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星座の名まえの略号
(ラテン語の学名とその属格と略号の一覧)

恒星のなかにはアルタイルとかベガとか名まえがついてるのもあるけど、そういう名まえがない恒星もふくめて天文学でつかわれてる名まえがある。それは、その恒星が属してる星座の名まえとギリシャ文字をくみあわせたもので、ギリシャ語のアルファベットがだいたいあかるい順に α、β、γ、δ…ってあてはめられてる。星座の名まえはラテン語の学名を3文字に略したものがつかわれることもあって、たとえばアルタイルなら α Aql、ベガなら α Lyr っていうふうになる。

α Aql は「わし座(Aquila)のアルファ星」、α Lyr は「こと座(Lyra)のアルファ星」ってことなんだけど、ここでつかわれてる3文字の略号はもとの学名からしてとくにおかしなとこはない。でも、ふたつばかりちょっとヘンなのがある。みずへび座の学名は Hydrus で略号は Hyi、や座は Sagitta で略号は Sge だ。どっちももとのつづりにはない文字が略号にでてくる。

これは、恒星の名まえにつかわれてる星座の名まえが主格じゃなくて属格(所有格)だからだ。「みずへび座の××星」ってことだから「みずへび座の」って意味の属格のかたち Hydri がつかわれてて、この略が Hyi になる。おんなじように「や座の」は Sagittae で、Sge はこれを略したものだ。そういうことだから、α Aql は略さなければ α Aquilae で、α Aquila の略じゃない。α Lyr は α Lyra じゃなくて α Lyrae の略だ。

参考までに、いまの天文学でつかわれてる88の星座の名まえと属格と略号をつぎにあげておこう。ラテン語の学名の発音は、実用的にはなんでもいいっていうか、そもそも古典になくて近代につくられた単語がいろいろあるから、母音のながさを無視した古典式みたいな、適当なローマ字よみでかまわないとおもうけど(つづりと発音を一致させたほうがいいとはおもう。ラテン語の学名のよみかた(の一例)」)、参考までに古典式とローマ式の発音をつけておく。カタカナのひとつめが古典式、ふたつめがローマ式で、アクセントがあるとこにアンダーラインをつけた(ラテン語の発音(古典式とローマ式)」)。


