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パスタの語源

NHKの「美の壺」っていう番組の「パスタ」の回でこんな説明があった。

パスタという言葉は、「IMPASTARE[インパスターレ]」「粉を練る」というイタリア語に由来しています。

イタリア料理では、麺に限らず小麦粉を練ったものの総称がパスタなんです。

「小麦粉を練ったものの総称がパスタ」なのはいいけど、語源の説明がおかしいとおもう。

impastare は pasta からうまれた動詞で、impastare から pasta ってことばができたわけじゃない。はなしが逆だ。

イタリア語の pasta は「ねり粉、ペースト」ってことで、英語の paste にあたることばだ。っていうか paste の語源が pasta なんだけど、そのばあいの pasta はイタリア語じゃなくて、イタリア語の pasta のもとになった後期ラテン語の pasta [パスタ]で、このラテン語がフランス語になって、それが英語にはいった。

impastare は in + pasta に動詞の語尾がついたもので(n は p にあわせて m になる)、「ペースト状にする(ridurre in pasta)」ってことから「こねる、のりで[を]はりつける」になった。

後期ラテン語の pasta のもとはギリシャ語の παστά [pastá パスタ]で、オオムギのおかゆみたいなものなんだけど、このことばは形容詞 παστός [pastós パストス](塩をふりかけた)の中性複数形で、この形容詞は πάσσω [pássɔː パッソー]/πάττω [páttɔː パットー](ふりかける)っていう動詞からうまれた。

ちなみにラテン語にはもともと pasco [パースコー](放牧する、飼育する)の完了分詞 pastus [パーストゥス](女性単数形と中性複数形が pasta [パースタ])とか、pastus [パーストゥス](牧場、牧草、エサ、[人間の]食料)とか、pasta [パースタ](ふとらせたニワトリ)っていうのがある。

現代ギリシャ語でイタリアのパスタのことを πάστα [ˈpasta パスタ]っていってて、これはイタリア語をそのまんまとりいれたものなんだけど、もともとギリシャ語だったものがもどってきたんだなあ。

2012.09.23 kakikomi

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