot っていえば百人一首の bot @onehundredpoems もある。ときどきツイートふうの現代語訳がはいってたりする。

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2011.06.23 kakikomi

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