星座学名属格略号
アンドロメダAndromeda
アンドメダ
アンドメダ
Andromedae
アンドメダエ
アンドメデ
And

いっかくじゅうMonoceros
ケロース
チェロス
Monocerotis
モノケローティス
モノチェティス
Mon

いてSagittarius
サギッターリウス
サジッリウス
Sagittarii
サギッターリイー
サジッリイ
Sgr

いるかDelphinus
デルピーヌス
デルフィヌス
Delphini
デルピーニー
デルフィ
Del

インディアンIndus
ンドゥス
ンドゥス
Indi
ンディー
ンディ
Ind

うおPisces
スケース
(ッ)シェス
Piscium
スキウム
(ッ)シウム
Psc

うさぎLepus
プス
プス
Leporis
ポリス
ポリス
Lep

うしかいBootes
オーテース
テス
Bootis
オーティス
ティス
Boo

うみへびHydra
ヒュドラ
ドラ
Hydrae
ヒュドラエ
ドレ
Hya

エリダヌスEridanus
エーダヌス
ダヌス
Eridani
エーダニー
ダニ
Eri

おうしTaurus
タウルス
タウルス
Tauri
タウリー
タウ
Tau

おおいぬCanis Major
ニス マイヨル
ニス ヨル
Canis Majoris
ニス マイヨーリス
ニス マリス
CMa

おおかみLupus
プス
プス
Lupi
ピー
Lup

おおぐまUrsa Major
ルサ マイヨル
ルサ ヨル
Ursae Majoris
ルサエ マイヨーリス
ルセ マリス
UMa

おとめVirgo
ウィルゴー
ヴィルゴ
Virginis
ウィルギニス
ヴィルジニス
Vir

おひつじAries
リエース
リエス
Arietis
エティス
エティス
Ari

オリオンOrion
オーリーオーン
オン
Orionis
オーリーオーニス
オリニス
Ori

がか
(画架)
Pictor
クトル
クトル
Pictoris
ピクトーリス
ピクリス
Pic

カシオペヤCassiopeia
カッスィオペイ
カッスィオ
Cassiopeiae
カッスィオペイヤエ
カッスィオイェ
Cas

かじきDorado
ドーラードー
Doradus
ドーラードゥース
ドゥス
Dor

かにCancer
ンケル
ンチェル
Cancri
ンクリー
ンクリ
Cnc

かみのけComa Berenices
マ ベレニーケース
マ ベレチェス
Comae Berenices
マエ ベレニーケース
メ ベレチェス
CrB

カメレオンChamaeleon
カマエオーン
カメオン
Chamaeleontis
カマエレンティス
カメレンティス
Cha

からすCorvus
ルウス
ルヴス
Corvi
ルウィー
ルヴィ
Crv

かんむりCorona Borealis
ローナ ボレアーリス
ナ ボレリス
Coronae Borealis
ローナエ ボレアーリス
ネ ボレリス
CrB

きょしちょう
(巨嘴鳥)
Tucana
トゥカー
トゥ
Tucanae
トゥカーナエ
トゥ
Tuc

ぎょしゃAuriga
アウリー
アウ
Aurigae
アウリーガエ
アウジェ
Aur

きりんCamelopardalis
カメーロルダリス
カメロルダリス
Camelopardalis
カメーロルダリス
カメロルダリス
Cam

くじゃくPavo
パーウォー
ヴォ
Pavonis
パーウォーニス
ヴォニス
Pav

くじらCetus
ケートゥス
チェトゥス
Cetus
ケーティー
チェティ
Cet

ケフェウスCepheus
ケーペウス
チェフェウス
Cephei
ケーペイー
チェフェイ
Cep

ケンタウルスCentaurus
ケンタウルス
チェンタウルス
Centauri
ケンタウリー
チェンタウ
Cen

けんびきょうMicroscopium
ミークロスピウム
ミクロスピウム
Microscopii
ミークロスピイー
ミクロスピイ
Mic

こいぬCanis Minor
ニス ノル
ニス ノル
Canis Minoris
ニス ミノーリス
ニス ミリス
CMi

こうまEquuleus
レウス
レウス
Equulei
レイー
レイ
Equ

こぎつねVulpecula
ウルペークラ
ヴルクラ
Vulpeculae
ウルペークラエ
ヴルクレ
Vul

こぐまUrsa Minor
ルサ ノル
ルサ ノル
Ursae Minoris
ルサエ ミノーリス
ルセ ミリス
UMi

こじしLeo Minor
オー ノル
ノル
Leonis Minoris
オーニス ミノーリス
ニス ミリス
LMi

コップCrater
ラーテール
テル
Crateris
クラーテーリス
クラリス
Crt

ことLyra
リュ
Lyrae
リュラエ
Lyr

コンパスCircinus
ルキヌス
ルチヌス
Circini
ルキニー
ルチニ
Cir

さいだんAra
アー
Arae
アーラエ
Ara

さそりScorpius
ルピウス
ルピウス
Scorpii
ルピイー
ルピイ
Sco

さんかくTriangulum
トリングルム
トリングルム
Trianguli
トリングリー
トリングリ
Tri

ししLeo
オー
Leonis
オーニス
ニス
Leo

じょうぎNorma
ノールマ
ルマ
Normae
ノールマエ
ルメ
Nor

たてScutum
クートゥム
トゥム
Scuti
クーティー
ティ
Sct

ちょうこくぐ
(彫刻具)
Caelum
カエルム
チェルム
Caeli
カエリー
チェ
Cae

ちょうこくしつ
(彫刻室)
Sculptor
ルプトル
ルプトル
Sculptoris
スクルプトーリス
スクルプリス
Scl

つるGrus
ルー
Gruis
イス
イス
Gru

テーブルさん(山)Mensa
メ(ー)ンサ
ンサ
Mensae
メ(ー)ンサエ
ンセ
Men

