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映画『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』のギリシャ語

映画『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』の主人公パーシーはポセイドーンの息子で(母親は人間)、古代ギリシャ語をみると文字がうかびあがってみえて(ほかの文字でもそうなんだけど)、文字の順序がいれかわったりギリシャ文字がラテン文字にかわったりして、英語になってみえるっていう能力がある。

映画のなかにはそういうシーンが3回でてきて、まず最初は博物館でレリーフの碑文をみたときなんだけど、その碑文のギリシャ語は、

ΠΕΡΣΕΥΣ ΜΑΧΕΤΑΙΤΩΙΚΗΤΕΙ

っていうのだった。こういうふうに1か所だけわかちがきになってたけど、これを全部わかちがきすれば、ΠΕΡΣΕΥΣ ΜΑΧΕΤΑΙ ΤΩΙ ΚΗΤΕΙ になる。小文字をいれてかきなおせば Περσεὺς μάχεται τῷ κήτει. [persěus mákʰetai tɔ̂ːi kɛ̌ːteː ペルセウス マケタイ トーイ ケーテ~]で、そのまんま訳せば「ペルセウスが海の怪物とたたかう」とでもなる。

これが英語にかわったあとの文章は、

PERSEUS DEFEATS CETUS

で、字幕の訳は「ペルセウス 海の怪物を退治」だった。

ここで「海の怪物」っていってるのはギリシャ語で κῆτος [kɛ̂ːtos ケートス]なんだけど(碑文の κήτει は与格)、これはラテン語で cetus [ケートゥス]、英語よみで「スィータス」になる。この怪物は星座になってて、日本語だと くじら座っていってるんだけど、ほんとはクジラじゃなくて、ペルセウスがたおした海の怪物だ(プトレマイオスの48星座とアラートスの星座(ギリシャ語とラテン語):くじら座」)。

つぎにギリシャ語がでてくるのは、パーシーがにげこむ「訓練所」の門で、門の上に、

ΣΤΡΑΤΟΠΕΔΟΝ
ΗΜΙΣ ΥΑΙΜΑ

ってかいてある。最初にうつしだされたときはこうだったんだけど、つぎにうつったときにはなぜか1行めが ΣΤΡΑΤΟΠΣΔΟΠ っていうまちがったつづりにかわってた。まちがってるっていえば、2行めのわかちがきもおかしくて、ほんとは ΗΜΙΣΥ ΑΙΜΑ じゃないといけない。

これが英語にかわると、

CAMP
HALF BLOOD

になって、字幕は「ハーフ訓練所」って訳してた。camp は軍隊の野営地とか駐留地ってことなんだから、訓練所っていうのはどうなのかとおもったけど(駐留地で軍事訓練もするだろうけど)、camp のもとをたどればラテン語の campus [カンプス]で、「たいらな土地」とか「特定の目的のための空地」ってことから「練兵場」をさすことばでもあったから、ここはそのつもりなのかな。映画のなかでも戦闘訓練するとこだったし。

ギリシャ語の ΣΤΡΑΤΟΠΕΔΟΝ ΗΜΙΣΥ ΑΙΜΑστρατόπεδον ἥμισυ αἷμα)は英語の CAMP HALF BLOOD を直訳しただけのものだろう。στρατόπεδον [stratópedon ストラトペドン]は「野営地、軍隊」っていう意味で、στρατός [stratós ストラトス](軍隊)と πέδον [pédon ペドン](地面、たいらな土地)の複合語、ἥμισυ [hɛ̌ːmisy ヘーミスュ]は「半分の」(中性単数主格)、αἷμα [hâima ハイマ]は「血」。

もうひとつは、テネシー州ナッシュビルにあるパルテノーン神殿を再現した建物のシーンで、そのなかのアテーナーの像のまえに ΑΘΗΝΑἈθηνᾶ [atʰɛːː])ってかいてあるのが英語の ATHENA にかわった。

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 ・プトレマイオスの48星座とアラートスの星座(ギリシャ語とラテン語)

2012.05.01 kakikomi

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