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ギリシャ数字のゼロ

ローマ数字とおんなじで、2種類のギリシャ数字にゼロはない。算用数字とちがって位どり記数法じゃないから、特定の位の数がなくても、それをゼロであらわなくていい。そのためのゼロの記号は必要ない。

たとえば「ひゃくに」だったら、算用数字だと 102 になって、十の位の数がないことをあらわすゼロを2ケタめにかかなきゃいけない。ゼロをかかなかったら 12 になって、まったくちがう数になっちゃう。最初の1は3ケタめにかいてあるから百になるわけで、そのためには十の位をゼロでうめないといけない。

これが漢数字なら 百二 でゼロはいらないし、ローマ数字だと CII でこれもゼロは必要ない。おんなじように、かしら文字式のギリシャ数字は ΗΙΙ だし、アルファベット式のギリシャ数字は ρβʹ で、どっちもゼロはいらない(かしら文字式ギリシャ数字」「アルファベット式ギリシャ数字」)。

こういうふうに位どりの空位をあらわす記号としてのゼロは必要ないんだけど、ゼロそのものをあらわしたいばあいもあることはあるだろう。じっさいギリシャ語の天文学の文献で経度とか時間のゼロをあらわす記号としてつかわれてきたものがある(角度と時間っていうのは六十進法)。ギリシャ数字といっしょにつかわれてるからギリシャ数字の一種ともいえるけど、数字っていうより記号だとするとギリシャ数字にいれるのはちがうともいえる。それに、つかわれかたがかぎられてるし、十進法の空位をあらわすわけでもない。それでも、ギリシャ数字としてゼロっていえるものがあるとしたら、これぐらいしかないだろう。

これは天文学の文献のパピルスで、ちいさい丸の上に長めのヨコ棒がついた記号がいちばん右側にふたつある。これがゼロの記号で、この記号はほかにもバリエーションがあるけど、パピルスにでてくる書体としてはこれが代表的なものだろう。ほかの数字はアルファベット式のギリシャ数字がつかわれてる。

右の図の上の記号はパピルスの写真とおんなじものだけど、その下のもうひとつのほうはゼロの記号のバリエーションのひとつだ。ゼロの記号はギリシャ語の οὐδέν [uːdén ウーデン](なにも~ない)のかしら文字がもとになってるともいわれてるけど、それよりも、楔形文字の天文学の文献でつかわれてたゼロをあらわす記号が起源だっていうほうがほんとらしい。

もっとあとの時代になると、この記号はもうちょっと丸がおおきくて上の棒がみじかい ō って感じにもなるし、校訂本でも ō がつかわれてたりする。

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 ・かしら文字式ギリシャ数字
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2012.11.03 kakikomi

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