てんびんLibra
リーブラ
ブラ
Librae
リーブラエ
ブレ
Lib

とかげLacerta
ルタ
チェルタ
Lacertae
ルタエ
チェルテ
Lac

とけいHorologium
ホーロギウム
オロジウム
Horologii
ホーロギイー
オロジイ
Hor

とびうおVolans
ウォラ(ー)ンス
ヴォランス
Volantis
ウォンティス
ヴォンティス
Vol

とも
(船尾)
Puppis
ッピス
ッピス
Puppis
ッピス
ッピス
Pup

はえMusca
スカ
スカ
Muscae
スカエ
ッシェ
Mus

はくちょうCygnus
キュグヌス
(ン)ニュス
Cygni
キュグニー
(ン)ニ
Cyg

はちぶんぎ
(八分儀)
Octans
クタ(ー)ンス
クタンス
Octantis
オクンティス
オクンティス
Oct

はとColumba
ンバ
ンバ
Columbae
ンバエ
ンベ
Col

ふうちょう
(風鳥)
Apus
プース
プス
Apodis
ポディス
ポディス
Aps

ふたごGemini
ミニー
ジェミニ
Geminorum
ゲミノールム
ジェミルム
Gem

ペガススPegasus
ペーガスス
ガスス
Pegasi
ペーガスィー
ガスィ
Peg

へびSerpens
ルペ(ー)ンス
ルペンス
Serpentis
セルンティス
セルンティス
Ser

へびつかいOphiuchus
オピウークス
オフィクス
Ophiuchi
オピウーキー
オフィ
Oph

ヘルクレスHercules
ルクレース
ルクレス
Herculis
ルクリス
ルクリス
Her

ペルセウスPerseus
ルセウス
ルセウス
Persei
ルセイー
ルセイ
Per


(帆)
Vela
ウェー
ヴェ
Velorum
ウェーロールム
ヴェルム
Vel

ぼうえんきょうTelescopium
テーレスピウム
テレスピウム
Telescopii
テーレスピイー
テレスピイ
Tel

ほうおう
(鳳凰)
Phoenix
ポエニークス
フェニクス
Phoenicis
ポエニーキス
フェチス
Phe

ポンプAntlia
ントリア
ントリア
Antliae
ントリアエ
ントリエ
Ant

みずがめAquarius
クヮーリウス
クヮリウス
Aquarii
クヮーリイー
クヮリイ
Aqr

みずへびHydrus
ヒュドルス
ドルス
Hydri
ヒュドリー
ドリ
Hyi

みなみじゅうじCrux
クス
クス
Crucis
キス
チス
Cru

みなみのうおPiscis Austrinus
スキス アウストリーヌス
ッシス アウストヌス
Piscis Austrini
スキス アウストリーニー
ッシス アウスト
PsA

みなみの
 かんむり
Corona Australis
ローナ アウストラーリス
ナ アウストリス
Coronae Australis
ローナエ アウストラーリス
ネ アウストリス
CrA

みなみの
 さんかく
Triangulum Australe
トリングルム アウストラー
トリングルム アウスト
Trianguli Australis
トリングリー アウストラーリス
トリングリ アウストリス
TrA


(矢)
Sagitta
ッタ
ッタ
Sagittae
ッタエ
ッテ
Sge

やぎCapricornus
カプリルヌス
カプリルヌス
Capricorni
カプリルニー
カプリルニ
Cap

やまねこLynx
リュンクス
ンクス
Lyncis
リュンキス
ンチス
Lyn

らしんばんPyxis
ピュクスィス
クスィス
Pyxidis
ピュクスィディス
クスィディス
Pyx

りゅうDraco
コー
Draconis
ドラコーニス
ドラニス
Dra

りゅうこつ
(竜骨)
Carina
リー
Carinae
リーナエ
Car

りょうけん
(猟犬)
Canes Venatici
ネース ウェーナーティキー
ネス ヴェティチ
Canum Venaticorum
ヌム ウェーナーティコールム
ヌム ヴェナティルム
CVn

レチクルReticulum
レーティクルム
ティクルム
Reticuli
レーティクリー
ティクリ
Ret


(炉)
Fornax
フォルナークス
フォルナクス
Fornacis
フォルナーキス
フォルチス
For

ろくぶんぎ
(六分儀)
Sextans
クスタ(ー)ンス
クスタンス
Sextantis
セクスンティス
セクスンティス
Sex

わしAquila
クィラ
クィラ
Aquilae
クィラエ
クィレ
Aql

Dorado (かじき座)はほんとはラテン語じゃなくてスペイン語だから、古典式の発音なんてないし、属格もないんだけど、天文学者はこれを Dido [ディードー]みたいな -o [オー]でおわるギリシャ語系の女性名詞としてあつかって、-us [ウース]でおわる属格にしてる。そのことから古典式の発音をかんがえてみると(つくってみると)、-ra- にアクセントがあるからラテン語としてはこの母音はながい。それに dorado の語源はラテン語の deauratum [デアウラートゥム]だから、それからいっても a はもともとはながい。それと do- は deau- の母音が融合したものだから、この母音もながいってかんがえて、「ドーラードー」ってことにした。

Tucana (きょしちょう座)は学名としてつくられた近代ラテン語で、これも古典式発音はないわけだけど、アクセントが -ca- にあるから、古典式だとしたら母音はながい。Tu- についてはなんともいえないから、ながくはしなかった。

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2012.04.08 kakikomi

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